タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV001「輝く暁の明星の、いと美わしきかな Wie schön leuchtet der Morgenstern」より。
登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、キリエとラーラマリア、シャガールとドガ、他2名。「鬼滅の刃」より、煉獄杏寿郎。他モブキャラ数名。
注:小説ではなく、台本風読み物です。残酷・残虐なシーンが多く書かれております。
同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
pixiv: https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663
【挿絵表示】
「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物
【 輝く暁の明星の、いと美わしきかな(後編) 】
Wie schön leuchtet der Morgenstern
★ (午前4時頃)アントラーピーク山麓・バトルマウンテン鉱山地区・街中から鉱山への登り坂
満月は、遥か西の山脈へと達しようとしている。
それでも、煌々とした月光は、地上を明るく照らす。
鉱山方向へ続く街の通り、小さな教会の側の道路を、ドガが疾走する。
広場から一気に、ガガガガガガ!と地を削り、轟輪で走駆。
速度は、要塞砲の射出を超える。
教会を尻目に、そのまま山へ登坂する道に突入していく。
ドガ「(ギリィ、と歯を噛み)くそッ! あの剣士めッ! 何だあの剣技・・・」
途端。
ドガの真横に、ボウッ!と大きな炎の塊が出現。
ハッ!と、顔を向けるドガ。
炎が解かれ、中から杏寿郎が飛び出してくる。
突き刺すような鋭利な眼光で、ドガを睨む。
凄まじい速度の自分に並び、宙を舞う杏寿郎。
ドガの両眼が、見る見る驚愕で丸くなっていく。
即座に、日輪刀が閃く。
一息で、ドガの頸を目掛けて、白銀の光の軌跡を描く。
それは正確に、兜と甲冑の隙間を狙って空間を裂く。
ドガの顔が、絶望に歪んだ、瞬間。
杏寿郎の頭上に、影。
5ヤードほどの高さに、ブワッ!と飛来する、月光に浮かぶシャガールの姿。
4本の鋼腕を使った跳躍で、隔てた距離を一瞬で跳び込んでくる。
既に4つのドリルの先端が、猛烈な殺気で杏寿郎に迫っている。
杏寿郎、ズザアッ!と両足を地に擦りつつ、身体を返す。
ドリルが4本同時に、杏寿郎の頭、両腕、腹部に突進してくる。
両脚に、渾身の力を込める杏寿郎。
杏寿郎「(深い呼吸と共に)炎の呼吸、肆の型・・・(突き抜けるような発声)盛炎のうねり!」
日輪刀が唸り、前方空間に円の軌跡を描く。
ゴオオオオオッッ!と、杏寿郎の身体の前面に溢れ出る、紅の炎。
それは円周を形成し、幾重にも重なった帯のような、見事な炎渦。
一瞬で、シャガールのドリルを、ガウン! ズガン! ガギン!と跳ね飛ばす。
金属腕が、上下左右に宙を泳いで流れる。
炎が鎮まった頃、スタン、と着地するシャガール。
鋼の腕を自分の横に、蟹の脚のように構え直す。
杏寿郎、瞬きひとつせず、シャガールに目線を据える。
シャガール、苛立たし気に顔を歪め、杏寿郎を睨む。
相対する互いの位置、およそ5ヤード。
ドガの姿は、鉱山地区に遠ざかって、小さな点となっている。今も移動中。
シャガール「思い出したぞ。お前のその武器、ハポンのサムライのカタナだな? 銃でもないたったの一振りで、私の鋼腕に勝てると思うのか?」
杏寿郎「お前たちが罪なき人に牙を剥く鬼である限り! 頸を落とすまで膝は折らない!」
シャガール「(怒声)ほざくな! では鋼の腕で葬ってやろう! それからたっぷり血肉を喰ってやろう!」
両者が、同時に地面を蹴る。
シャガールの金属腕が、射程圏内に入った途端、動く。
1本ずつの時間差を付け、杏寿郎の頭部と四肢を連続して狙う。
殺意を包括して回転する、先端のドリル。
まったく動じることない杏寿郎の日輪刀が、赫く輝く。
カキィッ!と、シャガールの一撃が、弾かれる。
カキュン!と、二撃目も、同様。
相対距離、約3ヤード。
足を停め、それ以上近付けまいと、シャガールが鋼腕を繰り出す。
ズドドドドドッ!と、目にも留まらぬ速度で、突き刺さんと。
赤褐色の触手が纏わり付いており、一撃が力強く、重い。
しかしすべてのドリルを、杏寿郎が日輪刀で捌く。
カシュン! カキィ! カカッ!と、全方位からの攻撃を外側へと。
二種類の音が、混ざり合いながら、尚も速度を増していく。
シャガールの凄まじい突きと、杏寿郎の弾きが、猛烈な勢いで衝突し合う。
とうとう、ガガガガガガガガ!!!という、ひとつの音響のみとなる。
シャガール、一向に衰えない防御の刃に、クッ、と奥歯を噛む。
杏寿郎、くわっ!と両眼を思い切り見開く。
途端。
バン!という破裂音の後、杏寿郎の姿が消える。
次の瞬間、ドン!という重低音と共に、シャガールの眼前に現れる。
相対距離、約1ヤード。
息を飲んで、僅かに凝り固まるシャガール。
瞬きの間に間合いを詰めて、懐に跳び込んで来た、驚くべき足捌き。
杏寿郎、日輪刀を一旦下段に構え、すかさず鍔を返し、シャガールの頸を狙って振る。
シャガール、襲い来る刃を、1本の金属腕を折り曲げ、ガシィン!と跳ね除ける。
間髪を入れず、杏寿郎は弾かれた刀を返し、再度空を裂く。
ガギャン!と、それも別の鋼腕で叩き、躱す。
尚も日輪刀が、別方向からシャガールの頸に円弧を描く。
今度も金属腕を盾のようにして、ガシャッ!と跳ね除けるシャガール。
その丁々発止の速度が、増す。
杏寿郎の剣撃と、シャガールの防衛が、苛烈な演武を繰り広げ始める。
やがて、ガギガギガギガガガガガ!!!と、一本の轟音を奏でる。
シャガール、防戦一方。
余りの至近距離での剣技に、鋼腕を伸ばす暇すらない。
シャガール「(歯噛みをして)ぐぬゥ!」
シャガールの背中の、金属腕の根元に当たる部分から、もぞ、と別の触手が湧く。
それは、凄まじい音響に紛れ、様子を窺うように蠢く。
そして一気に、ドバァーン!と破裂する勢いで伸びる。
まるで、孔雀の飾り羽根のように。
膨れ上がるように大きく迂回して半円軌道を書く、6本の赤黒い触手。
隙を衝いたと確信し、ニマ、と嗤うシャガール。
直後。
杏寿郎が瞬間屈んで、刀を最下段、後方に引く。
赫刀が、劈く。
日輪刀の切っ先が、自分を中心に空間を8の字を描くように閃く。
完全に可視速度を超越した、杏寿郎の剣舞。
一拍の、後。
ザシュウウウッ!と残響を放ち、火の粉を飛ばし、バラバラになって四散する6本の触手。
驚愕で、下顎を大きく開放するシャガール。
シャガール「(声が裏返り)速い!」
シャガール、触手の破片が落下する前に、後方に大きく跳ねる。
杏寿郎、剣撃から身体を戻し、再び正眼の構えを取る。
ボト、ボト・・・と細切れになった触手が落ち、チリチリチリ・・・と燻り始める。
両者の距離、5ヤードに再び開く。
チラ、と触手の切り口に目を遣るシャガール。
断面が焼けるように真っ赤になっており、湯気すら立っている。
いつもは一瞬で回復する切創が、モ・・・モッ・・・モゴ・・・と極めて緩慢な再生。
シャガール「(ぐぬ、と喉を鳴らし)斬られた触手の再生が追い付かない・・・切り口が灼ける・・・お前のカタナ! ただの刃ではないな!?」
杏寿郎「これは日輪刀。猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を原料とし、陽の光を吸収する特殊な刀だ。お前たち鬼が最も嫌う、太陽そのものと言っていい。(ギン!とシャガールを睨み)次はお前の頸に刃を立てる!」
シャガール「(気圧されつつ)ぐぬぅ・・・させぬ・・・(振り払うように)させるものかァ!」