タイトルは、東京事変「閃光少女」より。
登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、サンタミカエラとアンナロッテ。「鬼滅の刃」より、煉獄杏寿郎。他、サブキャラ(オリキャラ)とモブキャラ多数。
注:小説ではなく、台本風読み物です。残酷・残虐なシーンが多く書かれております。
同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
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【挿絵表示】
「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物
【 閃光少女(後編)】
★ (午前3時半頃)サンフランシスコ・イェルバ=ブエナ島・アメリカ陸軍基地
下弦の半月が、天の頂に到達。
夜空に流れる灰色の雲の間から、薄く蒼白い月光が降り注ぐ。
サンフランシスコ湾の波が、夜霧と共に岸壁に叩き付けられている。
突然、イェルバ=ブエナ島の桟橋に、小型武装艇が荒っぽく横付け。
2名の人影が、飛び移るように上陸。
先陣を切って基地の建屋に向かって、大きな歩幅で移動するアヴィスパ。
それに小走りで続く、アンナロッテが『大尉』と呼んでいた上級士官。
背広姿のアヴィスパが、一種異様な雰囲気を撒き散らしている。
赤土が剥き出しの前庭の、中央付近に到達する2名。
歩行を維持しながら、大尉が、意を決したようにアヴィスパの後頭部に目線を向ける。
大尉「(機嫌を窺うように)な、なあ、アヴィスパさん・・・目的は果たしたんだ。貴方もジャパンに渡るなり何なりした方が、いいんじゃないですか? 追っ手も来ている。これ以上リスクを負うことも・・・」
急に立ち止まるアヴィスパ。
ビクウッ!と、やや大袈裟な反応で停まり、身体を反らせる大尉。
アヴィスパ「(振り返って、怒声)ふざけるな! あのサムライどもをここで皆殺しにしてからだ! 追って来てるなら結構! この島で殺して、全員我輩の兵隊にする!」
頬を、ひく、ひく、と引き攣らせながら、大尉が怯えた両眼で固まる。
アヴィスパ「第一貴様、自分たちの部下を吸血鬼掃討に投じるのが不満だったのだろう! 名誉がない、とも言ってたな! 防疫修道会と手を組むのも御免、だともホザいておったな!」
大尉「(声を詰まらせ)・・・しかし! 私の部下が吸血鬼にされるなんて聞いていない! (顔を伏せ、訴えるように)もう・・・本当に勘弁してほしい・・・こんな事態になるなんて・・・私が間違っ・・・」
いきなり。
アヴィスパの右手が、ヒュン!と動く。
大尉の首筋に、チッ・・・と小さな傷が付き、プツ・・・と一滴の血が膨れる。
大尉「(茫然として)え?・・・」
右腕を体側に下ろしたアヴィスパの巨大な眼球が、不気味な色になる。
二拍の、後。
顔面から急速に血色が失せ、両膝を地面に落としてしゃがみ込む大尉。
アヴィスパ「(冷酷な声質で)微量な毒だが、黙らせるには丁度良いわ」
大尉「(喉が詰まったように)お・・・ご・・・が・・・」
大尉、全身をぶるぶると震わせ、顎を大きく落とし、涎をダラダラと流し始める。
顔面蒼白で、両腕は、だらん、と垂らしたまま、膝立ち。
直後。
サンフランシスコ湾から、サーチライトの光が届く。
恐らく、自分たちを追って来たボートのもの。
アヴィスパ、不快極まりない表情を貼り付けて、沖合の波間を睨む。
アヴィスパ「(腹立たしそうに)・・・もうよい。面倒だ」
ヒュン!と、異形の右腕の真っ黒な爪が、今度は空を横に薙がれる。
途端。
大尉の頸が、パカッ・・・と上下に切り口を開ける。
ブッシャアァァ!・・・と、噴水のように噴き出す、鮮血。
両眼を正円に見開き、眼前の異形の姿を凝視する大尉。
刹那の、後。
大尉、ゴボォッ!と拳大の血の塊を、口から吐き出す。
大尉「(声にならない声)ご・・・お・・・」
アヴィスパ「(虫けらを見るような目で)小物が・・・(ニヤ、と嗤い)まあいい。兵にする時間が早まっただけだ。正体を知る者は、全員我輩の兵にする」
ぐりん、と両目が反転し、そのまま前のめりに倒れていく大尉。
ブシャッ・・・と、自分の流した血と吐いた血の拡がる地面に、沈む。
それを見届けることなく、身体を返すアヴィスパ。
今は静かな、陸軍基地の建屋全体を見渡す。
アヴィスパ「(残虐な声色)あと何人残ってたか知らんが・・・」
アヴィスパ、ブウォン・・・と、姿を漆黒の流動体へと変化させる。
そのまま、朧のように四散し、夜の闇に紛れる。
一時的な沈黙が降りてくる。
★ (5分後)サンフランシスコ・イェルバ=ブエナ島・アメリカ陸軍基地
島の桟橋に、接岸した防疫修道会のガスモーターボート。
少し離れた場所に、逃走していた小型武装艇が係留されているが、無人の様子。
既にサンタミカエラと杏寿郎は桟橋に立ち、陸軍基地に正対している。
アンナロッテが降り立ち、操舵室に残る修道会兵Cを振り向く。
アンナロッテ[面の奥から]「船をいつでも出せるよう、待機してなさい」
修道会兵C[面の奥から]「(敬礼し)了解!」
そして3人が、並んで基地の敷地に歩を進める。
あと数刻ほどで夜が明けようかという、時間。
建屋は灯りひとつなく、全体として動く者の気配がない。
蒼白色の月の灯りに覆われて、鎮座している。
時折、灯台の照明が上空を旋回するのみ。
アンナロッテ[面の奥から]「上陸したのは間違いないでしょうが・・・(怪訝そうに)基地が静か過ぎます」
木造の建屋が数軒並ぶ、その前庭。
桟橋からそこに足を踏み込んで、3人がほぼ同時に気が付く。
左側奥、前庭の拓けた赤土の中央付近で、誰かが俯せで倒れている。
小走りで接近し、3ヤードほどの位置で立ち止まる3人。
地面に転がっているのは、この基地の司令官、『大尉』。
口を悲鳴を上げたような形で固定し、白目を剥いて、大量の血の海に沈む。
息をしている様子がない。
サンタミカエラ「(ごく、と唾を飲み込み)ここの司令官・・・」
アンナロッテ[面の奥から]「用済み、という訳ですか・・・(左手を横に差し出し)アヴィスパに襲われた可能性があります。だとすれば、吸血鬼化しているでしょう。迂闊に近寄らないように」
直後。
バン! バン! バン!と、方々の建屋の扉が次々と開く。
3人が、すかさず音のした方を見渡す。
基地の建屋の出入口が開放され、ぞろぞろ・・・と現れる複数の人影。
登場する者ほとんどが、白濁した眼球で、浅黒く変色した皮膚。
中には、まだ人間としての血色を残している者も、数体。
両腕を垂らし、だらしなく開いた口内に並んだ牙の奥から腐臭を放つ。
のそ、のそ、と緩慢ながらも足を運び、前庭に湧き出てくる。
サンタミカエラ「(驚いて)吸血鬼っ!?」
杏寿郎「(据えた目で)軍服を着ている! よもや陸軍の兵士たちか!」
アンナロッテ[面の奥から]「ええ。しかも、以前見た顔もいます」
サンタミカエラ「(拳を握り、構え)生気が感じられねェ・・・死兵だコイツら!」
以前基地で見掛けた、陸軍兵士BとCの姿も、その中にある。
双方とも、生物としての雰囲気が完全に失われている模様。
見る見る前庭を埋め尽くしていく、死兵の群れ。
斃れている司令官の遺体を踏み付け、蹴飛ばし、乗り越え、更に近付いて来る。
左右に広がり、波のように押し寄せる死兵の軍隊。
現れたのは20体を超え、尚も増えている、
3人が距離を取り、じりっ、じりっ、と後退る。
途端。
ブウォン・・・と、重苦しい音が、杏寿郎の背後に噴き上がる。
鯉口を切るのと同時。
日輪刀の白銀の光が、翻る。
杏寿郎、180度真後ろに、横薙ぎに刃を奔らせる。
ガキイイイッ!と、凄まじい金属音。
サンタミカエラとアンナロッテが、振り向く。
そこには、出現したアヴィスパの左腕の爪を、日輪刀で弾き飛ばした杏寿郎の姿。
杏寿郎「(日輪刀を戻しつつ)む!」
ズザアッ、と足の裏で地面を擦って、真後ろに距離を取るアヴィスパ。
杏寿郎、すぐに正眼の構え。
3人の目線が、一斉にその実体に繋がれる。
背広姿に、昆虫と爬虫類を混合したような異形の身体。
両手五指の、恐竜のような爪が、黒光りして鈍く浮かび上がる。
アヴィスパの口の端から、何かの血液が垂れて付着している。
アヴィスパ「(ふん、と鼻息をつき)小癪な! 今のを止めおったか!」
杏寿郎「(眼光鋭く)やはり上陸していたか! もう逃がさん! ここでお前を滅する!」
アヴィスパ「ほざけ! 我輩の速さはこんなものではないわ! 返り討ちで貴様を殺す!」
杏寿郎、ダン!と地を蹴る。
日輪刀の描く円弧から、ブウーン!と姿を溶かして逃れるアヴィスパ。
バッ!と二者が左右に離れ、即座にまた攻撃を交わす。
ガギャッ! ガギン!と、金属の衝突する高音が鳴り響く。
杏寿郎の剣技と、刀身での捌き、防御。
アヴィスパの肉体変化と、瞬時の移動、鋭い爪での突き。
数回の応酬の後。
丁々発止を繰り広げたまま、移動開始。
サンタミカエラたちから離れ、基地敷地の横から延びる後方の道路へと。
道はなだらかな登り坂で、左方向にカーブして、島の丘へと続いている。
杏寿郎とアヴィスパが、猛烈な激突を行いながら、登坂し始める。
双方の姿は、最早動体視力では捉えられない。
巻き上がる炎と、漆黒の流動体が、ガギッ! ガギャン!とぶつかり合う光景。
一気に距離が開いていき、あっという間にふたつの点となる。
サンタミカエラ、茫然と見てしまい、動くことが出来ず。
その真後ろ、背中合わせの状態で、アンナロッテ。
既に彼女は、迫り来る死兵の群れに正対して、両足を肩幅に踏み締めて立っている。
アンナロッテ[面の奥から]「サンタミカエラ、エンバシラの元へ行きなさい」
サンタミカエラ「(振り向いて、当惑したように)え? でも・・・」
アンナロッテ[面の奥から]「あのアヴィスパという吸血鬼、相当厄介と見ました。エンバシラとふたりで当たりなさい。まだ不明点はありますが、アヴィスパの口を割らせるよりも、斃すことを最優先になさい。こちらの死兵は私ひとりで充分です。(振り返って、少し明るい口調で)大丈夫です。ソリアで浄滅した数の二割程度です。何とでもなります」
視線を絡ませる、ふたり。
きりっ、と勇ましく眉を寄せるサンタミカエラ。
サンタミカエラ「(大きく頷いて)判った。アニキんとこに行くよ。無茶すんなよ、アンナロッテ!」