アルフィーネが怯えてショウにしがみつく。
「な、なんだ?」
ショウもギョッとして辺りを見回した。片手で自分に身を寄せるアルフィーネを抱き寄せ、短剣を手に身構える。
なおも聞こえてくる咆哮の中に、断続的に明らかに人とおぼしき悲鳴が混じっていた。
誰かが、何かに追われて助けを求めているのだ。
ここから、然程遠くない。
ショウとアルフィーネは互いに顔を見合わせ、そして、急いで声の方に向かった。
悲鳴を頼りに、邪魔な下生えを短剣で薙ぎ払う。
不意に、間近で悲鳴と咆哮が上がった。
次いでショウ達から十フィノと離れていない樹々の間に、逃げ惑う十三歳位の橙色の髪をした少年と、それを追う毛むくじゃらの一群が姿を現わした。
「何だ、あれは……!?」
ショウ達は愕然とした。
少年を追う毛むくじゃらの群れ——それは体長二フィノを越え、全身を灰褐色の毛で被われた獣の群れで、飛び出た目、潰れた鼻、捲れ上がった唇。そして遠目でもそれと判る鋭いかぎ爪と牙を持っている。
両腕を振り上げ、がに股の二本足で獲物を追うその姿は人間のそれに酷似していて、まるで獣の皮を被った人を見ているようだった。
が、その口から発せられる咆哮は、紛れもなく獰猛な肉食獣のそれだった。
「まさか、あれは……」
目を
「知ってるのか?」
「
「あれが……」
度々獰猛な獣として話に名が出ていたが、実物を見るのはこれが初めてだった。
だが、近年オーシグルは西の《
「うわっ」
逃げ惑う少年が樹木の根に
それを見た森の蛮人達が歓喜の雄叫びを上げ、我先にと橙色の髪の少年に襲いかかる。
咄嗟にショウは手にしていた短剣を、少年に飛びかかろうとするオーシグルに投げ付けた。
見るからに凶暴そうで、明らかに
でも、目の前で襲われている少年を見殺しにすることもできない。
短剣は狙い違わず、先頭のオーシグルの体に突き刺さった。
甲高い悲鳴を上げ、オーシグルが地面に倒れ込む。
一瞬、森の蛮人達の動きが止った。
——ままよ。
ショウは背負っていた荷物を投げ捨てると、腰に佩いた剣を鞘から抜き放ち、下生えの繁みの中にアルフィーネを残して、間髪を容れずにオーシグルの前に躍り出た。
「でやぁぁっ」
雄叫びと共に、オーシグルに斬り込んでいく。
森の蛮人達は何が起こったのか分からずに呆然としている。
その隙に、ショウは剣を一閃させた。
オーシグルの肩口から袈裟懸けに、どす赤黒い血飛沫が上がった。
絶叫を上げ、どぅとオーシグルが倒れる。
「早く逃げろっ!」
茫然と立ち尽くす少年にそう叫びながら、ショウはオーシグルの
考えるより先に、体がオーシグルの動きに反応している。それはあの森でサウアーと闘った時よりも敏捷で、一分の隙もない洗練された動きだった。
これはショウの鍛錬の成果というより、この体に染み込んだ生来の動きだ。——疲労した体で剣を振るう事で力みや無駄な動きがなくなり、フォルド本来の動きができるようになっていたのだ。
ただショウは助けた少年を逃がす為、猛獣等の相手をするのに必死で、自分の動きの変化に全く気付いていなかった。