一行がエスカーの牧草地に辿り着いたのは、太陽が地平に大きく傾いた頃だった。
一角獣から降りて強張った体をほぐすと随行してきた騎士達は、牧草地の外れにある森近くに開けた空き地にテキパキと野営の準備に取りかかった。
休む為の天幕が張られ、焚き火を囲んで夕食を取る頃には、辺りは夜の
「今夜、このような所で休まねばならぬ事をお許しください」
食事を取った後、
「本当は大病後の皇子の事を考え、もっと体に負担のない日程にしたかったのですが、もうすぐ雨季に入るのでそうもいかず……」
「いや、謝る事は無い。お前は俺だけじゃなく、アルフィーネにも負担がかからないように色々と配慮してくれていただろう。それで十分だ」
生真面目な騎士隊長に、晶は感謝するように言葉を返した。
「ここまで来れば、ネールの出城まであと僅かなのだろう?」
「はい、このまま行けば遅くとも明日の夕暮れ前には到着できるかと」
少し考えてレグナントは応えた。
「そうか……。では引き続き、よろしく頼む」
そう言って晶は立ち上がった。
「皇子、お疲れでしたか?」
天幕へ行ってもう休むのだろうか。寝るにはまだ早い時間だが、今日は一日強行軍だったからそれも無理ないかもしれない。
慌ててロドルバンとレグナントも立ち上がろうとする。
それを晶は制した。
「少しそこら辺を歩いてくるだけだ」
「それでは、誰かを供に——」
「いや、いい」
「今日は月夜で明るいし、こんな所に何かあるわけないからな」
「しかし……」
「誰も、爺も付いてくるな。俺は独りになりたいんだ」
強い口調でそう言うと、晶は一人で森の方に歩き出した。
後に残されたレグナントは不安そうにロドルバンを見た。
「何か皇子の機嫌を損ねるような事でも?」
「いや、ただ本当に独りになりたいだけなのじゃろう。王宮にいた時と違って四六時中大勢の人に囲まれておりますからのう」
忘れ
自分やアルフィーネも気を付けてはいたが、やはり気を張り続けるのもそろそろ限界なのだろう。明日になればもっと人が増える。ここら辺で一度独りになって息抜きくらいしたいと思うのも無理なからぬことだ。
そうロドルバンは考え、皇子が独りになる事を許したのだ。
「フォルド様がおっしゃられるように、このような所で何かあるとは思えませぬし、気が済めば戻って来られますじゃろう」
ちらりと、自分の方からでしか見えない天幕の後ろから、アルフィーネが皇子の向かった森の方に行くのを見て、ロドルバンはレグナントの肩を叩いた。
「大丈夫でございますじゃ、フォルド様にはソーレスの加護がありますのじゃからな」
「確かに。三年前フォルド様がソーレスに選ばれたあの時、刀身の蒼き輝きを受けたそのお姿はまさに神の祝福を受け、神々しく感じたものです」
神殿で行なわれた「継承の選儀」に挑んだフォルドの姿を思い出し、レグナントは誇らしげな
他の国と違い、我が国の王だけが直接神によって選ばれるのだと。