「随分と賑やかですね」
「ああ、従妹殿が一緒に行くと言って聞かないんだ」
侍従長達と言い争う少女に目を向け、困り果てたように晶は嘆息した。
確かにベルティナに付いて来られ、道中婚約者
かといって、自分が口を挟むと余計事態が悪化しそうで、怖くて近付けない。
でもあのフォルドの従妹をどうにかしない限り、何時になっても出発できないのだ。
「成程、確かにそれは困りますね」
もうじき雨の多い季節になる。草木や農民に取っては恵みの雨だが、旅をする者には迷惑この上ない。本来ならその前に終わるように慣例の国内見回りは行なわれるのだが、今回は既に一ヶ月近く遅くなっている。予定通り行なっても後半雨に降られる可能性が高いのだ。
それなのに最初から予定が狂っては、ただでさえ余り余裕のない日程が余計キツくなってしまう。病み上がりの皇子の体調を考えるとそれだけは避けたかった。
どうしたものかと暫し考え込んだ後、エイルは
「話の途中で申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか」
そう伺いを立てながら間に入り、大人二人を相手に昂然と受けて立つ少女に微笑み掛ける。
「ベルティナ様、今日のところは見送りだけで済ませた方がよろしいかと思います」
「其方までわたくしの邪魔をしようというのですの」
柳眉を逆立て、ベルティナはエイルを睨み付けた。
エイルはそれに悠然と微笑んで応えた。
「いいえ、一緒に行くよりも後から行くようにして、先に行く皇子を焦らすのも一つの
但し、これには「お互いが想い合っている」という条件がつくが。
だが、既に脳内で自分はフォルドの未来の妃と決定づけてしまっているベルティナには、そんな些細なことなど関係なかった。
「そ…うですわね」
エイルの提案にベルティナは思案した。
なかなかいい案かもしれない。それなら煩い二人もこれ以上文句は言わないだろうし。
「よろしくてよ。折角だから其方の顔を立ててあげますわ」
鷹揚に頷き、尊大にそう言い放つとベルティナは自分の馬車の傍らに立つ従者達に指示を出しに行った。
それを見送ると、ロドルバンはばっとエイルに詰め寄った。
「何じゃお主、あの妙に
「いえ、只の一般論ですが」
「そのような事はどうでもいい。貴様、今は何とか収まったが、ベルティナ様は本気だぞ。追ってきたらどうするつもりだ」
問題の先送りでしかない。非難がましくレグナントはエイルを睨んだ。
「大丈夫でしょう。追って来たところで追いつきはしませんでしょうから」
今回の出城巡りは数台の荷馬車を伴うが、日程に余裕がない為全員騎乗して行くのだ。大荷物を乗せた荷馬車を何台も引いて優雅に馬車で向かうベルティナとは移動速度がまるで違う。後から追うとなれば尚更だ。追いつかれる前にどんどん日程をこなし、出城を巡ってしまえばいいだけの話である。
先に出発してしまえば、後でベルティナがその事に気付いても後の祭りというわけだ。