アーサス   作:飛鳥 螢

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第二章 《 暁 の 国(エルティア) 》 Ⅱ ―辿 る 先―

「やっぱ、あそこを行くしかないかのか……」

 気が進まなそうにショウは呟いた。

 あの森を見た時、昔剣道の稽古が休みの時に父親に連れて行かれたキャンプで、薪を現地調達するとか言って近くの森に連れ込まれ、危うく父親共々遭難しそうになった事を思い出したのだ。

 あんな見るからに鬱蒼とした森の中を行くのかと思うと、想像するだけでうんざりする。

「はい。ルナーバ河が駄目となると、この川を遡るしかないと思います」

 頷き、その先に何があるか知らないアルフィーネは、もっともな意見を言った。

 確かにこの先の森を抜けるにしても、川に沿っていけば迷うことがなくて一番安全だといえる。

「じゃあ、準備でき次第出発しよう。何とか日暮れまでに、この先にある森を抜けたいからな」

 腹を決めるとショウは早速準備に取りかかった。

 人目に付かないように、少し離れた樹の陰に繋いでおいた二頭の一角獣から、鞍と(くつわ)を外して自由にしてやる。

 二頭は川辺に近寄ると水を飲んで喉を潤し、近場の草を()みだした。

 これなら二頭を見ても野生の一角獣だと思い、不審がられないだろう。

 外した馬具は、そこら辺の葦の繁みの中にまとめて隠しておく。たとえ後で見つかったとしても、その時自分達はもうここにはいない。

 そしてショウは、剣と判らないようにしっかりと布を巻き付けた〈陽の剣(ソーレス)〉を背負い直し、その上からまとめてあった自分の荷物を背負った。

 ソルティアの宝剣は、この世界を混乱に(おとしい)れた男を斃した剣として名高く、祖王の時代よりその姿のまま受け継がれてきた為、他国人でも知らぬ者がいない程だった。

 他国に行っても身バレの最たるモノである。本当はそんな(もの)は置いて行きたかったが、フォルドが持って来てくれと言っている以上、持って行かない訳にはいかない。

 ショウはソーレスの代わりに、ネールの出城で失敬してきた剣を腰に佩き、手には(なた)代わりに丈夫な大振りの短剣を持った。

 その間にアルフィーネも長い髪を後ろで縛ってまとめ、マントのフードの中に入れて髪が枝などに引っ掛からないようにして、小さくまとめた自分の荷物を背負う。

 二人とも準備が済むと、川を遡って丘陵地の谷間を抜け、その先にあった森に分け入った。

 見渡す限り鬱蒼と立ち並ぶ樹木は、木漏れ陽すら通しそうにない。森というより、樹木でできた洞窟といった方が良さそうな不気味さがある。だが、川がこの中を通っているならば、行くしかないだろう。

 




—《陽の国(ソルティア)》の宝剣の名の(いわ)
 戦いに赴く準備を進めるとある四人の男の会話—
「お前、そろそろその剣どうにかしろよ」
「どうにかって?」
「だから、そんなボロい剣じゃなく、お前の為に特別に鍛えて貰った剣があるだろ。それに〈蒼の閃光(ソレイア)〉を嵌め替えろと言ってるんだ」
「嫌だ。〈陽の剣(ソーレス)〉はずっと一緒に戦って来た大切な仲間なんだぞ。それに丈夫で切れ味や威力だって今のままで十分通じる」
「確かに。力の宝石(いし)の加護があるからな」
「そうだね。力の宝石(いし)の加護によって、武器の性能は底上げされる。だから武器が良くなればそれだけ威力も増すことになるね」
「………」
「剣に名を付けるくらいだから、それだけその剣に愛着があるのは判るけど、これから戦いは更に激しくなる。底上げできる時にしないで、後で悔いたくはないだろう」
「………」
「そうだな。その剣はもう十分戦ってくれた。そろそろ休ませてやってもいいのではないか?」
「——判ったよ。皆の言う通りだ。俺の我儘で皆を危険な目に合わせたくないからな」
「じゃあ、気が変わらないうちに力の宝石(いし)を嵌め替えろよ。ついでに名も分かり易く、俺達と同じに力の宝石(いし)の名にしたらどうだ」
「それは嫌だ」
「なんで?」
「俺は剣の名はソーレスって決めてるんだ。これだけは譲れない」
「変な処でこだわるな、お前」
「だって、その方が何となく格好いいだろ」
「………」
「……ま、まあ、いいじゃないか。本人がそれがいいと言ってるのだから」
「そうだね。私達の場合考えるのが面倒だから、得物(ぶき)を力の宝石(いし)の名で呼んでるだけだし」
「それを言ったらお(しま)いだぜ」

 つまり、《陽の国(ソルティア)》の宝剣の名が〈陽の剣(ソーレス)〉なのは特に深い謂れがあるわけでなく、何となく格好いいと祖王が思っていたからだった。
 そして、仲間が強く言わなければ、今頃そこら辺で簡単に手に入るただのボロい剣が、宝剣として後世に伝わることになったかもしれない。
 他の国の祖王の武器名は、祖王達が考えるのを面倒臭がって力の宝石(いし)の名をそのまま使っていたので特にない。

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