14-1 乙女の噂に御用心(勝負服ストーリー2)
アッシュブライドのトレーニングメニューを作っていると、あるウマ娘がすごいスピードでトレーナー室に駆け込んできた。
「アッシュのトレーナーぁ! 大変だよ!」
「トウカイテイオー、どうかしましたか?」
そのウマ娘、『トウカイテイオー』はなんだかとても驚いている様子だ。
私がよくわからないまま何があったのか尋ねると、彼女は思考がまとまっていないのか何度かつまりながら──
「アッシュが結婚しちゃうんだよ!」
──あまり驚くほどでもないことを言った。
「常日頃から言ってるじゃないですか。ぼくはネオユニヴァースの
「それならボクだって驚かないよ! いつものそれじゃないんだってー!」
「じゃあなんですか。お相手が外国のイケメン男性ぐらいじゃないと私は驚きませんよ?」
「そう! それだよ! アッシュが遠い国で金髪イケメンと結婚しちゃうの!」
「え? え!?」
何がどうしてそんなことになったのか。
トウカイテイオーに詳細を説明するよう求めてみると、どうやら彼女もその話を別のウマ娘から聞いたということらしい。
そのウマ娘は──
「えっとねー、カワカミちゃんが『アッシュちゃんが外国で金髪の男の人と結婚する』って言ってたよ!」
「イケメン要素消えましたね」
「あ、あれー? 聞き間違いだったかな?」
天真爛漫なウマ娘、ハルウララだ。
そしてハルウララもトウカイテイオーと同じように又聞きのようなので、トウカイテイオーと一緒にさらにカワカミプリンセスのもとに向かう。
「ええ! スカーレットさんから『アッシュさんが外国の金髪の男性とご結婚なさる』と聞きましたわ!」
「外国で結婚する、じゃなくて外国人と結婚する話になりましたね」
「ねぇ……ボクこの後の展開読めちゃったんだけど」
噂の真偽を確かめるため次はダイワスカーレットを探す。
ダイワスカーレットはグラウンドでウオッカと一緒にトレーニングに励んでいた。
「はい。ウオッカから『アッシュブライド先輩が金髪の外国人と結婚する』って聞きました!」
「は!? 俺そんなこと言ってねーけど!?」
「何よ!?」
「何だよ!?」
喧嘩を始めてしまった2人をトウカイテイオーと一緒に宥めて、ウオッカからさらに細かい話を聞いてみると──
「俺はアッシュ先輩が教室で結婚情報誌を読みながらなんか『この写真みたいにぼくもネオユニヴァースと結婚できるのかな……。式ではあの綺麗な金髪が映えるんだろうな。まだ遠い話か』みたいなことを言ってたって言っただけで」
「アンタねぇ……あんな真っ赤になって『遠いとこ……アッシュ先輩が……結婚! 金髪がっ!』くらいしか言えてなかったわよ」
「何だって!?」
「何よ!?」
「やっぱり伝言ゲームみたいなことになってたよ……」
「結局いつも通りのアッシュでしたね」
再び喧嘩を始めてしまった2人をよそに、トウカイテイオーと話す。
初めにトウカイテイオーから『アッシュが遠い国で金髪イケメンと結婚する』と聞いた時はとても驚いて、まさか失恋して弱ったところにつけ込まれて……なんて悪い想像が浮かんだりもしたが、何もなくてよかった。
「あれ、トレーナーだ」
「アッシュ……色々大変でした……」
「え? 何があったのさ」
「トレセン学園を駆け回る伝言ゲームで遊びました」
「まるで伝わってこないんだけど!?」*1
14-2 菊花賞にむけて
クラシック三冠最終戦『菊花賞』。
アッシュブライドはこれまでにないほどの仕上がりだった。
「まさに、絶好調だね」
「はい。
最後に掛ける言葉は何がいいだろうかと悩んでいると──
「“異界”ってなんだと思う?」
「え、なんでしょう。ウマ娘たちの魂がもといた世界、なんですよね?」
「今の今まで、ぼくのレース結果はすべて“異界”のレース結果と同じなんだ。見えるようになってすぐは“異界”のぼくよりいい成績を収めてみせるって息巻いてたけどさ、本当にできるのかな」
「この世界のレース結果はもう決まってる、ってことですか。私はそうは思いません」
「それはどうして?」
「
「……そうだね。頑張ってくるよ」
“異界”が見える故の悩みというものだろうか。
私なりの解釈で励ましてみたが、どうやらやる気を出してくれたようだった。
「ちなみに、“異界”の菊花賞の結果はどのようなものだったんですか?」
「ぼくの勝ちだよ」
「それはむしろ同じレース結果になってほしいですね……」
14-3 菊花賞
『スタートしました! 先頭を行ったのは12番。2馬身3馬身差をつけて独走です!』
実況の通り、菊花賞は1人の逃げウマ娘のペースで進行した。
ゼンノロブロイは先頭集団後方で先行の態勢、ネオユニヴァースは中団で好機を伺う。
アッシュブライドはネオユニヴァースの後ろ。ネオユニヴァースが通った道を利用して先頭に向かういつもの走りだ。
逃げウマ娘は最終コーナーまで先頭を譲らず、後ろに続く全員の体力を削り続けた。
多くのウマ娘は最終直線に到達する頃には体力を使い果たしており、スパートをかけることがほとんどできない状態になっていた。
加速することのできたウマ娘は4人。
“最高”、“大統領”と称えられる2人とネオユニヴァース、そしてアッシュブライドのみ。
ゼンノロブロイも必死に足を動かしたもののこの4人にはついていくことが出来なかった。
そしてこの4人での直線勝負。
最初に力尽きたのは──
「LODI……ここまで、だね」
ネオユニヴァースだった。
減速しバ群に沈んでいくネオユニヴァースを躱して、アッシュブライドが前に出る。
「後は任せて」
そしてアッシュブライドは“最高”と“大統領”に並びかけ──追い抜いた。
『アッシュブライド、1着はアッシュブライドです! クラシック三冠最後の冠はアッシュブライドが手にしました!』