「まぁ、綺麗。嬉しいですわ、フォルド様」
一抱えもある花束を受け取り、ベルティナは嬉しそうに礼を言った。
レイミアも満足そうに受け取った花束を後ろに控えて居る女官に渡すと、甥に席を勧めた。
「さあ、どうぞお座わりなさい」
「——その前に伯母上、あの者達も同席させて貰えませんか」
と、ベルティナの隣の席を勧めるレイミアに、晶は東屋から少し離れた所で控えている男女を示した。
宮廷薬師のエイルとフォルドの侍女アルフィーネである。
今暫くフォルドが忘れ
「内輪だけの茶会だとは重々承知しておりますが、大病の後ゆえ心配だと申して傍を離れたがりませんので」
「えぇ、まぁ、そういう事なら仕方ないわね」
と、花束の効果ですこぶる上機嫌のレイミアはあっさりとそれを許可した。
二人を東屋の中に招き入れる。
エイルはアルフィーネを伴い、恭しく一礼をして中に入った。
「今日はレイミア様もベルティナ様も一段と麗しく、サウアー様もご機嫌よろしい様子」
——え? 機嫌いいか、あれ。
今にも剣を抜き放って斬りかかってきそうな形相なんだけど……
晶は自分達を睨み付けるサウアーを前にして、にこやかに挨拶の言葉を口にするエイルに、思わず心の中で突っ込みをいれた。
無論そんな心の声が聞こえないエイルは、サウアーの険悪極まりない気配など全く意に介さない。
「私共の様な者までこのような良き日に、内輪だけの茶会にご相伴させていただき、誠に有り難く存じます」
と、丁寧に礼を述べ、椅子に腰掛けるフォルドの後ろに、侍女のアルフィーネと共にエイルは控えた。
そして、懐から銀製の小箱を取り出すと、同じように控えているレイミアの女官にそれを手渡した。
側面の細やかな細工の間に開いた穴から、何やらふんわりと良い香りが漂ってくる。
「私の調合した香です。レイミア様の茶会はとても素晴らしいと聞き及んでおりますので、一つ花を添えさせて頂こうと思いまして」
「まぁ、それは有り難いこと」
受け取った女官が銀製の小箱を女主人の元に持って行き、その匂いを確かめたレイミアは満足そうに微笑んだ。
「本当に、エイルは趣味が良いこと。薬師にしておくのはもったいないわねぇ」
女官に小箱を返して機嫌良さそうにレイミアが言う。
「そうだわ。丁度一つ席が空いているから、そこに座るがいいわ」
「よろしいのですか?」
「構わないわ。どうせ来はしないのだから」
自分の茶会より仕事を優先した夫への苛立ちを微かに滲ませながら、レイミアはエイルに座るよう促す。
「それでは、お言葉に甘えまして」
恐縮したように一礼し、エイルは空いた席に腰を落ち着かせた。
それを見てレイミアが女官達に目配せする。
小箱を持った女官はそれをテーブルの中央に据え、他の女官と共にテーブルの上に置かれたカップに次々と熱いお茶を淹れていく。
「急ぎの用とかで今日は夫はおりませんの。主賓が来たことですし、始める事にしましょう」
女官達がお茶を淹れるのを見ながら、レイミアはにっこりと笑ってベルティナの隣に座る甥を見た。
獲物でも見るようなねっとりとした視線に、ゾクリと思わず悪寒を感じながら晶はぎこちなく笑みを返した。