アーサス   作:飛鳥 螢

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第二章 《 暁 の 国(エルティア) 》 Ⅲ ―勝 負(1)―

 邑の柵の外に出ると、先に出ていた邑人が近くで草を()んでいた家畜の群れを集め、広く場所を取っていてくれた。

 ショウは背負った荷物をアルフィーネに預け、遠巻きにするケリアの邑人達の中央でダムアと対峙する。

 鞘を付けたままの剣を構えるショウに対し、ダムアは素手のまま腰に巻いている帯に挟んだ短剣を取りもしない。

「剣は? そのままでも大丈夫なのか?」

「お前こそ、鞘を付けたままでいいのか?」

 お互いに疑問を投げかける。

 それに、先にショウが応えた。

「……別に、殺し合いをする訳じゃない」

 諸刃の剣では峰打ちにはできない。刃は潰せないので、斬らずに済ますには剣を鞘に収めたままにするしかなかった。

「俺もだ。エルティアでは遊びに刃物を持ち出す奴はいない」

 これで十分だと、ダムアは軽く体捌きを見せる。

 鍛え上げられた体から繰り出されるキレのある力強い動きに、ショウは目を(みは)った。

 ——こいつは、できる。

 ショウは気を引き締め、グッと柄を握る手に力を込めた。

 隙を探るが、なかなか見つからない。 

 邑人達が見守る中、対峙した二人はお互い構えたまま動かなかった。

 動くに動けない緊迫した空気の中、出し抜けにダムアが前に出た。

 すっと何気ない、流れるような動きだった。

 意表を突いた動きに、咄嗟にショウは反応できなかった。

 気が付いたら目の前に拳が迫っていた。

 ギョッとして、ショウは()()り気味にそれをぎりぎり(かわ)した。

 と思ったら、それに合わせて踏み込んできたダムアが手刀を一閃させる。

 片足を退()いて横に体を反らし、間一髪ショウはその切っ先から逃れた。

 その瞬間、今度はダムアがそのまま体を捻り、すくい上げるように足を蹴上げてくる。

「くっ」

 それに合わせるように、ショウは剣を振り下ろした。

 同時にダムアは伸した足を曲げ、ショウに空を斬らせる。

 そして、両者はバッと距離を取った。

 まさに一瞬の攻防だった。

「へぇ、あれを躱した上に一撃入れてくるとは、大したもんだな」

「そりゃ、どうも」

 素っ気なく言葉を返して平然としてみせたが、ショウは内心焦りまくっていた。

 ——何なんだ、今の動き。全然読めないぞ。

 変則的で流れるように次々と繰り出される攻撃。あれを躱せたのは殆どマグレだった。

 今はダムアが退()いてくれて助かったが、あのまま矢継ぎ早に技を仕掛けられていたら、あっさり勝負は決まっていただろう。受けに回っていては圧倒的に不利だった。

 

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