一つ、また一つと手に取っては腹の中に収め、食べられずに残った種や芯などは近くにあった屑箱とおぼしき箱に放る。全てを平らげた頃には腹三分程度にお腹が膨れていた。
少し休んだところで今度はベッドの天蓋の柱に掴まり、それを支えに晶は立ち上がろうとした。
——これじゃ、まるで足腰の弱った年寄り爺さんだよ。こんなとこ井原に見られたら一生物笑いのネタにされちまう。
頭に思い浮かんだ爆笑する悪友の顔を
が、まだ足に力が上手く入らない。晶は取りあえず天蓋のカーテンを開けてベッドの上に腰掛け、体力が回復するのを待った。このままベッドの上に倒れ込みたい気もしたが、また起き上がる苦労を考えるとそれはやめにした。
爽やかなそよ風が開いた窓から室内に吹き込み、甘酸っぱい匂いの風が晶を優しく抱擁する。
「さっきの
窓前に置かれた台上のフルーツ皿に盛られた果物に気付き、晶はその一つを手に取った。おそらくさっきは自分が床に落ちた衝撃で落ちたのだろう。
——にしても…ここは本当に何処なんだ?
少し余裕が出てきた晶は、手にした果実をかじりながら、改めて部屋の中をまじまじと見回した。豪華なベッドの天蓋とは違い、殺風景な石作りの天井、同じく石造りの壁のあちこちには柔らかく暖かな色調のタペストリーが掛けられ、さっき座っていた床も石で作られた床の上にふかふかな絨毯が敷き詰められている。
いくら呑気な晶でも、ここがもう学校の保健室でないことくらいとっくに気付いていた。が、では何処かと訊かれても皆目見当も付かない。晶の乏しい知識と想像力を総動員して思い浮かんだのといえば、『ヨーロッパの古城の部屋』に似ているということだけだ。
しかし、学校を含む一帯に昔城があったとかで、校門のド真ん中に「○○城城門跡」という碑がデンっと立っているのは知っているが、近くに中世ヨーロッパ風の古城を見た記憶は無い。
部屋に置かれた品の良いアンティークな家具、優美な彫刻を施された調度品の数々に開いた窓……
「そうだ、窓」
外を見れば何処か判るかも……
晶はばっと勢いよくベッドから立ち上がりたかった。でも勢い余ってまたひっくり返るとマズイので、逸る気持ちを抑えて天蓋の柱に掴まってゆっくりと立ち上がる。
今度は二度目だからか、それともエネルギー補給した所為か、さっきよりも時間と労力を掛けずに立ち上がられた。どうやら体に力が戻ってきたようだ。感覚も幾分しっかりとしてきている。
晶は気をよくして柱から手を離し、まだ少しふらつくものの意外としっかりとした足取りで窓辺に近寄った。
「う……わぁっ」
思わず、晶は感嘆の声を上げた。