連なるアオい日々の先
「はいじゃあ、休憩入りますー」
スタッフさんの声を受けて、姿勢を崩し気持ちを緩めたり緩めなかったり。一旦バラけてスマホをチェックしたり水持ってきたり、各員それぞれの形で身体を休めて次のカットに備えるわけだ。そんなに難しい指示はされてないけど、やっぱりさすがにちょっと緊張するかな、こういうのって。
大勢集まっての写真撮影なんて、学校や部活以外ではなかなか無い。
ワイワイ過ごすのはともかく、そこを切り取って一葉の写真にするってどうも照れ臭いな。
だけど、でもなあ。そもそもこれって、何の為に撮ってるんだろう。
まさか如何わしい目的ではないだろうけど、どうも人選が読めないと言うか意味が分からない。
雛や鹿野先輩辺りはビジュアル的に映えて良いんだけど、グラドルの花恋さんがいるのは何でよ。菖蒲がお姉お姉言ってるしまさか姉妹なのかな、そのツテで呼んだとか? いやだから何のために。
猪股や笠原とか、体育館で何度か見た覚えがある先輩っぽい男子はなんで参加してんの。て言うか猪股、あんた何でセンターにいたのよ。そりゃまあそこらの女子よりかは可愛いけど、それこそ雛たちの方が映えるでしょうに。
あと全然知らない人もいるんだけどね、なんか美人だけど目付き悪い人とか色々。
ホントこれ、何の集団なんだろうか。
そんなこんなで撮影も終わり、猪股は一足先に笠原たちと一緒に行ってしまった。まあ私だってさっさと帰っても良いんだけど、それもそれでなんか勿体無い気がする。高そうなケータリングも用意されてるし、雛がいれば一緒に一休みするんだけどな。あんにゃろめ、菖蒲と何処かに消えちゃった。最近どうも菖蒲とばっかり仲良くて、なんか不満だな。……友達を取り合うほど子供じゃないけど、さ。
――と。
「島崎さん、だっけ。お疲れー」
「あー……お疲れです鹿野先輩」
千夏で良いよ、とポカリのペットボトルを渡しながら気さくに笑いかけてくれる鹿野せ……千夏先輩。こうして近くで見るとホント綺麗だなこの人、そりゃ男子がファンクラブなんか作るわ。
にしてもこの人バスケ部なのに、なんで雛とあんな仲良さそうなんだろ。エース同士通じあうのかな、不思議なもんだ。
喉を潤しつつ腹ごしらえもしつつ、どちらともなく雑談が始まる辺りが女子だな私たちも。黙ってる方が気まずい、と思うのが私らだ。
「いやー、こういうの不馴れなもんで。千夏先輩は長いんです?」
「んー、私もそんなに何回もやってないけどね。まあ何ヵ月かに一回、呼ばれたり呼ばれなかったりする感じかな」
最初に撮って貰ったのはこんな感じね、と見せてくれた一葉。
そこには何故か、猪股と二人並んでいる千夏先輩が写っていた。いやまあ写りは良いと思うけど、どういう意図の写真かやっぱり分からない。
次は雛と二人、そのまた次は雛と猪股と三人組で。こうしてみると仲良さげだけど、この人が猪股と親しいなんて聞いたこと無い。他にもソロ写真があったかと思えば、雛と並んで水着姿になってたりするし。……大分盛ってるみたいだけど、言わない方がいいよね。失礼だもん、実際。
どれも美しいし羨ましいけど、でも――。
「っと、そう言えば由紀子さんに買い物頼まれてたんだ。私そろそろ行くね、じゃあまた学校で」
芽生えた疑問を口にする暇も無いまま千夏先輩は荷物をつかんで立ち去ってしまい、後に取り残された私は一人悔いる。
これ何のどういう写真なんですか、って聞きそびれてしまった。
んー……まあ良いか、別に。この辺の切り替えの早さもまた、私のウリなんだし。
ああおかえり荷物届いてたわよ、と帰宅してすぐ母さんに言われた私。玄関先に置いてあった段ボールを部屋へ上げてから、私はようやく考える。
「なんかポチったっけ……、覚えてないけど」
大きさの割にはそこまで重くもないし振ってみると音がする辺り、大分過剰包装だな。まあ良いけど。着払いでもなければ怪しい伝票が付いてるわけでもなし、受け取ったからって請求が来るタイプの詐欺ではない……と思う。もしそうだったら秒で消費者センターだな、即断即決。
とりあえず開けてみるか、と開封作業に臨むこと数十秒。あっさりと開放された中から覗いたのは、見覚えのある人々が集った姿だった。
「あ。あー……そっか、あの時の写真か」
ど真ん中で輝く笑顔の猪股、その後ろに揃った千夏先輩と雛。更に横には私も写ってる、なんか表情がアレだけど。こんな口開けてたかな、どうだっけ。男バドの部長さんも、何やってんだろな。
まだそんなに経ってないのに、懐かしい気がするのがなんだかおかしい。それに千夏先輩が見せてくれたのも入っているし、雛が一人で写ってるのもある。セットで送ってくれたんだろうか、なんか気を使わせた感じがするなあ。
もっとよく見ようと手に取ろうとして私はふと、これがただの写真ではないと気が付いた。厚みがあるっぽいのはフォトフレームとかに入っているからだと思ったけれど、どうも違うようだ。持ち上げてみるとそれは、どうやら書籍らしい。それも全部で十冊、それぞれ私たちの写真を表紙に使っているというわけだ。
いやなんでこんな事したんだろう、私たちに関わりのあるものなのか。しかしそうなると、この書いてある文字列はタイトルなんだろうな。
「えー……と
まあ読めば分かるか、どうせご飯には間があるし。
さてさて、面白いと良いなあ。