公式で名前出てこないんですもの。
〽️櫻と言う字を分析すれば、
実際それを気にする羽目になるとは、まさか思っても見なかった。それも桜の時期が近付けば近づく程、余計に。
平々凡々な専業主婦やってる身としては、若い頃じゃあるまいしあんまり大騒ぎもしたくない。でもなあ、うーん。
大喜と千夏ちゃんが付き合ってるのはとっくに知ってるけど、どうもあの二人は隠し通せてるつもりでいるらしい。千夏ちゃんの卒業辺りで何か大きな話と共にこっちに打ち明けてきそうで、気が気じゃないのだ。
千夏ちゃんを預かると決めてから危惧がなかったとは言わない、だって春架の娘なんだから。我が親友は押してもダメなら更に押せ、押して押して押し通れが信条。勘とノリと勢いだけで生きてきたあのバカの血を色濃く受け継ぐ二世が、予想通りになんか動いてくれるものか。
それにひきかえ大喜は、……うん。あの子割と父親似で奥手みたいだし、下手すると速攻で押し倒されてるかも。まだまだ「おばあちゃん」にはなりたくないんだけど……どうだろうなぁ……。
しまった失敗したな、と思ったのは最初の夏。あの人と千夏ちゃんを二人にしない方が良かった、まさか事前に話し合った件を本人に言うとかどんだけ空気読めないんだ。「幸せになる義務がある」とか思わせたくない、背負って欲しくない。その上必要以上に大喜を意識して距離を取ったりして、あれこれとギクシャクして来たり来なかったり。余計な事を言わないで、と一発殴りはしたけどそれで話が片付く訳もなく。
秋になって春架が千夏ちゃんを連れていったせいで一時同居解消した時は、大喜の呆けぶりが酷かった。うんまあそりゃいなくなったら辛いよね、――
両片想いを見守るのはスゴく大好きなんだけど、でも実の息子と親友の娘だから少し複雑だった。まあ幸い真夜中に天井板がギシギシ言うことも、干していた洗濯物が行方不明になることもなくて何より何より。
で、だ。一年ほど前、去年の冬休み。旦那の実家にいる筈の春架から、大喜くんがこっち来てるよとメッセが飛んできたあの時、私は確信した。バド部の合宿だかなんだかで大喜は確かに長野には行っている、でもまさか広い長野県で偶然会ったりするものか。大喜は間違いなく、千夏ちゃんを目指して行ったのだと。
これは話が動くだろうなと思っていたら、大喜の誕生日に千夏ちゃんが晩御飯を作りたいとか言ってきた。ああなるほど、二人きりになりたいのね。つまりはもう、付き合ってるとみて間違いない。さてどうなるか、どう出るか。
私だって樹の股から産まれた訳でなく、そっちへの理解もそこそこある。預かった他所様の娘さんではあるけれど、一番大切なのは本人の気持ちだ。その時が来たなら、親として責任のある態度を取らなければいけない。
頭ごなしに否定するのではなく、二人の将来を考えてアドバイスしていけたら良いな。
――などと思ってはいたのだけれど、……思いはしたんだけど。
最近の子は頭が良くなってるとは言うけれど、まさかここまで清いお付き合いを続けるとはなあ。私らの頃は勢い任せだったのに、人間って進歩を続けている。いや最初はそれが微笑ましかったけど、今はなんだか不安になってくる。千夏ちゃんは母親がアレだとは言え、父親に似たのか割かし成績も地頭も良い方だ。敢えて交際自体は隠しきらない事で、どこまで進展しているのかは測れないようにしているのではあるまいか。どうもあの子は予想の斜め上を行くと言うか、絶対ややこしいことしでかしそうなんだもの。
そうなると、今の私が持っている認識も正しいとは言えないな。さて、どうしよう。
現時点での予定では、千夏ちゃんは三月いっぱいでうちを出て大学へ通うため独り暮らしする事になっている。……筈だ、多分。言い切れないのは手続きその他すべて千夏ちゃんが一人でしているので、私はどうなるのか把握できていないから。卒業と同時に大喜を引っ付かんで行ってしまってもおかしくないかもしれない、別に欲しけりゃ熨斗付けてあげちゃうけどさ。でも私にも世間体ってもんがあるから、そんな駆け落ちみたいなのは控えていただきたい。
しかしその線で行くと一番不味いのはやっぱり、実は子供出来てましたーとかそういう話だわ。それはさすがに怒るぞ、母親と同じ轍踏んでんじゃないよ実際。
まあ、だ、ここでいくら考えたって仕方ないか。〽️こうしてこうすりゃこうなるものと知りつつこうしてこうなった、なんて都々逸もあるし。
なんにせよ、もうすぐだ。
どんな事をやらかすにしろ、見守ってあげるべきかな。他に手もないし。