転生男の娘vs悪ガキ(星)   作:桜ナメコ

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 リハビリ&生存報告
 文字数少なめの繋ぎ話でごめんよ。






19話

 

 

 

 

 

 

「あら……そう怯えることはないわ。別に私はあなたたちを傷つけたいわけではないの。だから、そうね――その敵意を消してもらえる?」

 

「ふふっ、ご冗談を。脅迫まがいの一手で私たちを呼びつけたのは其方でしょう? 殺意の一つや二つ、甘んじて受け入れるのが支配者の度量ってものではありません?」

 

 

 器用にも少女は無表情のまま形だけは笑みを繕い、ゾッとするほどの美貌を携え、閑かに佇んでいた。

 その声音は惚れ惚れとするほど朗らかで。

 ただその瞳だけがどこまでも冷たく澄んでいる。

 

 浅葱の少女の前にて不敵に笑うのは白の長髪を簪で飾った美しい女性。

 原神世界内において一定数存在している()()()()()()()()()こと『璃月七星』が一人――天権・凝光とは彼女のことだった。

 

 …………で、どしてそんな恐ろしい相手に対してばっちばちの敵意を向けちゃってくれてんのですかねぇ、うちの脳内同居人さんは。

 

『何してんのさ、カナタさんやい』

『…………? 私、何か変なことをしていますか?』

 

 おい待てコイツ自覚なしかよ。

 もしかして、自分がキレてることに気づいてなかったりしているわけ?

 

 冷静さの塊みたいな存在である彼女が自分の精神状態を把握できていないなんて事態は非常に珍しい。珍しいというか、少なくとも俺は初めて見た。

 

 俺とステラがファデュイとの交戦を開始してから既に数時間は経過した現在。

 夜の暗闇に包まれた天空の宮殿にて、カナタは凝光と対峙していた。

 

「――その敵意は璃月七星及び璃月全土への宣戦と見なしてもいいの?」

「まさか。そこまで先の事を考えられない相手だとは思っていませんよ。私は単純に手段の荒さが気に食わないと言っているだけです」

 

 挑発、というかカナタの反応を探りたかったのだろうか。凝光の含み笑いを抑えながら話しているような雰囲気からは害意が感じられない。

 

『カナタ』

『…………わかってます。子供じゃないですし』

 

 恐らく相も変わらずな無表情を貼り付けていると思われるウチの子が、どこか拗ね気味で可愛いらしい。

 ふと思ったが普段のパーティーメンバーは、蛍様にステラ、カナタさんと全員揃って、朗らかというよりは凛々しいに寄った面々であった――当然、パイモンは除くが。

 それだけに、子供らしい仕草や恥ずかしそうにしている姿の印象は浄化されそうなほどの尊さがある。ギャップ萌えってずるいよね。

 俺も偶には格好いいところ見せてあげようかしら? 

 

『それ、普段は可愛いサイドの自覚あるって認識でオッケーです?』

『うん。俺超可愛い』

『否定できないのが悲しいところですね……』

 

 どうでもいい雑談なんかを放り投げてみれば、段々とカナタの思考から熱が抜けていく。

 本人も自身が冷静ではないことに気がついたのだろう。

 ため息を吐いて雑談を終える頃にはその声色は普段通りの優しく澄んだ冷たいものになっていた。

 

「……ふふ、わかったわ。ステラさん、カナタさん、()()()()()()()、群玉閣への招待が少々手荒になってしまったことを謝罪します。ごめんなさいね? 言い訳がましいかもしれないけれど、元々謝罪はする気で呼んだのよ。そこは理解して貰えると嬉しいわ」

 

 大人であるのは向こうも同じだ。

 カナタの雰囲気が和らいだのを察すると、凝光は柔和な微笑みを携えながら謝罪の言葉を口にした。

 大人っぽい色気満載の美人さんだなぁ……なんて呑気に考えていると『……面白い冗談ですね』なんて冷たい声で指摘がかかる。

 ただでさえクール美人さんなカナタが色気まで手に入れたらいよいよ惚れそうになってしまうので、そこんとこで張り合わないでもらっていい?

 

「……カナタ、どうかしたの?」

「何か?」

「…………いや、気のせいだったかも」

 

 無表情なカナタに何か違和感を覚えたのか、しばらくの間ステラは首を傾げていたがそれも凝光が次に口を開くまでだった。

 

「お詫びと言っては、なのだけど、この群玉閣を自由に見て回ってもらっていいわ。特別に何か質問や我儘があるのなら、出来る限り手助けしてあげる」

「――ゴミってどこに集めてる?」

「…………ごみ?」

 

 凝光への質問権。

 璃月の商人が喉から手が出るほどに望むであろうそれを文字通りゴミに変えてみせた灰髪の少女は何故か満足げだ。

 まあ、凝光様にポカンとした表情をさせたのは割と偉業だと思う。珍しいもの見れたから許してやろう。

 

 群玉閣のゴミ箱巡りをしたいとウキウキになっているステラを凝光の部下が恐る恐る連れて行く。カナタがひらひらと手を振ってステラを見送った後、部屋に残されたのはカナタと凝光、そしてここまで無言で凝光の護衛の任務についている夜蘭の三人だけになった。

 

「さて、では早速本題に入りましょうか」

「ええ、話が早い人は嫌いじゃないですよ」

 

 再び、ピリつき始めた空気に身震いしそうになるが――まあ、今の俺、思念体みたいな状態なんだけれど――こちらにも頼りになりすぎる味方がついている。あり得ないとは思うが、凝光がぼったくりな交渉を仕掛けてきても引っかかることはないだろう。

 

「まず……カナタさん、天華さん、貴方たちの素性を尋ねてもいいかしら?」

「単なる根無しの旅人ですよ。それ以上でも以下でもありません」

「そう……なら、ステラさんは?」

 

 少しだけ、カナタの呼吸が深くなる。

 

「……彼女が何者であるのかを私は正しく述べることは出来ないのですが――」

 

 言葉を止めた。

 何を話そうとしているのだろうかと、真意を探ろうとしてやめる。どうせ、わからん。

 わからないけど、信じられる。

 なら、問題の一つだって見当たらない。

 

「――強いて一言で表すのなら、()()でしょうか。何者にもなり得るが故に、まだ何者にもなり得ていない幼子です」

 

 不思議と違和感は抱かない。

 俺にとっても灰の少女を形容する言葉として「幼子」の二文字は寧ろ納得のいくものだった。

 

「だからこそ思うのですよ、凝光様」

「…………」

 

 続けて? 

 言葉無き視線に小さく頷きを返し、カナタは淡々と問いを投げる。

 

「貴女は、貴方たちは――何をそんなにも恐れているのでしょうか?」

 

 自分が彼女らを恐れている。

 

 改めて問われたことで凝光は納得を覚えていた。恐怖を克服する術として最も確実なのは未知を既知へと変えること。

 商人の国である璃月にて、その一つの頂点に君臨する一人の商人として。

 

 凝光は異邦からの訪問者である彼らを確かに恐れていた。

 

 かつてこれほど未知に溢れた者があっただろうか。底の見えぬ深淵と対峙しているような感覚。その根源は、商人としての本能からの警告だった。

 

 核心をついた無表情の少女――に見える男性体――その片頰が薄らと持ち上がっていることに気がつく。

 その言葉はきっとある種の挑発にして、警告でもある。

 

 これ以上踏み込んでくる覚悟があるのか?

 

 言外に伝えられた問いを前にして、凝光は迷うことなく返答した。

 

「……なるほど、わかったわ。私はこの璃月の平穏と安寧を守りたいだけ。その意図がないのであれば、プライバシーを探るのは無粋というものかしら」

「…………ええ、わかって頂けて幸いです」

 

 割に合わない。

 藪をつついて蛇を出す。そのような取引など彼女の望むものではない。

 商人である凝光は当然ながら、利益の実らない取引はしない主義だった。

 

「とはいえ、こちらが貴方に何一つをもたらさないというのもフェアではないでしょう。貸しを一つ作った、ぐらいの気分でこの取引を終わらせるのがそちらにとっては賢明かと」

 

 カナタの提案を聞き、凝光がほんの少しだけ目を丸くする。

 

「……あら、ありがとう。優しいのね、カナタさん」

「ゾッとするようなこと言わないでください」

 

 声音だけを心底嫌がるようなものにしてみせて、カナタは凝光様との会合を切り上げた。

 

 流石のカナタも多少は気疲れをしたのか、彼女が軽く息を落とす。

 

『そんなに照れるなよー、優しい優しいカナタさんや』

『ちょんぎりますよ』

『調子乗ってマジすいませんでした』

『わかればよろしい』

 

 茶々を入れてみれば、恐ろしい脅しが返ってきた。全然、疲れて無さそうで恐ろしい。

 

 身体を借りられては下手に出る他にない。

 はいそこ、尻に敷かれてるのがデフォルトとか言わないの。俺も薄々勘づいてはいるのです。現実を見たくないだけで。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 表に出て、景色を楽しんで行ってという凝光様の言葉に従い、群玉閣の正面広場へとやってきたところで、カナタがゆっくりとした足取りを完全に止めた。

 

「それで……いつまでそうして、こちらを盗み見ているつもりですか?」

 

 振り向き、問う。

 

「――ッ!?」

 

 まさか気づかれていたとは思わなかったのだろう。深くフードを被ったその人の動揺は表情が見えなくとも、その動作から伝わってくる。

 

『まったく、どこで引っ掛けて来たんですか?』

『えっと、よく、覚えてないと言いますか……うん、なんかそんな感じ?』

『抽象的にも程があるでしょうに……』

 

 やれやれ、とため息が聞こえてくるようだった。

 

 俺とカナタの会話など知る由もなく、フードを被ったその人は正面へと近づいてくる。

 その人は少しのバツの悪さを感じながらも、確かな強い意思を感じさせる目で――

 

「あ、あの! その……もしかして、天華さんとお知り合いの方ではありませんか?」

 

 璃月七星の秘書、甘雨ははっきりとそう言った。

 

 

 

 

 

 






 作品に直接は関係ないため、興味のない方は無視推奨。
 作者の近況報告(仮)です。



 


 単純に忙しいことと、スペック的問題でスマホでの原神が常に重い状態になってしまっているため、原神自体を触る機会が減ってしまい作品の更新が停滞しております。スタレは出来てます……アクションが重いのはちょっと致命的でした……(パソコンは手元にないので、また考えます)
 
 また、最近私の中で創作に対しての意識が変化してきたことを実感しており、今話より匿名での投稿状態を解除したいと考えています。
 気が向いた時には感想の返信なども行っていこうかと。(ここに関しては活動報告にぶん投げときます)

 私の投稿小説の中には既にエタっている小説もあれば、この小説の更新の間に書き始めた小説もございます。
 作者としては「書けそうになったとき」が訪れれば、どの小説も更新を続けていくつもりではありますが、この小説の更新が長期間止まっている場合は別作品の更新を生存報告としてお待ち頂けると幸いです。
 
 長文、失礼致しました。
 亀更新ではありますが、この作品をよろしくお願い致します。
 

原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用

  • 両方やってる!
  • 原神だけ!
  • スタレだけ!
  • どっちも知らんが読んでやろう!
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