一方ショウは、自分の思い描いた通りに体が動いた事に安堵していた。
あの庭園で独りでしていた剣の鍛錬の合間に、何となく竹刀の素振りの真似事もやっていたものの、この体で何処まで以前の動きが再現できるかと思ったが、フォルドの身体能力の高さに感謝した。
——次は、決める。
棒を握り直し、ショウは棒の先端の先にいるエルティアの男を正面から見据えた。
対峙したダムア一人に神経を集中し、それ以外を意識の外に押しやる。
周囲の気配が消え、
その中で、二人は同時に動いた。
ダムアの左腕が振り下ろされる棒を受け止め、蹴り出された右脚がショウの脇腹を狙う。
振りを止められた刹那、僅かに体を開いて棒を引き抜きざま、ショウはダムアの蹴りを打ち払った。
蹴りを払われたダムアは瞬時に体を捻り、ショウの眼前に鋭く左肘を突き出す。
刹那、深く前に踏み込みながらその肘を掻い潜り、ショウは目にも留らぬ速さで棒を一閃させた。
「ぐうっ」
激痛が走り、ダムアは体をくの字に曲げ、腹を押さえて呻いた。
——まだだ。まだ、終わっちゃいない。
さっと間合いを取り、ショウは再び棒を構えてダムアに鋭い視線を向けた。
同時に——
「そこまでだ」
重々しい声が辺りに響き渡った。
ハッとしてショウが声の方に振り返ると、族長のバサムが前に出てきていた。
「勝者はソルティアの者だ。それで良いな、ダムア」
「ああ、俺の負けだ」
元々ショウの腕を試す為に始めた勝負だ。それが判った以上最後までやる必要はない。
腹を押さえて体を起こしたダムアは、苦笑して負けを認めた。
途端にワッと周囲から歓声が上がった。
邑人達が二人に群がり、口々に二人の健闘を称える。
「いい勝負だったぞ」
「あんた若いのに、凄いねぇ」
「ダムア、お前が負けるなんてだらしないな」
「なあ、どうだ、俺とも一勝負——」
「さあ、さっさと仕事に戻れっ」
バサムが大声を張り上げ、二人に群がる邑人を解散させる。
先程の手合わせの興奮が冷めやらないまま、邑人達はぞろぞろと仕事に戻っていった。
——終わった……
ホッとして、ショウは大きく息を吐いた。
礼を言って棒を持ち主に返す。
そこへエルティアの姉弟とアルフィーネが走り寄って来た。
「凄いね、ショウ。ダムアに一撃くれるなんてさ。あいつはこの邑でも指折りの体術の使い手なんだよ」
「な、な、兄貴。最後の動きどうやったんだ?」
興奮気味にシグが訊く。
「その棒が何本にもなって見えたんだけど」
確かに最後の攻防は、あれだけ激しく動いたにも関わらず、見ていた者には一瞬の出来事でしかなかった。
しかし、どうやったと訊かれても困る。ただダムアの動きに合せて動いたに過ぎないのだ。
「ショウ……、腕の怪我は?」
また「様」を付けそうになって口ごもったアルフィーネは、心配そうにショウを見た。
「ああ、大丈夫だ。それ程痛くないから」
安心させるようにショウは
実際勝負の最中はそれに集中していて、怪我の事は忘れていたのだ。
今言われて、初めてちょっと痛いかなと感じる程度だった。