アオのハコ短編集(仮)   作:扇町グロシア

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そこからアオく見守る日々

 最近何て言うか、息子たちの様子が変わった……気がしなくもない。具体的にどうこうではないけれど、気配のようなものが違うのだ。

 まさか大喜が何かやらかした、なんて事は無いと思うけどね。あるとしたら千夏ちゃんからだろう、うちのバカ息子に何ができるというんだ。いや言ってて虚しいけどさ、うん。

 だけどまあ、なにしろ()()()()()()が一切無い子だからね実際。多分父親に似たんだな、奥手というか草食系というか――被捕食者というか。千夏ちゃんは母親似だな、あれもあれで相当な女だから。

 別に構わないっちゃ構わないけど、構わないけど……少しだけ複雑かもしれない。

 

 今や小学校でも中学年くらいになると、子供たちの恋愛とかそういう事への対応が保護者会の議題になったりする。私らの頃はもう少し後だったんだろうけど、自分の親に当時の事を聞くわけにもいかないから良くは分からない。まああれだ、身体の発育に応じて心だって変わってくるという事。それを責めるのではなく、受け入れて寄り添うのが親としての責務だって話。

 私だって樹の股から生まれたわけじゃあるまいし、その辺は色々と経験してオトナになった身だ。男子のそういうのは正直完璧には理解できないけど、本人だって大変なんだろう。親なんだし、そこは支えてあげないとね。

 ……なんて思いはしたけれど、したけれど。大喜と来たら、幾つになってもコドモのままにしか見えない。ナリはともかく中身は小学生から変わってないんじゃないかな、あれはさ。

 部屋に勝手に入るなとかそういう生意気な事は言うけど、ヘンなのを隠してる様子は全く無い。毎日部活だなんだとドタバタ走り回って、夜は電池が切れたように爆睡。元気な小学生かアンタは。

 まあ、だからこそ――千夏ちゃんを預かる決心が付いたのだけれど。もしあれが色気付いてたら、とてもそんな事は出来なかった。遠い昔とは言え私にだって思春期ってもんがあったわけで、そんな時代の私はクラスの男子たちがグラビアやら何やらの話で盛り上がってるのを気持ち悪く感じていた。男子ってのはそういうもの、なんて割りきれず心の底から「穢らわしい」と思っていたのだ。そこから一歩踏み出してしまえば、自分達にだって同じような()()がある事を受け入れてしまえる。だけどそれは当人の心の持ちようだ、強要は出来ない。

 それでも千夏ちゃんが不満も見せず笑ってくれているのは、気を遣っているとかではなさそうだ。緊張する必要さえない、弟くらいに思ってくれているんだとしたら逆にちょっと不安だけど。それはそれでノーガード過ぎる、少しは自分が女子だって自覚して欲しい。

 だけどなあ、それでギスギスするのも嫌だし。ああ、どうしようかな。

 

 あの二人が「交際」している可能性は、もしかしたらかなり高いかもしれない。しかしまあそういう事を親になんか話すまい、私だってそうだった。初めての彼氏は高校三年の時に出来たしそれなりの数と付き合いはしたけど、親に知らせたのは結婚する時だけ。だって恥ずかしいじゃない、そんなの。いちいち報告するような家だって有るだろうけどさ、私としてはどうも違和感がある。

 それにもしそうなってたとして、大喜が「千夏先輩と付き合い出した」とか言ってきたら私はどう応えれば良いんだろう。千夏ちゃんから「息子さんを私に下さい」って言い出したらまあそりゃ、こんなので良かったら熨斗付けてあげちゃうわよーとか笑って言えるけどさ。大喜からそういうのは生々しくて辛い。

 知りたいけど知りたくない、面倒だなぁ実際。

 ……でもいつかは、向き合わないといけないのよね。でももし二人が付き合って結婚とかなんて事になったら、私あれと親戚になるのか。そっちの方が辛いわ、向こうだって元チームメイトが娘の姑になるとか考えたくだろうけどさ。

 ああ、考えるの面倒くさい。めどい。頭使うの嫌いなんだよね、私。

「まあ、――良いか」

 なるようになるでしょう、男と女なんてそんなものよ。

 とりあえずは節度をもってくれればそれで良い、さすがに今子供出来て学校やめるとかなったら全力でひっぱたくけど。

 親なんて遠くから見守るもの、それで良い筈。多分ね。

 

 

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