エルド達がいる近くの草原では、二頭の栗毛と葦毛の一角獣がのんびりと草を
野生の一角獣ではない。鞍と轡をしている。エルド達はここまでそれに乗ってきて、あの狭い坂道を登れない一角獣達を崖下に放しておいたのだ。
シグの言った草原の肉食獣は人間は襲ってもこの強靱な脚力と鋭利な角を持つ一角獣は、余程弱っているか、自分達が酷く飢えていなければ滅多に襲わなかった。
それに崖下に放しておけば、獣が近づいて来たら騒いで知らせてくれる。エルド達が崖上で安心して眠っていられたのはその所為だったのだ。
食事を済ませると、エルドは葦毛の一角獣を示した。
「そっちの一角獣に乗りなよ。
「ああ、ありがとう」
礼を言い、ショウは自分達の荷物を葦毛の一角獣の背の後ろに括り付けた。
先に自分が背に乗り、アルフィーネを引っ張り上げて自分の後ろに乗せる。
既に支度を終えて二人を待っていたエルティアの姉弟は、ショウ達の準備ができると、今はもうその雄姿を天空にさらけ出した太陽に向かって一角獣を走らせた。
草原は果てしなく、所々に岩場が点在する緑の海原が、何処までも続いているようだった。
時折、背の高い草陰にちらほらと獣の姿が見える。多分それがシグの言った肉食獣なのだろう。暫く様子を窺うように後を付けて来ていたが、諦めたのかやがてその姿も見えなくなった。
太陽が頭上高く中天に達し、影が足許に
「お前達の邑まで、後どれくらいで着くんだ?」
「そうだね……」
食事を終えて訊いたショウに、エルドは少し考え込んだ。
「明後日の夕方前ってところかな」
「そんなに遠いのか?」
「一角獣に二人乗りだからね。何時もならもうちょい距離を稼げるんだけどね」
そう言いながら、エルドは一角獣に跨がった。その後ろにシグが飛び乗る。
「まぁ、今日厄介になるケリアの邑まではもう少しだから安心しなよ」
手綱を引いてニッと笑うと、エルドは一角獣の脇腹を蹴った。
一声
「あ、おいっ」
「早くしないと、置いてくよ」
「待てよ、ったく」
慌てて細い岩に縛っておいた手綱を解き、ショウは一角獣に飛び乗った。アルフィーネを鞍の上に引き上げ、軽快に草原を駆けていくエルティアの姉弟の乗る一角獣の後を追った。