ロドルバンが自分にあてがわれた部屋に戻ると、コツンっと窓を叩く音がした。
見ると金茶色の鳥——
ふっと口許を綻ばせ、ロドルバンは窓を開け放った。
同時にバサリと羽音を立ててピクトが飛び込んで来る。
くるりと部屋の中を一周飛び回ると、ピクトは部屋にある椅子の背もたれの上に降り立った。
ふるりと体を震わせ、羽に付いた雨粒を振り落とす。
そして、ロドルバンに向けて
「ご苦労じゃったな」
ピクトに用意しておいた餌をやり、ロドルバンは鳥の足に付いている筒の中から小さな紙片を取り出した。
皇子の失踪が判明した昼過ぎ、エイルからこのピクトが送られてきた。
簡潔に、出城に着いた皇子の様子が知りたいと。
ロドルバンはピクトの足の筒の中にあった返信用の白紙の木紙——木を薄く削って作ったピクトなどに運ばせる伝書用の軽く
その返信が来たのである。
木紙は裂けやすいので、ロドルバンは取り出した木紙を破らないように丁寧に伸ばし、そこに書かれている文書に目を通した。
今回の出城巡りに赴く前に、ロドルバンはエイルに他言無用と言われた事があった。定かではないが、この旅の途中で皇子は自分の失った記憶を取り戻す旅に出るかもしれないと。
その言葉が無かったら、おそらく今頃はレグナント以上に取り乱していただろう。
「やはりアルフィーネの事は、エイル殿も想定外だったようじゃな」
小さく溜息を漏らし、ロドルバンは窓の外を見た。
風向きの関係で雨が室内に入ってくる事は無いが、一向に降り止む気配がない。
「それにしても、サウアー様までが王宮から姿を
——あの時、フォルド様は襲撃者の顔を見てはいないとおっしゃっておられたが……
本当にそうなのだろうか。どうにも嫌な予感がする。
それを打ち払うように
餌を食べ終えたピクトは、木紙がちゃんと筒に入っているか確認するように、
開け放された窓よりまた雨の中に飛び出していく。
遠ざかるその後ろ姿を暫し見送ると、ロドルバンは扉へと体を返した。
グレントの頭痛の種を増やすだけになるが、一応伝えておいた方が良いだろう。
謹慎していた筈のサウアー様が数日前より失踪していた。という事を。