アーサス   作:飛鳥 螢

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第一章 《 陽 の 国(ソルティア) 》 Ⅳ ー伝 説ー

 だが、それから僅か三百年の後、四神の願いも空しく、心の奥底深くまでディアの根を張り巡らし、大輪の「野望」という名の花まで咲かせた一人の男が、アーサスの地に現れた。

 一輪の「野望」という花の放つ強烈な芳香は、人々の心の奥深く僅かに残っていたディアの根を活性化させていった。息づいたディアの根は次々と「人」の心に根を張り巡らせて生い繁り、再びアーサスの地を荒々しい戦いの大地へと変貌させたのだった。

 四人の年若い神達は嘆き哀しんだが、今度は自ら手を下す事は出来なかった。なぜならそれは、「人」という種そのものを葬り去ることを意味したからだ。

 そこで四神達は、それぞれの瞳の色をした宝石(いし)に願いと自らの力の一端を込め、まだディアの根に冒されていない強き心を持つ、心優しき若者等へと贈った。

 一の女神テュルミネールは、アーサスの北の山岳に住む漆黒の髪に銀青色の瞳をもつ若者に。

 男神ソルブレイは、アーサスの南の平野に住まう黄金の髪に(あお)い瞳の若者に。

 二の女神ヴァンデミーネは、アーサスの東の草原に住まう(あか)い髪と茶褐色の瞳の若者に。

 そして、末の女神フェリューリアは、アーサスの西の森林に住む焦茶の髪に(みどり)色の瞳をした若者に。

 神々に〈力の宝石(いし)〉を贈られた四人の若者は、各々の武器にそれを()め込み、それらを手に美しいアーサスの大地を荒廃させた張本人を討つべく立ち上がった。

 初めはたったの四人だった若者達は、次第に同志を増やしていき、二十の季節が巡る頃、男と若者達の勢力の差が逆転した。

 そして、更に十の季節が巡り、新たな季節を迎えようとしたその時、男は最後の砦の中で、金髪碧眼の若者が手にする男神ソルブレイから贈られた宝石(いし)を柄に()め込んだ剣先に倒れた。

 長き戦いは終わり、神々の力の宝石(おくりもの)と共にそれぞれの生まれ故郷に帰った四人の若者は、各々の厚く信奉する神の名の許に(つど)った人々と共に国を興した。

 北の山岳に帰った若者は、女神テュルミネールを(あが)める《宵の国(ナイティア)》を。

 東の草原に帰った若者は、女神ヴァンデミーネを崇める《暁の国(エルティア)》を。

 西の森林に帰った若者は、女神フェリューリアを崇める《昏の国(アルティア)》を。

 そして、南の平野に帰った若者は、男神ソルブレイを崇める《陽の国(ソルティア)》を。

 若者達はそれぞれの国の祖王となり、四つの王国は互いに助け合ってそれぞれの国を盛り立てていった。王国は栄え、人々は心豊かにこのアーサスの地で、永遠に続く至福の日々を送っていったという。

 




晶が来た時は「人」が神々からこの土地(アーサス)を譲り受けて二千二百三十七程経っています。
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