外で一角獣の
ハッとして、二人は小屋の扉の方を見た。
暫くして外が静かになり、ややして扉が軋みながら開いて、二人の人物が中に入って来る。
「遅いっ!」
二人が入って来るなり、サウアーは怒りをぶつけた。
「申し訳ありません」
すかさず入ってきたクノックが、苛ついた顔の
その後に続いた右目から頬にかけて傷痕のあるアルティアの男は、それに見向きもせずに雨に濡れたマントを脱ぎ、壁に突き出ている錆びた釘に引っかけた。
そのまま壁脇にある丸太椅子に座り、腕を組んで目を閉じる。
自分を無視するゲッシュに、サウアーのこめかみにピキリと青筋が浮かんだ。
行動を共にするようになって、このアルティアの男は何時もこうだった。王族に対して一切の敬意を払おうとしない。それ処か事ある毎にサウアーの神経を逆撫でする言動を取るものだから、クノック達の気の休まる時がなかった。
騎士達の動向を探るための偵察に、わざわざクノックがゲッシュを連れて行ったのも、単にサウアーとの無用な
「昨日から騎士どもが探していたのは、どうもサウアー様ではないようです」
「十代の少年もしくは少女のどちらかとのことです」
「十代だと?」
あの出城巡りの一行の中で十代の少年は、フォルドと随行した騎士見習いを合せて三人だ。そして、少女はあのフォルドの侍女しかいない。
「どういうことだ?」
「判りません」と、クノックは首を横に振った。
「それと、町の鍛冶屋が出城からおかしな注文を受けたと耳にしました」
他言無用と言われていたのを、クノックが金を握らせて聞き出したところによると、出城より剣と五フィア程の大きさをした蒼い石が持ち込まれ、明朝までに石を剣の柄に取り付けるように依頼されたということだった。
前もって手に入れた出城巡りの日程では、明日の午後フォルドはネールの出城を出て東のフェデルの出城に向かう。それに間に合うようにという事だ。その〈
「まさかっ、フォルドとその侍女が俺のソーレスを持って逃げたということか!?」
少ない情報で瞬時にそこまで思い付き、サウアーは拳を握り締めてギリっと奥歯を噛みしめた。
確かに、まだ剣までは噂になっていないが、騎士達が血眼になって捜している二人、特に重点的に捜索している少年の方が何かやらかしたのではと、密かに取り沙汰されていた。
サウアーの声を耳にし、目を開けたゲッシュはクッと口の端を歪めた。
「——俺が聞いた話では、《
そのどちらでもないおまえが、何時その持ち物になったのかと、嘲笑の目を向ける。
「貴様っ」
瞬時に沸騰し、サウアーは剣を抜いた。
「お待ちください、サウアー様」
慌ててクノックとアガスが二人の間に入る。
「ア、 アルティアの者の、い、言うことなど一々——」
「そうです、そのような
と、焦り
そこにゲッシュは更に追い打ちを掛けた。同情するように従者の二人を見やる。
「お前達も苦労するな。こんな誇大妄想の
「っ!!」
目を剥き、怒りの余りサウアーが絶句する。
ぎょっとして、すかさずクノックとアガスは二人がかりで
「えぇいっ、離せ、離さんかっ」
「なりませんっ。まだ騎士どもは近辺をうろうろしているのです」
一撃でゲッシュを
ここで騒ぎを起こして、もし集まってきた騎士の中にサウアー様の顔を知る者がいたら、マズイなどというものではない。
ここは何としてでもサウアー様には聞き分けて貰わねばならなかった。
腰の剣の柄に手を掛けてゲッシュは、そんなソルティア主従のやり取りを
明日ネールの出城を出て行く一行の中に、本当にフォルド皇子が居るかどうかで、今後の行動が決まると。
【アーサス豆知識④】
アーサスの長さの単位
1フィア = 1センチ
1フィノ = 1メートル
1フィメール=1キロメートル