アーサス   作:飛鳥 螢

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第二章 《 暁 の 国(エルティア) 》 Ⅲ ―勝 負(3)―

 一方ショウは、自分の思い描いた通りに体が動いた事に安堵していた。

 あの庭園で独りでしていた剣の鍛錬の合間に、何となく竹刀の素振りの真似事もやっていたものの、この体で何処まで以前の動きが再現できるかと思ったが、フォルドの身体能力の高さに感謝した。

 ——次は、決める。

 棒を握り直し、ショウは棒の先端の先にいるエルティアの男を正面から見据えた。

 対峙したダムア一人に神経を集中し、それ以外を意識の外に押しやる。

 周囲の気配が消え、静謐(せいひつ)が辺りを満たしていく。

 その中で、二人は同時に動いた。

 ダムアの左腕が振り下ろされる棒を受け止め、蹴り出された右脚がショウの脇腹を狙う。

 振りを止められた刹那、僅かに体を開いて棒を引き抜きざま、ショウはダムアの蹴りを打ち払った。

 蹴りを払われたダムアは瞬時に体を捻り、ショウの眼前に鋭く左肘を突き出す。

 刹那、深く前に踏み込みながらその肘を掻い潜り、ショウは目にも留らぬ速さで棒を一閃させた。

「ぐうっ」

 激痛が走り、ダムアは体をくの字に曲げ、腹を押さえて呻いた。

 ——まだだ。まだ、終わっちゃいない。

 さっと間合いを取り、ショウは再び棒を構えてダムアに鋭い視線を向けた。

 同時に——

「そこまでだ」

 重々しい声が辺りに響き渡った。

 ハッとしてショウが声の方に振り返ると、族長のバサムが前に出てきていた。

「勝者はソルティアの者だ。それで良いな、ダムア」

「ああ、俺の負けだ」

 元々ショウの腕を試す為に始めた勝負だ。それが判った以上最後までやる必要はない。

 腹を押さえて体を起こしたダムアは、苦笑して負けを認めた。

 途端にワッと周囲から歓声が上がった。

 邑人達が二人に群がり、口々に二人の健闘を称える。

「いい勝負だったぞ」

「あんた若いのに、凄いねぇ」

「ダムア、お前が負けるなんてだらしないな」

「なあ、どうだ、俺とも一勝負——」

「さあ、さっさと仕事に戻れっ」

 バサムが大声を張り上げ、二人に群がる邑人を解散させる。

 先程の手合わせの興奮が冷めやらないまま、邑人達はぞろぞろと仕事に戻っていった。

 ——終わった……

 ホッとして、ショウは大きく息を吐いた。

 礼を言って棒を持ち主に返す。

 そこへエルティアの姉弟とアルフィーネが走り寄って来た。

「凄いね、ショウ。ダムアに一撃くれるなんてさ。あいつはこの邑でも指折りの体術の使い手なんだよ」

「な、な、兄貴。最後の動きどうやったんだ?」

 興奮気味にシグが訊く。

「その棒が何本にもなって見えたんだけど」

 確かに最後の攻防は、あれだけ激しく動いたにも関わらず、見ていた者には一瞬の出来事でしかなかった。

 しかし、どうやったと訊かれても困る。ただダムアの動きに合せて動いたに過ぎないのだ。

「ショウ……、腕の怪我は?」

 また「様」を付けそうになって口ごもったアルフィーネは、心配そうにショウを見た。

「ああ、大丈夫だ。それ程痛くないから」

 安心させるようにショウは微笑(わら)った。

 実際勝負の最中はそれに集中していて、怪我の事は忘れていたのだ。

 今言われて、初めてちょっと痛いかなと感じる程度だった。

 

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