杉村麦太先生「キリエ~吸血聖女~」と、吾峠呼世晴先生「鬼滅の刃」のクロスオーバー書き物の『第肆巻/日本編』の『駒澤編』として執筆。作品世界は「鬼滅の刃」、そこに「キリエ~吸血聖女~」からキリエとサンタミカエラが来訪者として登場する物語。前作『我は欣びて、十字架を負わん【第壱章/横濱編】』 https://syosetu.org/novel/315521/86.html からの続き。2025年10月脱稿。
タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV56「我は欣びて、十字架を負わん Ich will den Kreuzstab gerne tragen」より。
登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、キリエとサンタミカエラ。「鬼滅の刃」より、伊黒小芭内と甘露寺蜜璃、煉獄槇寿郎と煉獄千寿郎、鎹鴉二羽。この話の最終シーンで、「キリエ~吸血聖女~」より一名。
注:小説ではなく、脚本風読み物です。残酷なシーンあり。
同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
pixiv: https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663
【挿絵表示】
「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物
【 我は欣びて、十字架を負わん 】
Ich will den Kreuzstab gerne tragen
◆ 第弐章/駒澤編
★ (翌日・午前十時)東京府・荏原郡駒澤村
晴れ。陽が仰角60度の付近。燦々と降り注ぐ陽光。
時折流れる雲だけが、それを過ぎって行く。
街道沿いには、樹々の数よりも、家屋の数の方が多くなってきている。
進むに従って、余所行きの服の人よりも、普段着の住人と思しき人の方が多くなってきている。
5メートルほどの幅員の、踏み固められた土茶色の道。
太陽を背に歩いている、四人の姿。
先行するのは、サンタミカエラと蜜璃。
追随するのは、キリエと小芭内。
ボストンバッグを持つサンタミカエラは、蜜璃と肩が触れそうなほどの距離で、会話をしながら歩く。
笑顔で、時折笑い声を上げて、目線を交わし合いながら行く。
キリエと小芭内が、その後方2メートルほどに、互いにやや離れて歩く。
トロリーケースを引くキリエは、傘を差し陰を作りながら歩行。
先に進むふたりの後ろ姿を、じっ、と見詰めている。
キリエ「(ふう、と溜め息をつき)よくあのふたり、話が尽きないわね」
小芭内「(静かに息を継ぎ)甘露寺が楽しそうなのは、良いことだが」
キリエ「師匠として、煉獄さんが結び付けてくれた縁、か・・・」
中空に視線を上げ、青空を視界に映すキリエ。
少し、そのまま歩く。
再度、先を行くふたりに目線を戻し、口角を緩める。
それから、側方の小芭内に顔を向ける。
キリエ「それにしても・・・何故、煉獄さんの家に行く指令が出たのかしら」
小芭内「(正面を見たまま)お前たちが煉獄と逢ったことの真偽を確かめる・・・と、言いたいところだが・・・(キリエに目線を投げ)お館様の本意は別にあるのだろう。それこそ、俺如きでは考えの及ばない領域で、な」
キリエ、数回、瞼を瞬かせる。
気の所為か、小芭内の言葉から、刺々しさが薄くなっているよう。
相変わらずの、ねめつける口調だが、出逢った時の鋭利な雰囲気とは違う。
少しして。
小芭内、顔を戻し、ふたりの更に前方、家屋の密度が高くなってきている付近に視線を投げる。
顎を引き、幾分据わった両眼。
小芭内「ただ、このまますんなり事が進むと思わないことだ」
今度は、呟くような、地を這うような声色。
小芭内の横顔から目を外し、街道の先へと目線を飛ばすキリエ。
キリエ「(小さく頷き)そんな予感は、する」
4人の足音は、定期的な旋律を奏でている。
キリエの表情が、引き締まったものへ変化する。
トロリーケースの車輪の音が、路上に尾を引いて残っている。
★ (30分後)東京府・荏原郡駒澤村・煉獄家付近
木造の塀を備えた日本家屋が、ひしめき合うように建ち並ぶ。
平屋だけではなく、かなりの数、二階建ての建屋も目立つ。
森や林はほとんどなく、緑は、各屋の敷地内から伸びる樹木。
塀を越えた高さの松の木が、方々に確認出来る。
その住宅街の中、両脇の家屋を眺めながら、歩いている四人。
ふと、上空に滑り込んで来た。影。
左の住宅の屋根の方向、ずっと上空から、旋回しながら回り込んでくる、一羽の鴉。
キリエとサンタミカエラ、見上げ、その姿を確認する。
続けて、小芭内と蜜璃も、同じ位置へと視線を差し上げる。
要[鎹鴉]「(大声で)キリエ! サンタミカエラ! コッチダ! カアア!」
キリエ「(ふ、と口角を上げ)迎えに来てくれたんだ」
サンタミカエラ「(声を張り上げ)アニキん家近いのか?」
要[鎹鴉]「ウム! 私ニ追イテ来イ!」
蜜璃「(はしゃいで)要くん! 久し振りぃ! 元気そうで何よりね!」
要[鎹鴉]「蜜璃様! 達者ソウデスネ! 伊黒様モ!」
小芭内、短く首を縦に振る。
要、一旦四人の上空を通過し、軽やかに翻り、高度を落とす。
そして5メートルほどの高さで位置取り、スーッ、と道に沿って飛行。
四名の頭上を再度通り過ぎ、そのまま道なりに飛び始める。
サンタミカエラと蜜璃、少し速足になる。
キリエと小芭内、同じ速度で追随。
トロリーケースの車輪が、ガラガラガラ・・・と速い旋律。
先行する要は、暫く進んだ十字路を、右に曲がる。
四人が同じ角を、右折。
左側に、ずっと先まで続く木造の塀がある。
塀の向こう側には、平屋造りの、立派な邸宅。
家屋も塀も、歳月を重ねた昔から鎮座しているような、重厚で、年季の入った様相。
その長い塀の中程に、棟門が見える。
門の前に、ひとりの人物が、後ろ手に組んで立っている。
年恰好は、道着姿の少年。
要、一気に距離を詰め、少年の元へと飛行。
すると、それに気が付いた少年が、こちらに身体を向ける。
対して、四人全員が並足になり、その調子で門へと歩いていく。
距離が10メートルほどとなり、少年の顔が判別出来る位置。
山吹色の、炎が逆巻いたような髪型の短髪。一部、赫色。太く、端がふたつに分かれた眉。
サンタミカエラ、目を凝らし、じーっ・・・と凝視する。
サンタミカエラ「(眉間に皺を寄せ)ん?・・・アニキ?・・・じゃねェ・・・小せェし・・・」
小芭内「(ぼそ、と)煉獄の弟だ」
サンタミカエラ「(驚いて、二度見)え? え? (息を思い切り吸って)マジかっ!? アニキそっくりだな!」
キリエも、息を飲む。
小綺麗な白い道着、焦げ茶色の袴に白足袋、草履、年齢は十代半ばの雰囲気。
杏寿郎に瓜二つの顔。
ただ、眉は下がり気味で、目の力はずっと穏やかな様相。
要が、すいーっ、と滑らかな身のこなしで羽根を返し、スト、と彼の左肩に止まる。
少年が要を見詰め、静かで柔らかい笑みを浮かべる。
蜜璃「(右手を大きく振って)こんにちは! 千寿郎くーん!」
蜜璃の声に、反応する少年。
真っ直ぐにこちらに視線を投げた後、両手を身体の前で組み、ゆっくりと頭を下げる。
それを見届け、満足したように一度頷き、バサッ、と羽根を広げて空に浮かぶ要。
小さく門の上を旋回した後、何処かしらへと飛び去っていく。
小芭内、少し足を速め、蜜璃と並んで進む。
サンタミカエラ、入れ替わるように歩速を落とし、キリエと並んで歩く。
そして、小芭内と蜜璃が、少年のすぐ前に到着。
キリエとサンタミカエラは、ふたりのやや後ろの場所で、歩行を停める。
千寿郎「(頭を上げ)蜜璃さん、伊黒さん、こんにちは。ようこそお越し下さいました」
小芭内「千寿郎、お館様からの御下命で伺った。鴉から聞いているか?」
千寿郎「(頷き)はい、要から昨日」
蜜璃「じゃあ、ふたりを紹介するね。米国から来た、キリエちゃんとミカエラちゃん!」
身体を半身にして、左掌を掲げてふたりに向ける蜜璃。
小芭内、続いて半身になりつつ、蜜璃と向かい合うような姿勢で、半歩下がる。
蜜璃と小芭内の間、二歩ほどの離れた位置に並ぶ、キリエとサンタミカエラ。
ふたりが、改めて千寿郎を見詰める。
背丈は、キリエより幾分高い。サンタミカエラとほぼ同じ。
サンタミカエラは、目を丸くしたまま、言葉を失っている。
キリエは、微かに口角を上げている。
千寿郎、ふたりを見渡し、ぺこ、と頭を下げる。
千寿郎「(頭を上げつつ)はじめまして。煉獄千寿郎と申します」
サンタミカエラ「(茫然としたまま)ビックリしたな・・・弟がいるって聞いてたけど、こんなに似てるなんて思ってなかった・・・(はっ、と気付いて)あ、悪ィ。オレっちはサンタミカエラ。アメリカで杏寿郎アニキから手解きを受けたんだ。継子になるつもりで途中まで一緒に来たんだけどよ・・・」
キリエ「キリエよ。私は煉獄さんとアメリカで一緒に闘ったの。信じられないでしょうけど」
男性「(重い、圧のある声で)・・・信じられる筈がなかろう」