アーサス   作:飛鳥 螢

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第一章 《 陽 の 国(ソルティア) 》 Ⅸ ―旅立ち(1)―

 野営地の炎を消し止め、焼け跡で発見された随行騎士一人の死体を埋葬すると、ネールの出城の騎士団を加えた晶達一行は、燃え残った荷物を集めて直ぐにその場を後にした。

 襲ってきた賊達——サウアーの事を晶はアルフィーネに口止めして誰にも言わなかった。これ以上サウアーを追い詰めると、本当に何をしでかすか判らないからだ。——が、また襲ってくるとも限らないし、野営地も既に水浸しで使い物にならなかったのだ。

 地表に降り注ぐ月の光の中、夜通し一角獣を走らせ、空に太陽が昇る朝焼けの頃、見通しの良い平原で昼過ぎまで体を休め、そして、後は一気にネールの出城まで一角獣を駆った。

 ネールの出城は、正面を《昏の国(アルティア)》に向け、公路を西に見渡せる丘陵の上に立っていた。城砦というような無骨な造りではなく、城全体に優美で細部に渡り様々な装飾が施された迎賓館という佇まいをしていた。

 アーサスを四等分して栄えた王国は、お互いを信頼関係で結ばれ、(いさか)いなど起こすことなく永くその友好が保たれていた為に、わざわざ(いくさ)の為の城砦など造る必要がなかったのだ。

 そして、他王家との交流が途絶えて久しい今日(こんにち)でも、立て替えが必要な不穏な動きは今のところ見当たらなかった。

 あれから新たな襲撃もなく、予定より少し遅くネールの出城に着いた皇子一行は、早速旅の垢を落とし、出城を任されている騎士団長のグレントの計らいで、その夜はささやかな宴会が催された。

「この近くにあるアルティアとの間のダルの森では、凶暴な獣が出没すると聞くが、この辺りは大丈夫なのか?」

「はい、ここはダルの森から幾分離れておりますので、今のところ被害という程のものは出ておりません」

 宴の席で食事をしながら質問してくる晶に、同席していたグレントが応えた。

「ただ、ダルの森を抜ける公路は昨年の暮れ辺りから通れなくなりました」

「アルティアには行けないということか?」

「はい、オーシグルやバルザームなどは以前から出没していたのですが、最近ではその他に黒い影のような異形の獣が出るという噂がありまして、神出鬼没でどの程度いるのかもまだ把握できていないのです」

 申し訳なさそうにグレントは肩を落とした。

「いや、被害が出てないのならそれでいい。他にこの辺りで変わった事はないか?」

 晶はグレントを(ねぎら)い、その話はこれで終わりにして他の話題を振った。

 そうやって、この付近の状況などを一通り確認すると、晶は疲れたからと宴会の途中で席を立った。

 部屋に戻るとロドルバンやアルフィーネには朝まで起こさないように言い含め、一人早々に寝室に入った。

 晶が抜けた後も宴は続き、襲撃で一人犠牲者がでたものの最初の目的地に無事に着けた安堵感と美酒の酔いに長旅の疲れが合わさり、宴会がお開きになった頃には皆見事に酔い潰れていた。

 

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