晴天の蒼い空の下、小鳥の澄んだ声が響き渡る。
川のせせらぎが陽の光を
「う~、冷たっ」
旅装束の少年は、洗ったばかりの顔を思いっ切り左右に振った。
初夏とはいえ、清流を湛える川の水はまだ冷たい。
手早く布で濡れた顔と両手を拭き、少年は水面に視線を落とした。
もう若者と言った方がいいような、背の高い端整な顔立ちの少年の姿がそこに映っていた。
陽の光で編み上げたような少し癖のある金糸の髪と、紺碧の空を思わせる深い蒼色の瞳。長身の鍛え上げられた体躯は見事に引き締まり、十八歳という年齢に相応しい若々しさに溢れていた。
そして、質素な旅人姿にもかかわらず、全身からはそこはかとなく気品が漂っている。
暫し
波紋が広がり、少年の姿をかき消していく。
少年は溜息をつき、空を仰ぎ見た。
雲一つない蒼い空が何処までも続いている。
「今日も暑くなりそーだなぁ……」
ぽつりと、所在なさそうに少年は呟いた。
「皇子っ」
唐突に、背後から
振り返ると、十六、七歳の亜麻色の髪の少女が
「そんな所にボーっと立っていると、見つかってしまいます」
「そ、そうだった」
ボーっと立っていると、身も蓋もない言われ方をした少年は、慌ててマントのフードを被り、青々と繁る葦の陰に身を隠した。
《
最初ショウはネールの出城を抜け出した後、多少危険ではあるものの、そのままシャナン河を遡る形でダルの森を抜けて《
理由の一つは、目指すヴィルドヒルが神話や
それ以外にヴィルドヒルに関する手掛かりのないショウは、それに賭けて河を遡る事にしたのだ。
そして、もう一つ。それはこの
なにしろ今の皇子は忘れ
病人、それも世継ぎの君である大事な皇子を、好き勝手に旅させてくれる者など臣下には一人もいない。
ヴィルドヒルを探し出す為には、まずこのソルティアを出て、この身の自由を確保しなければならなかった。
だが、ネールの出城まで来てみれば、ダルの森は話に聞いていた以上に凶暴な猛獣が
多少どころか危険しかない森の中を、真夜中に突っ切るのは流石に無謀すぎる。
仕方なく、宴会の席で更に周辺の情報収集をした後、出城の者達が寝静まる真夜中までの間、ショウは持ってきたソルティアの地図と睨めっこして次善策を検討したのだ。
それがソルティアにある大河のもう一つ、ルナーバ河の上流にある国、エルティアに行く事だった。
ただ、目と鼻の先にあるアルティアと違って、ネールからだとエルティアには直ぐには入れない。そこに行くにはソルティア国内を暫く移動しなくてはならないのだ。
エルティア国境近くにあるフェデルの出城まで、行ってから抜け出すという
襲撃後やっと安全な出城に辿り着き、みんなの気が緩んだあの時しかなかったのだ。
予定外のアルフィーネの同行に、ダルの森の中程ではないにしろ危険を伴う森沿いの道を諦めたショウは、出城を抜け出してからは人目を避け、昼夜逆転させての移動を繰り返したのだ。
そして、昨夜漸くルナーバ河に辿り着いた後、またここまで戻って来たのだった。
明けまして
おめでとうございます
と、言っていいものかどうか……
元日の夕方以降のニュースを見た後では微妙です