穏やかな陽光が射し込む部屋の、窓辺の脇にある重厚な造りの天蓋を持つベッドの周りで数人の宮廷薬師達が、ベッドで上半身を起こす病身の王の体、特に下半身を中心に触診しては、傍らで一人それを記録している同僚の
「少しは良くなっているようですね……」
同僚の薬師達の診断を羊皮紙に書き留めながら、エイルは独り言ちた。
「漸く足の指先が少し動く様になったので、このままマッサージは続けた方が良いでしょう。今服用している薬はもう少し様子を見た方がいいかもしれません。それと——」
と、エイルが診察結果をまとめて今後の治療方針を模索していると、不意にばさりと開いた窓の方から羽ばたくような音がした。
その直後、いきなり何かが部屋の中に飛び込んでくる。
はっとして、ベッドの周りに控えていた騎士達が、一斉に佩剣を抜き放って身構えた。
緊迫した空気の中、飛び込んで来たそれはバサバサと羽音を立てて
それは小鳥よりやや大きめの金茶色の鳥だった。
ただ、このピクトは他のピクトより
部屋の中の一同が、自分の肩に降り立ったピクトに目を丸めて注視する中、エイルは痛む頭を堪えるように嘆息した。
そして、ベッドの上の王に深く詫びる。
「申し訳ございません。部屋に飛び込んで来るような不作法な真似をしてしまいまして」
エイルの肩に止まるピクトも一声
「いや、余程急いでいたのだろう」
微笑ましそうにカムラスは薬師の肩のピクトを見た。
許して貰えたと思ったのか、ピクトが更に熱心に
エイルが僅かに眉を
それを見て、カムラスはおもむろに口を開いた。
「エイルを残し、他の者は皆下がれ」
いきなりの
ただ警護に就いていた騎士の一人、明るい金髪の男が何か言いたげに王に水色の瞳を向けたが、カムラスは小さく首を横に振ってそれを封じた。
仕方なさそうに溜息をつくと、騎士も皆に倣ってその場を後にする。
人払いをして部屋に自分と若い薬師とピクトだけになると、カムラスは訊いた。
「何か良くない事でも起きたか?」
「と言うより、予想通りと申し上げた方がよろしいかもしれません」
ピクトの
このピクトにはネールの出城に
「ネールの出城に着いた早々、皇子が失踪されたそうです。——侍女のアルフィーネも一緒に」
このピクトは自分の養い子とも仲が良かった。こちらに戻る前に美味しい餌を貰うつもりで彼女を捜したらしい。
だが、出城の周りを飛び回り、窓から中を見たりしたが何処にもアルフィーネの姿がなかったのだ。
「おそらくは〈
出城巡りの日程の話をしていたあの時、熱心にヴィルドヒルについて訊いてきた皇子の姿をエイルは思い浮かべた。