横手から、閉じた
「う……」
眩しさに、ショウは顔を
右手を
遙か彼方から地平を染めて、太陽がその雄姿を現わし始めていた。
この
サーッと大地に光が広がり、草原がエメラルドグリーンに
その上を、朝の清々しい風が草葉をさざめかせて通り過ぎていった。
絵に描いた様な、実に爽快な草原の朝だった。
——あの臭いが無ければ。
「よっ、起きたかい?」
橙色の髪をしたソバカス
余程早く起きたのか、シグはもう自分の荷物をまとめていた。
「あ、ああ…、おはよう」
目が
強烈な悪臭と野獣の子守歌を一晩中聴かされ、本当に眠れるのだろうかと思ったが、意外と順応力はあったらしい。もっとも精根尽き掛けたあの状態では無理もない。
眠れたお蔭で昨日の疲れもあらかた取れ、気分は鼻を除けばどちらかといえば良い方だった。
「ん……」
目を擦りながらアルフィーネも起き上がった。
寝惚け
「あ…おう——」
言いかけた言葉を、ショウは慌ててアルフィーネの口を塞いで遮った。
「俺の名は
シグに聞こえないように小声で言う。
これ以上この体の正体を詮索されたくなかった。特にエルドは何か勘付いているようで油断がならない。
アルフィーネはハッとして、すまなそうにショウを見た。
「二人とも起きたんだったら、早く荷物まとめてくれよ」
シグが焚き火の跡に土をかけながら、二人を
「
焚き火の始末を終え、自分の荷物を背負う。
「飯って、ここで食べないのか?」
「食べてもいいけど、食欲湧かないだろ」
確かにこの臭さでは、どんな美味い物でも不味く思えるに違いない。
「下で食べるのさ。姉ちゃんが先に行って支度してっから」
そう言って、シグは草原の方を指差した。
確かにエルドの姿は無い。しかし、崖は結構高く、下の草原まではかなりの急勾配になっている。それをどうやって下の草原まで降りたのだろう。
怪訝に思ってショウとアルフィーネは崖の端から下を見た。
下にいたエルドが二人に気付いたのか手を振る。
それに、ショウは応える気にはなれなかった。
「おい、これはどういう事だ?」
憤然とショウは崖下を指差してシグに問い質す。
切り立った崖の側面を蛇行するように、人一人通れるほどの細い道が下の草原まで続いている。
「道がちゃんとあるじゃないか」
「あったり前だろ。おいら達がどーやってここまで上がって来たと思ってるんだい」
ショウの怒りなど全く意に介さずに、シグは胸を張って応えた。
「だったら、なんで昨晩下に降りて寝なかったんだ」
そうすればこんな
「判ってないなぁ、兄貴は」
立てた人差し指を目の前で左右に振り、偉そうにシグは言った。
「草原だって、タチの悪い肉食獣はいるんだぜ」
そいつらはオーシグルのように、ヌルルの実の臭いくらいじゃビクともしない。何処にだってやって来るのだ。崖の上にいれば襲われた時、細い道ならば一度に多勢を相手にしなくて済む。いざという時ここは防ぐに格好の場所だった。
「判ったら、さっさと荷物をまとめて降りてくれよな。姉ちゃん怒ると怖いんだからさ」
全然怖がっていないシグは、さっさと細い道を
言い負かされたショウは憮然として荷物を背負うと、アルフィーネと共にエルティアの姉弟の待つ草原へと、足許に気を付けながら細い道を降りていった。