焚き付けたのは、そりゃ私だけどさ。良いじゃん変態ちー、とかどんどん変態なりなさい、とか言ったし。
でもさあ、まさか本気でやらかすとは思わないでしょ。
送られてきた画像を見ながら、私はそんな思いで溜め息を吐く。スマホのなかにいる親友は半裸のまま満面の笑み、対して組敷かれている大喜くんは乱れた衣装で泣きそうになっている。
なにやってんのよ、ちー。いやまあナニやってたんだろうけど、大切にしたいんじゃなかったんかい。
どうしてこうもブレーキがついてないんだ、あのバカは。
――思えばバスケを始めてからも、一直線だったっけ。
カッコいいからバスケやる、とちーが言い出したのは小学生の頃。お母さんもバスケ経験者らしくて、そのツテで地元のチームに入り毎日を練習に捧げてた。ずっと運動苦手だったくせに、熱中して走り回る姿はそれこそカッコ良かったな。私も何か始めたくなって、泳げもしないのにスイミングスクールなんか入ってみたりした。ああそうだ、健吾に会ったのもあれが最初だ。
結局スイミングは中学辺りで止めてしまい、ジュニアアイドル見習いみたいな感じでフラフラしてた私。なのにちーは一切ブレないまま、スポーツ強豪の中高一貫校である栄明へと進んでいった。あの行動力は見習うべきだったんだろうな、うん。
そこからお互い忙しくなってあまり会えなくなったけど、たまに会えばいつでも昔に戻れる。……と、思う。
とは言え変わらないのはバカだって事くらいか、段々とオトナにはなってるわけだから。
ちーが「好きになりかけてる」とか言ってたのはいつだったかな、もうずいぶん前な気がする。
慎重すぎて進まない二人を見ててやきもきしたもんだ、私らも私らで大概だった癖にさ。まだまだ若葉マークが取れないのに、偉そうに相談なんか乗ってみたり。菖蒲くらい経験豊富なら説得力もあるんだろう、いや違うかな。あれは常時蛸足配線過ぎて、なんの参考にもならない。
しかし、だ。そうは言っても、だ。
段階すっ飛ばしていきなり襲うんじゃないよ、本当に。
怒濤の如く押し寄せてくるのろけの大群を捌きつつ、要点を纏めるとこうだ。インターハイどころか予選で怪我して不本意な引退を余儀無くされたちーは、自己嫌悪で潰れかけていた。自分のせいで栄明女バス部を半端な成績にしてしまった、みんなの夢を奪ってしまったと。そこに寄り添い支えてくれた大喜くん、その優しさに辛抱たまらなくなり――気が付けば跨がっていたそうだ。
いや、いやいや。いやいやいやいや、待て待て待て。どうやっても繋がらないだろ、その話。安いAVでもそんな安易なの無いぞ、多分。あと二言目には『大喜くん可愛いから仕方ないよね』とか言うし、ほんとになんなんだよ。
大喜くんも災難だな、そういう目的で優しくしたんじゃあるまいに。あの子は良い子だから、心底ちーを心配して気遣ったんだろう。その結果がこれじゃあちょっと割に合わないんじゃないかな、まあ良いけど。……良くないか。
しかしまあ良い顔してるなあ、ちー。
小学生の時分からすべてをかけてきたバスケを失って、それでも新しい夢に向かって突き進む。傷付いて悩んで、また立ち上がる。ちーはいつだってブレやしない、誰にも止められない。大喜くんとしては複雑だろうけど、まあ男の子だし平気だろ。お婿に行けない身体になったとしても、ちーが責任とるさ。
私の親友が降伏なら、一先ずそれで良いや。
どうせ考えても仕方がない、とりあえず今日はもう寝よう。こっちもこっちでまだまだ手探りなんだから、あんまり他所の心配してられないし。それに明日は健吾と久々のお泊まりデートだ、体力を温存したい。
まあ、どうにかなるさ。どうにかするさ、あの二人なんだから。
無責任な事を呟きつつ、延々となり続けるスマホの電源を切って私は目を閉じる。
頑張んなさいよあんたら、私らも頑張るからさ。
「進路なんだけどさ、猪股家にこのまま住まわせて貰って大学行くことにしたよ」
「あー……そう。まあ高卒でそのまま嫁入りってのも、今時は不味いもんね」
「私としては大喜くん連れて二人暮らししたいけど、由紀子さんに全力で止められちゃった」
「ママさん賢明だわ。あんたの事だから搾り殺しかねない」