月明かりを頼りに、二人は言葉もなく野営地の方に歩き出す。
突然、目の前に影が躍り出た。
はっとして、晶は咄嗟にアルフィーネを自分の後ろに押しやった。
「何者だっ」
すかさず腰に佩いた〈
枝葉の間から漏れ出でる月光が、影に見えたその者を闇より浮かび上がらせる。
「お前は——」
「サウアー様……」
晶とアルフィーネは呆然と目の前の男を見た。
「何故ここに」
あの茶会の後、自室で謹慎させられていると聞いていたのに。
「何故だと」
サウアーはせせら笑った。
「追ってきたのよ。フォルド、貴様を永遠に俺の前から消し去る為になっ」
突如、サウアーの背後が昼間のように明るくなった。
森の外が燃えている。野営地の辺りだ。騒然とした人々の声も聞こえる。
「お前、何をしたっ!?」
晶は血相を変えた。
「騎士の一人を買収してな。天幕の周りに油を垂らしておいたのさ」
そこに時を見計らって従者の兄弟が火矢を射たのだ。
今随行してきた騎士達はその火を消すのに奔走している。
「これで邪魔する者は一人もいない。ゆっくりと貴様を始末する事ができるというものだ」
サウアーは口の端に残虐な笑みを浮かべた。
晶に斬り付ける。
咄嗟にソーレスを抜いて晶はそれを受け流した。
アルフィーネが後ろに下がって樹の陰に逃げ込む。
それを確認し、晶はサウアー左に回り込んだ。
体を返しざま、サウアーが剣を一閃させる。
飛び
間一髪でそれを
「貴様、少しは腕を上げたようだな」
忌々しげにサウアーが吐き捨てる。
一瞬の攻防で、以前と違う相手の力量を察したらしい。
「お陰様でね」
ソーレスを構え、晶は油断なくサウアーの動きを
剣の鍛錬はずっと一人でしていたので対人戦はこれが初めてだったが、自分でも驚くほど相手の動きに体が良く反応する。どうやらフォルドは剣の腕もかなりのものだったらしい。
「だが、少しぐらい腕を上げたところで、いい気になるなよっ」
一気に間合いを詰め、サウアーは強烈な一撃を晶に浴びせた。
紙一重でそれを躱す。
そこへ、苛烈極まる斬撃。
辛うじてそれをソーレスで受け止め、晶は右に飛び退いた。
サウアーが追撃し、剣を振るう。
森の静謐な空気を切り裂き、剣撃の音が何度も響き渡る。
相変わらずサウアーの繰り出す斬撃は凄まじく、狂剣と呼ぶに相応しい代物だ。
一撃一撃が重く、斬り結ぶたびに腕に衝撃が走り、ソーレスを取り落としそうになる。
「くっ」
サウアーの斬撃を間一髪で避け、晶は距離を取った。