「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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 杉村麦太先生「キリエ~吸血聖女~」と、吾峠呼世晴先生「鬼滅の刃」のクロスオーバー書き物の『第参巻/日本編』の『後編』として執筆。作品世界は「鬼滅の刃」、そこに「キリエ~吸血聖女~」からキリエが来訪者として登場する物語。前作『試練に耐えうる人は、幸いなり【中編】』 https://syosetu.org/novel/315521/67.html からの続き。2024年8月脱稿。
 タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV57「試練に耐えうる人は、幸いなり Selig ist der Mann」より。
 登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、キリエ。「鬼滅の刃」より、竈門炭治郎と竈門禰豆子、胡蝶しのぶ、鎹鴉一羽。及び吾峠先生のネーム「鬼殺の流」から、待ち伏せ鬼。他、サブキャラ(オリキャラ)とモブキャラ数名。過去シーンで「キリエ~吸血聖女」より、黒衣の者。「鬼滅の刃」より、鬼舞辻無惨。最終シーンで、「キリエ~吸血聖女~」より一名。
 注:小説ではなく、台本風読み物です。残酷・残虐なシーンが多く書かれております。

同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
 pixiv: https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663


【挿絵表示】



試練に耐えうる人は、幸いなり【後編】ー1

「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物

【 試練に耐えうる人は、幸いなり(後編) 】

Selig ist der Mann

 

 

★ (午前三時半)恩方村・森久保集落・山中

 

 夜の雲が、天の中程でふたつに割れている。

 そこから覗く、蒼黒の暗い空。

 眼下に、闇に覆われた、どこまでの広大な樹海。

 杉と檜の林立する山の斜面を、横方向に向って走駆する、三人の姿。

 日輪刀を右手に下げた炭治郎が先頭。

 両腕を後方に掲げた禰豆子、仕込み傘を両手で構えたキリエが続く。

 タタタタタタタタタ・・・と、かなりの速度で、ブーツと草履の音が鳴る。

 杉や檜の樹々の間隔は、それぞれ約2メートルほど。

 木立の間には、時折広めの空間も存在する。

 森の中に充満する、緑と水の匂い。

 その中を、夏草を蹴り、炭治郎は先陣を切って疾走。

 禰豆子も、炭治郎との距離を一定に保ち、疾駆。

 キリエ、幹と幹の間を、ちら、ちら、と確認しながら、追走。

 炭治郎が、一瞬だけ後方を振り返り、即座に前方を凝視する。

 

炭治郎「(大声で)キリエ! 俺の後を着いて来い! 禰豆子は上から!」

禰豆子「(頷いて)んっ!」

キリエ「(素早く首を上下に振り)判った!」

 

 タン!と、禰豆子が大きく右側に跳ね、更に、タン!と大きく地面を蹴る。

 樹と樹の間を軽やかに縫って、斜面の上方、こちらから3メートルほど高い位置。

 そこを改めて、平行の線上で、かなりの速度で走り始める。

 キリエ、炭治郎まで距離を詰め、彼の後方の約2メートルで追従。

 

キリエ《私が山に不慣れなのを解って、判断してくれてる・・・》

 

 真っ直ぐに、炭治郎の背中、霧雲杉の背負い箱を見詰めるキリエ。

 左右の木立、そして足元には長い草叢、隠れて見えない木の根。

 炭治郎も禰豆子も、それを物ともしていない。

 全身が安定した、見事というべき姿勢で、駆ける。

 

キリエ《ふたりとも、凄い。平地みたいな走り・・・流石ね》

 

 ふたりを見遣ってから、キリエ、ふっ、と口角を上げる。

 突如。

 前方、10メートルほど先の闇が、揺れる。

 ドォン!と、空間を叩き割り、黒い髪が一気に延伸。

 先が杭のように尖り、10センチくらいの太さ。

 僅かの間で、こちら目掛けて襲い来る。

 ザアッ!と、草履を擦り、急停止する炭治郎。

 キリエも、ズアッ!と、炭治郎の真後ろでブーツを鳴らし、止まる。

 即座に、ガシャコ!と、仕込み傘の弾倉から弾丸を供給させる。

 炭治郎、ヒュウウウゥゥ・・・と、白い霧のような尾を引き、深く呼吸をする。

 日輪刀を、チャッ、と大上段に構える。

 ザザザザアアッ・・・と、刀身に水が湧き、蛇が絡む如く巻き付いていく。

 髪の槍が、眼前まで迫る。

 

炭治郎「水の呼吸・・・捌の型・・・(弾けるような声で)滝壺!」

 

 振り被った日輪刀を、一気に前方に叩き付ける炭治郎。

 シャキイッ!と空を裂く音と同時、一筋の流水が切っ先から膨れ上がり、真下へ。

 直後。

 ドッバァァァンン!!!と、数メートル真上から、大量の落水。

 炭治郎の前方、左右4メートルほどの空間に、真上から。

 四本の、滝。

 ドドン! ドドドドドドォォ・・・と、轟音。

 そして周囲が見えなくなるほどの、水飛沫と霧。

 凄まじく尖った槍のような黒髪が、水圧に叩き潰される。

 一瞬で滝に巻き込まれ、粉々になって四散し、消滅する。

 炭治郎、技が発した霧が消えない前に、左側方、斜め前へ地面を蹴る。

 キリエ、炭治郎に続いて、同じ方向へと身を躍らせる。

 一方、禰豆子。

 法面上方を走りながら、樹々の隙間に、黒い紬の姿を発見。

 待ち伏せ鬼、炭治郎に仕掛けた長髪を引き戻している。

 ザッ!と草履を鳴らし、素早く向きを変える禰豆子。

 相手は、杉と檜の林が少し空いた、窪地の中程に立つ。

 傾斜を利用し、一気に加速する。

 すっ、と待ち伏せ鬼が顔を禰豆子に向ける。

 距離、8メートルほど。

 黒髪が、ゆら、と触手のように持ち上がり、ドォン!と宙を裂く音。

 ズアアアァァッ!と、一直線に延伸。

 先が捻じれ、直径10センチほどの杭の形状と化す。

 禰豆子の顔面目掛けて、襲撃する尖端。

 

禰豆子「(きっ、と眼光鋭く)んんっ!」

 

 長髪が届かんとした、寸前。

 シュイン!と、身体を瞬時に縮め、全体を小さくする禰豆子。

 1メートル強の身長へ、変化。

 八歳児ほどの、体躯。

 ビュッ!と、禰豆子のいた空間を通過する髪の触手。

 掻い潜った、直後。

 ズゥッ!と、再び元の身体の大きさへと戻る禰豆子の身体。

 位置は、待ち伏せ鬼の髪が伸びている、真横。

 禰豆子、んふっ!と大きな鼻息をつく。

 猫のような瞳孔の周りの眼球が、血走る。

 額に、ピキッ!と血管が浮き出る。

 瞬間。

 両手の爪を鉤爪のように立て、左右の腕で空を裂く禰豆子。

 ゾン! ザン! ザシュッ!と、三連撃。

 猫科の動物が獲物を切り裂く如し。

 待ち伏せ鬼の髪が、バラッ・・・といくつにも裁断される。

 やや驚いた様子の待ち伏せ鬼、灰黒色の眼球を見開く。

 すぐに、タン! タン!と後方に跳ね、禰豆子との距離を空ける。

 禰豆子、腰を落とし、両脇を締め、ぐっ、と掌を上向きにして構える。

 対峙距離、約4メートル。

 待ち伏せ鬼、髪を戻して自然に垂れ下げる。

 

待ち伏せ鬼「(鼻で、ふん、と嗤い)あらあら、斬るのお上手ね・・・でも髪はいくらだって伸びる。好きなだけ斬ればいいわ」

 

 右半分の長髪を、ドォン!と射出して、グイン!と伸ばす待ち伏せ鬼。

 飛来する髪の触手を、右、左と、爪を立てた手で捌き、斬る禰豆子。

 ザザン!と、二手の攻撃が、一度の音。

 一方、禰豆子から待ち伏せ鬼を挟み、120度反対側。

 鬼の立つ位置から、8メートル。

 杉の樹の陰から、音もなく、キリエが現れる。

 仕込み傘を機銃と同じように構え、銃口が待ち伏せ鬼の頭部を狙う。

 石突に既に装備されているバヨネットが、ギラ、と光を放つ。

 ヴォガッ! ドガドガッ!と、銃身部が鳴り、銃声が連鎖。

 浄銀弾が、続け様に発射される。

 突如。

 キリエと待ち伏せ鬼の中間付近で、黒い塊が、宙に出現。

 連射された浄銀弾が、全弾、ドスドスドスッ!と着弾。

 キリエ、思わず目を剥く。

 それは、待ち伏せ鬼の左半分の髪が伸びて、空中で団子のように固まって丸まった物体。

 さながら、宙に浮かぶ岩のような形状。

 減り込んだ銃弾が、押し出されて、ポロ、ポロ・・・と地面に落下する。

 硝煙が漂う中、動きを停めるキリエ。

 

キリエ「(息を飲み)髪で! 弾を止めた!?」

待ち伏せ鬼「(小馬鹿にした口調)残念ねぇ・・・」

 

 髪の巨塊が、バラッ、と解ける。

 一拍の、後。

 ズドォン!と、黒髪の触手が、キリエとの間を一気に詰める。

 気が付いた時には、待ち伏せ鬼の髪が、ぐりんぐりん、とキリエの首に巻き付く。

 

キリエ「(はっ、として)しまった!」

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