「なにっ? フォルドの奴が出城巡りにだとっ!?」
目を剥いて、サウアーは聞き返した。
「はい、先程からベルティナ様が、出城に行くフォルド様に付いてくのだと、騒いでおります」
主君に頷き、クノックが窓の外を示した。
確かに、間にある樹々で見えないが、その向こうの対の棟の妹の部屋が騒々しい。
いつものヒストリーと思って気にも留めていなかったが、よく耳を澄ませてみれば、成程『違うわ、そのラベンダーの色のドレスよ。そっちの淡いローズレッドのドレスも持って行くのだから』と、侍女達に指示を出して怒鳴り散らしているのが聞こえる。
「フォルドの奴、いい気なもんだ。女連れで物見遊山かっ」
サウアーは磨き上げられた灰緑色の大理石の床に唾を吐き捨てた。
兄に小突かれて、アガスがそれを布で拭う。
「今回のフォルド様の出城巡りは、王の代理としての恒例の国内の見回りではないかと思われます。以前出城の騎士団の者が王宮の方に伺いを立てにやって来たようですから」
「そんなもの、ただの建前ではないか」
鼻を鳴らし、サウアーはテーブルの上に置いてある、紫水晶の杯に
主君が叩き付けるようにテーブルに置いたそれに、クノックが新たに琥珀色の酒を
それをサウアーは一気に喉に流し込んだ。
「いい事を思い付いたぞ」
程よく酒が回ったサウアーは、赤ら顔を歪ませてニタリと笑った。
「フォルドの奴は、何時、どっちの出城に向かうのだ?」
「確か……七日後に、ネールの出城からとか」
暫し考え込んで、クノックは応えた。
「ならば支度しろ。七日後、俺たちも数日掛けて遠乗りに出掛けるぞ」
「お待ちください、サウアー様。今は謹慎中でございます。それが解けるまでは、外出は禁止されております」
息巻く主君をクノックは慌てて止めた。
王宮内に箝口令が敷かれて話は広まってはいないが、世継ぎの君に剣を向けたのだ。本来ならば牢獄に繋がれても文句は言えない暴挙である。それが王族であることで自室での謹慎で済んでいるのだ。それなのに外出するなど、バレたら今度こそ重い処罰を受ける事になるだろう。
「それに抜け出そうにも警備の目が——」
「
手にした紫水晶の杯をクノックに投げ付け、サウアーは喚き散らした。
もはやサウアーは自分でも止まれなかった。止まる気もなかった。ただ殺すだけでは飽き足らない。あのクソ生意気なフォルドの奴を自分の手で惨めったらしく地に這い