「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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 杉村麦太先生「キリエ~吸血聖女~」と、吾峠呼世晴先生「鬼滅の刃」のクロスオーバー書き物の『第参巻/日本編』として執筆。作品世界は「鬼滅の刃」、そこに「キリエ~吸血聖女~」からキリエが来訪者として登場する物語。前作『閃光少女【後編】』 https://syosetu.org/novel/315521/46.html からの続き。2024年6月脱稿。
 タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV57「試練に耐えうる人は、幸いなり Selig ist der Mann」より。
 登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、キリエ。「鬼滅の刃」より、竈門炭治郎と竈門禰豆子、胡蝶しのぶ、鎹鴉。及び、両作品からキャラ1名ずつ。他、サブキャラ(オリキャラ)とモブキャラ数名。
 注:小説ではなく、台本風読み物です。残酷・残虐なシーンが多く書かれております。

同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
 pixiv: https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663


【挿絵表示】



試練に耐えうる人は、幸いなり【前編】ー1

「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物

【 試練に耐えうる人は、幸いなり(前編) 】

Selig ist der Mann

 

 

★ 【回想】明治五年・東京府・何処かの山中

 

 明け方近く、雲で覆われた夜空。

 寒風が吹き、少しの雪が舞う。

 周囲を鬱蒼とした樹々が埋め尽くす、深緑の山の中に、一軒家。

 小さな畑と、薪小屋が隣接する黒土の庭に、三人の遺体が転がっている。

 壮年男性ひとりと、老年の男女各一名ずつ。全員がそれぞれ寝間着のまま、大量の出血の海に臥せる。

 家の戸口が開け放たれて、二名の人物が向かい合う。

 戸口の外側に、若い男性。右手で正面の人間の頸を握っている。

 戸口の内側に、若い女性。艶々とした、真っ直ぐ伸びた長髪。

 男性は長身、短い黒髪、眉目秀麗。

 肌が蒼白く、両眼は紅梅色、瞳孔が猫ように縦に長い。

 褐色の道着と灰色の袴の和装。袖から伸びる腕は、逞しく筋肉質。

 しかし、女性を掴んでいる右手は、硬いごつごつとした異形の形態。

 長く、鋭く、漆黒の爪が、女性の頸深くに食い込む。

 女性は両膝を折り、膝立ちで、両の眼球が反転して白目になっている。

 ゴフッ、と喉を鳴らして、口端から血を吐き出す女性。意識は不明のようだが、生きている模様。

 それを、冷ややかな目線で見下ろす男性。

 突然。

 庭の奥、ほとんど可視出来ない闇の向こうから、空気の塊が揺らいで近付く。

 瞬きの間に、何かの影が庭の中央に湧き上がる。

 ボワァ・・・と、霞が渦を巻いて立ち昇り、一瞬で人型になる。

 凍て付く寒風が、ビュウ・・・と短く奔り、朧の気を散らす。

 その場に、相当な長身の人物が、出現。

 身の丈2メートル近く。全身を漆黒のマントで覆い、巨大な二本角の仮面を被る。

 仮面の後ろに、黄金と白銀の混じったような色の髪。茨を丸く紡いだ冠も装着している。

 面の目の奥から、妖しく昏い蒼い瞳が、若い男性の背に視線を向ける。

 ヌウッ・・・と、大きく身体を傾けて接近していく、仮面の人物。

 

仮面の人物「(低音の深い声)鬼舞辻・・・無惨・・・・」

 

 戸口の若い男性が、カッ、と両眼を見開き、振り向く。

 庭の中央から歩み寄る巨大な人物に、鋭利な目線を飛ばす。

 即座に、右手で握る女性の頸から、刺していた指を引き抜く。

 ズルッ、ドサッ・・・と横倒しになる若い女性。

 長い黒髪が、一時遅れて、布団を被せるように女性の身体に乗っていく。

 若い男性、左腕を差し上げ、掲げる。

 直後。

 ズヌウーッ!と、その腕が一気に延伸。

 腕全体が異様にゴツゴツとした、管状の触手に変化。左手先が、槍のように化す。

 空間距離、約3メートル。

 一瞬で、仮面の人物の胸の付近に、ドスッ!と、それが突き刺さる。

 ズブウッ、メギッ、と肉と骨に喰い込む、嫌な音。

 触手の尖った先端が刺さった人物の、動きが停まる。

 『無惨』と呼ばれた若い男性の眉間に、寄る深い皺。

 

無惨「(苦々しく)その名を軽々しく口にするな」

 

 仮面の人物、胸を触手で突き刺されているが、倒れる気配がない。

 微かに頭をもたげ、マントの下から左手を出す。

 手袋を嵌めた左掌で、徐に触手を握り、グッ、と握る。

 そして一気に、ヌブッ!と自分から引き抜いて、それを前方に放り投げる。

 無惨、両目を見開いて、口端を締める。

 シュルッ、と空を裂いて、伸ばした管状を自分に戻す。

 触手から即座に変化して、人の腕の形になる。

 それから一度、左掌を翳して凝視し、改めて眼前の黒いマントの人物に目を遣る。

 

無惨「(訝し気に)私の血が効かぬとは・・・」

 

 無惨の目が、細く切れる。

 正面の人物の胸元のマントには穴が開いているが、出血がない。

 更に、その内側から、グジュル・・・グジュル・・・と、何かが湧く音。

 暗くて、何が起こっているかは不明。

 ザッ、と一歩足を踏み出しながら、鋭い眼光を投げる無惨。

 

無惨「ただの道化ではないな。ただの人とも違う」

 

 いつの間にか、仮面の人物の胸元の音は、止んでいる。

 闇夜の黒土の庭で、対峙する二名。

 無惨、両手に力を入れ、グッ、と、爪を立てるように構える。

 黒いマントの巨漢は、動かず立っている。仮面の為に表情が窺えない。

 何かに気が付き、眉間に皺を寄せ、目線を相手の頭から足元まで移動させ、戻す無惨。

 

無惨「鬼か。にしては思考が読めぬ。私の血で成った鬼ではない・・・髪の色からして、西洋の鬼か?」

仮面の人物「鬼舞辻無惨・・・お前に問う・・・」

 

 途端。

 無惨、極めて不愉快そうに顔を歪め、右手を翳す。

 グギュ、ゴギッ、と音を立て、硬質の肌と尖った長く黒い爪へと、見る見る変化する無惨の右掌。

 

無惨「(苛立ちながら)問いに問いで返すな。まず平伏しろ。頭を垂れて蹲え」

 

 ゴウッ・・・と二名の間を吹き抜ける、一陣の風。

 粉雪が、申し訳程度に空間を過ぎって舞う。

 無惨、躊躇うことなく、仮面の人物へと踏み出し、距離を詰めていく。

 その後方。

 先程、無惨が掴んでいた若い女性の身体が、ビクン!と大きく跳ねる。

 そして、無意識の動きのように、両手が持ち上がり、空を掻く。

 庭で対峙する、得体の知れない人物同志の気配が、倒れている身体を撫でている。

 曇天の夜空の元の、異様な光景。

 

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