晶はソーレスをロドルバンに預けると、浴室へと足を向けた。
汗の染み込んだ服を脱ぎ、バスタブの湯の中に全身を浸し、大きく息をついた。
ふと、あの時の事が脳裡に蘇る。
ロドルバンの勧めに応じてもっと早く剣の稽古をしていれば、あの時サウアーと少しはマシに
でも実際は護るどころか、フォルドの従妹の横やりやエイルが衛兵を連れて駆け付けてくれなかったら、今頃生きてはいなかったかもしれない。
そう思うと心底自分が情けなかった。だからそれを忘れたくて、がむしゃらに剣の稽古をしていた。心身共に酷使して、何も考えずに眠れるように。
——あいつなら、どうしただろうか…
剣の稽古で疲れ果て、泥のように眠るようになってから度々聞こえてくるようになった、
『我が半身よ、自分の
と、訴える少年の声。今のこの俺の体の本来の持ち主であるフォルド皇子の。
——あいつならきっと、自分一人の力で護り抜いたんだろうな……
なんとなくそう思え、余計遣り切れなかった。
でも何時までもそれに
がばりと上半身を起こしてばしゃばしゃとお湯で顔を洗うと、晶はバスタブから出て全身を洗った。
さっぱりとした体をアルフィーネが用意してくれたタオルで拭き、替えの衣服を身につける。
湿った髪をタオルで拭きながら、晶は浴室を出て居間に戻った。
そこには新たに一人、人が増えていた。エイルである。
居間のテーブルを囲むように座る三人は、テーブルの上に置かれた物について話をしていた。
「エイル、どうしたんだ?」
今日はもう一度来たはずだ。一日に二度も来るなんて珍しい。
「はい、少し報告することがございますので」
入ってきた晶に気付いて三人は立ち上がり、エイルが理由を述べた。
そして、テーブルの上の置かれた繊細な造りのペンダントを手に取り、アルフィーネに渡す。
「それは?」
あの時見た気がする。アルフィーネの胸元で中央の翡翠に似た宝石が淡く輝いていたように見えたが、今は落ち着いた深い緑色をしていた。
「両親の形見です」
手のペンダントに視線を落とし、懐かしさと哀しさの入り交じった声でアルフィーネは応えた。
「そ、そうか……」
——アルフィーネの両親って死んでいたのか……
なんだかマズい事を訊いてしまったようで、バツが悪そうに晶は口ごもった。
その横で、エイルがアルフィーネに念を押す。
「じゃあ、アルフィーネ。それは無くさないようにこれからも肌身離さずにいるのだよ。これは、これからもきっとお前を守ってくれるだろうから」
「はい、おじ様」
頷き、アルフィーネが大切そうにそれを仕舞うのを見届けてから、エイルは身の置き所がなさそうにしている晶に向き直った。