少女と花嫁   作:吉月和玖

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09.捜索

~屋上~

 

ドォン…ドォン…ドォン…ドォン…

 

夜空に次々と花火が舞い上がるのを風太郎と二乃、ことりの三人が鑑賞している。

 

「わぁ~、きれ~い!」

「そうね…」

「日本で最初に花火を見たのは徳川家康という説があるんだ。起源は中国だがヨーロッパを経て種子島に鉄砲と共に伝わり…」

 

二乃とことりが花火を鑑賞している横では風太郎が花火のうんちくの話をしている。

 

「全然つまんない!何が悲しくてあんたのうんちくを聞かなければいけないのよ!」

「さすがに私もないかなぁ...」

 

うんちくを聞いていた二乃とことりが言葉を紡ぐ。

たしかに花火を見ながら話す内容ではない。

 

「ぐっ...」

 

さすがの風太郎も気まずくなったのか言葉に詰まってしまった。

そんな時だ、二乃の携帯に着信が入った。

 

「四葉!妹ちゃんも一緒?もう花火始まってるけどどこにいるの?え?時計台?迎えに行くからそこにいなさい!」

 

そこで電波が切れてしまった。

 

「あぁー、もう!ぼさっとしてないであんたたちも電話しなさいよ」

「仕方ねぇな」

「了解っ!」

 

二乃の言葉に風太郎とことりが自身の携帯を取り出した。ことりは自身の兄である和彦に連絡をしている。

しかし風太郎は自身の携帯を眺めているだけである。

なにせ風太郎の携帯の連絡先に登録されているのは......

『上杉らいは・親父』

以上二名だけである。

 

「だめだ、この携帯使えねぇ!!」

「使えないのはあんたよ!!」

 

風太郎の言葉に二乃がツッコミを入れる。

 

「だめっ、兄さんと三玖に掛けてるけど繋がらない。やっぱりこの人の多さが原因かな...」

「そう...ことりもだめだったのね...頑張って宿題も終わらせたのに...なんでこうなるの...」

 

ことりの結果を聞いた二乃は切なそうな声で答える。嫌いな勉強を頑張ってきたのに五人揃って花火を見れていない現実に、そんな感情が剥き出したのだろう。

そんな二乃の姿を心配そうに見ながら、ことりはフェンス際まで行き下の人混みの中を眺めた。

 

「あれ?あそこにいるの一花じゃないかな?」

「え!?あ、ほんとだ!」

 

ことりは人混みの中から一花の姿を見つけると二乃に確認する。その二乃は一花だと確認すると携帯を取り出し電話を掛ける。だが......

 

「んん~...どうして電話に出ないのよ...」

「気付いてないのか?」

 

二乃が電話を掛けながら零す言葉に、二乃に近づきながら下にいる一花を見ながら風太郎が答える。

そんな風太郎の頭に言葉がよぎる。

 

『花火はお母さんとの思い出なんだ』

 

三玖が話していた言葉である。

切なそうに電話を掛ける二乃の顔を覗いた風太郎は本当に大切な思い出であることを悟った。

 

「はぁぁ...俺が連れてくる」

「風太郎君?」

「お前らは浴衣姿で動きにくいだろ。だから俺が行く」

「!」

「そっか...」

「一花は任せたわ」

「ああ」

 

後ろ手に挙げながら風太郎は下に向かって行った。

 


 

ドォン…ドォン…ドォン…

 

「おー、ここからでも綺麗に見えるもんだね」

「ええ、凄いですね」

 

五月と合流した後、人混みから離れた場所で花火が打ち上るのを見上げていた。

それにしても、まさか五月が予約している場所を知らなかったとは。

 

『そのことなのですが......私は二乃から予約した場所を聞かされていないのです』

 

そんな言葉を聞かされたと同時に花火大会最初の花火が打ち上ったのだ。

一応五月には二乃への連絡を試してもらっているが、現在でも繋がらない。僕自身もことりに連絡をしているが繋がっていない。恐らく人が大勢集まっていることで起きている輻輳が原因だろう。

しかしことりは大丈夫だろうか。あの子も誰かと一緒にいればいいのだが。

本来であればこういう時はその場を動かない方が良いんだが。

隣で打ち上る花火を見上げている五月をチラッと見てみる。

笑顔で見てはいるが、どこか寂しさも見受けられる。

 

『毎年揃って見に行ってた。お母さんがいなくなってからも、毎年揃って......』

 

三玖が話していた花火の思い出について思い出していた。

きっと五月も他の姉妹と一緒に見たかったのだろう。

花火大会が終わるまで後50分ちょいか。

そんな風に考えながらショルダーバッグからある物を探し出していた。

 

「先生?」

 

隣でゴソゴソしていたからか、疑問に思った五月から声をかけられた。

そんな言葉を気にせず目的の物をショルダーバッグがら出すとそれを装着していった。

 

「えっと……なぜ帽子と眼鏡を?」

「今から他の姉妹やことり、上杉兄妹を探すために動こうと思って。それで必要なんだよ。いやぁー、入れてて良かったぁ」

 

かけた眼鏡をくいっと上に上げながら話す。

 

「さっきまではことりもいたから気にしないでよかったかもだけど、さすがに今から五月と一緒に行動するのにはいるかなってことでちょっとした変装だよ」

「あ…」

「一応僕と君は教師と生徒。まあ気にしすぎかもだけど、それくらいでちょうど良いんだよ」

 

帽子を整えながら伝える。

 

「じゃあ行こうか」

 

そう伝えながら手を五月に差し出す。

 

「え...?」

 

その行動に対して困ったような表情を浮かべる五月。

ことりに対しての行動を取ってしまってどうやら困らせてしまったようだ。

 

「わ、悪い。浴衣姿で動きずらいのとはぐれたらまずいのとで、ことり相手と同じ対応してしまったよ。さすがに手はまずかったよね」

 

そう言いながら手を引っ込めようとしたのだが...パシッ。

僕の手を五月が握り返してきた。

 

「は...はぐれないための処置です...よ...よろしくお願いします...」

「ああ...」

 

そんな五月の手を優しく握り返すのだった。

 

その後二人でまた人混みの中に戻り他のメンバーを探す。とりあえず二乃が向かおうとした先に進めば誰かがいるかもという思いでそちらに歩みを進めることにした。

 

「見当たりませんねぇ」

「まあ、そんなにすぐに見つかるとは思っていなかったからね。気長にいこう」

 

屋台が並んでいるなかを歩いていくので、皆と合流したい気持ちもあるが五月はどこか食べ物も気になっているようだ。

 

「五月?何か食べたいの?」

「え!?す、すみませんこのような状況で。先生といると安心してお腹が空いてきてしまって…」

「気にしなくても良いよ」

 

そう言って近くの焼き鳥の屋台に向かって歩き出す。ちょうど二人分買えるだけあったのでそれを注文する。すると店主が一本おまけしてくれた。

 

「おっ!兄ちゃん可愛い彼女連れてるじゃねえか!」

「いや……そういうわけでは……」

 

否定しようとしたが隣にいる五月を見ると顔を真っ赤にして俯いていた。その様子に店主はさらにニヤニヤした顔になりながら焼きたての焼き鳥を渡してくれた。

 

「いいってことさ!若いもんは遠慮せずに食いな!」

「は、はぁ…ありがとうございます」

 

受け取った焼き鳥を五月に渡すとまだ少し恥ずかしそうにしている。

屋台から少し離れたところで五月に声をかけられた。

 

「あの、先生……私たち付き合ってると思われているみたいですけど……」

「ん?ああ、そうだね。まあ僕もまだまだ若く見られてるって事だね」

「そんな!先生は若いじゃないですか」

 

冗談交じりに話したのだが、力強く答えられた。その言葉にはどんな意味が含まれているのかわからないがきっと褒めてくれていることだけはわかった。

 

「ありがとう。それじゃあそろそろ他のみんなを探しに行こうか」

「はい!行きましょう!」

 

元気よく返事をして再び歩き出した五月。その横に並ぶように歩くとこちらを見上げて微笑んでくれた。そのまま歩いていると何組かカップルと思われる人たちとすれ違った。男女の組み合わせということもあって自然とその人達を目で追ってしまう。

 

「どうしました?」

 

視線を感じた五月が不思議そうな表情をしている。

 

「いや、なんでもないよ」

 

そう答えると納得していないような感じだったがそれ以上聞いてくることはなかった。

その後もしばらく辺りを探し続けていると突然後ろから声をかけられた。

 

「吉浦先生?」

 

声に振り返るとそこには立川先生がいた。

 

「た、立川先生…」

「やっぱり吉浦先生だったんですね。帽子に眼鏡までかけてたんでちょっと自信がなかったのですが」

「どうしてここに?」

「いえ、私も花火大会に来てたんですよ。今日は友人と来ていたのですが、今は屋台に行っているのをここで待ってたんです」

 

なるほど。まさか同僚に会うなんて。しかもこの変装は結構自信があったんだけど、すぐにばれるとは。

 

「それでそちらの方はどなたなんでしょうか?も…もしかしてデート中…とか?」

 

僕の後ろに隠れている人物を見て、上目遣いでそんなことを言ってきた。僕は慌てて否定しようとする。

 

「い、いえ。デートという訳ではないんですが…」

「?ああ、ことりさんですか?」

 

そんな立川先生だが、僕の後ろから出てきた人物を見て驚きを見せた。

 

「え!?な、中野さん!?」

 

驚いた様子の立川先生は出てきた人物の名前を口にした。

 

「こ…こんばんは、立川先生…」

「こんなところで会うなんて偶然ですね!でもどうして一緒にいるんですか?確か二人はあまり接点はなかったはずですよね?」

「実はことりが姉妹全員と友人でして。それで僕はその姉妹とことりが花火大会に行くのに付いてきたんですよ。ただこの人の量で…」

 

そこまで言うと察してくれたようでこれ以上聞かれることはなかった。

 

「そうだったんですね。せっかくだからもう少しお話ししたいところなのですが、もうすぐ友人が来ますので」

「あ、はい。お気をつけて」

「お気遣いありがとうございます。ではまた」

 

軽く会釈をしてからその場を離れた。立川先生が見えなくなると緊張していた空気もなくなり一気に疲れが出てきた。

 

「はぁ……びっくりした。まさか立川先生がいるとは」

「すみません。私が一緒だと迷惑でしたよね」

「別に謝らなくていいよ。それにしても知り合いに会った時は焦ったよ」

「そうですねぇ……」

 

そう言いながら五月はじっとこちらを見つめてくる。

 

「な、なにかな?」

「いえ……なんでもありません」

 

首を横に振りながら答えたが明らかに何かありそうな様子だ。

 

「あの……先生と立川先生はその……」

「ん?」

「……なんでもないです」

 

途中で言葉を止めた五月はそのまま黙ってしまった。気になる言い方だが本人が話そうとしないのであれば無理には聞かない方がいいだろう。

 

「まあ、とにかく皆を探そうか」

「はい!」

 

再び歩き始めると今度は別の方向から声をかけられた。

 

「五月。先生」

 

声をかけられたことで、パァーッと明るい表情になった五月なのだが……

 

「!……なんだ、あなたですか…」

「残念さを少しは隠しなさい」

 

声をかけてきた人物が上杉であると知った途端に残念そうな顔になっていく五月。落差が物凄いな。

そんな態度の五月に対して上杉がツッコミを入れている。

 

「何はともあれ、合流出来て良かったよ。上杉はどのくらいのメンバーを把握してるの?」

「二乃とことりが予約した屋上にいます。後は、四葉とらいはが一緒に時計台のところにいるのと、脇道に三玖がいます。行方不明なのは一花だけですね」

 

良かった、ことりは無事だったか。

 

「それだけのメンバーの場所を把握してるなんてさすがだね」

「とりあえず、まずは三玖と合流しましょう」

「だね。五月もそれで良いかな?」

「わかりました」

 

返事をした五月が先頭に立ち、三玖がいるであろう場所に向かって歩きだした。

 

「……五月、一つ聞いていいか?」

 

そんな五月に一番後ろを歩いていた上杉が質問をする。

 

「なんです?」

「俺たちってどういう関係?」

「は?」

「なんですか、その気味の悪い質問...」

 

上杉の質問に訳が分からず思わず声が漏れてしまった。逆に五月は本当に気持ち悪そうに前を見て答えている。

 

「はぁ...そうですね...百歩譲って赤の他人でしょうか」

「「百歩譲っても!?」」

 

五月の言葉に思わずツッコミを入れるも、そのツッコミが上杉と被ってしまった。

いや、百歩譲っても赤の他人ってどんだけ上杉の事を嫌ってるんだか。

 

「私に聞かずとも、あなたはその答えを既に持ってるじゃないですか」

「え?なんだそれ」

「......」

「今はそれより一花です。どこにいったのでしょう」

 

答えを既に持ってるか。まったく、上杉の事を信用してるのかしてないのか分かんないなぁ。

 

「少しは優しく接してあげたら?」

「......先生の言うことでもできることとできないことがあります」

「まったく素直じゃないんだから。ねぇ上杉?」

 

後ろから付いてきているであろう上杉に言葉を投げかけるつもりで振り返るがその姿はなかった。

 

「は?」

「どうしたのですか先生?」

「いや......上杉がいなくなってて...」

「何を......え!?上杉君!?」

 

ドォン...

 

五月の言葉が花火の上がる音に虚しくかき消されるのだった。

花火大会終了まで30分を過ぎていた。

 

 




今回は、花火大会ではぐれた他のメンバーを探す回を書かせていただきました。
最後の最後でまたはぐれてしまいましたが、どのように合流していくのか、原作とはちょっと違う形で書かせていただければなと思います。

では、また次の投稿も読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

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