私は
名も無き雑貨屋のしがない店員である。
この雑貨屋は比較的人気のある店であり、私の住むこの素朴な田舎町の店舗にも、近くの駅周りに住む人々が多く寄ってくる。
……そう。それは良いのだが。
「お客様……どうか落ち着いてくださ……」
「これが落ち着いてられっかよ! おめーこの商品が売り切れってどういうこったぁアアん!?」
……このように、まるで不良かと言いたいほどに柄の悪い
人気店、特に薄利多売の雑貨屋は多くの客が来ることが前提なので、こうしたクレーマーが多くやってくること自体は覚悟の上であるが。
「大変人気のある商品でございまして、ただいま入荷待ちとなっており……」
「ザッケンじゃねえよ! おれァこの商品が欲しくってわざわざこんな辺鄙な店まで来たんだよォ! てめー舐めてんな? おん?」
「いえそんなことは……」
そしてそいつは、私の逆鱗に触れた。
「『お客様は神様』だろうが!」
ピキッ、と。瞬間、畑の沸点は店内の気温と共に零下の域まで下回り、周囲の空間は凍てつき始める。
「……お客様。聞き捨てならないことをお聞きしました。『お客様は神様』ですか?」
「……ほぉ。ここでやるってのかい? いいじゃねえか、ならお前のような生意気な店員に教えてやるよ。
『店員は客の奴隷』だってなあ!」
刹那、戦場となる超空間が形成され、店の、町の、否────地球上の、この宇宙のどこにも存在しない座標が生み出され、そこに入り込んだ畑と『
「いくらお客様と言えど手加減はしません。同じ人間でありながら神を騙る、その思い上がった考えを打ち砕くまでです────『
畑の手の内から弾けるは、限り無い数の惑星を圧縮した、もはや岩石と定義していいのか分からないほどの超高密度の塊を内側から爆発させる、超新星爆発の上位互換────その威力は実に無限大であり、まさしく衝撃波と熱量が嵐のように殺到する。
形容するなら
宇宙そのものをも消滅させかねない、生身の人間には致命的な威力が、怒濤のように押し寄せる。
しかし。
「ふん、その程度か」
まるで蚊に刺されたほどにも感じないように、パッ、パッ、と軽くはたけば、その爆風は無に還る。
そこにあった絶望的なまでのエネルギーは最初から存在しなかったようにゼロに還され、木星を凌駕するほどまでに巨大化していく。
「次はこっちの番だ。食らいなアホ店員」
────そうして、世界は爆ぜた。
複雑に入り組んだ時間流をすべて吹き飛ばし、この果てしなく広がる超空間ごと押し潰しかねない、圧倒的破壊力。
時間流や空間が存続できないことは、もはや畑もクレーマーも時間や空間といった概念は存在せず、関係ないものとなっているためどうでもいいが────しかし、やはりその純粋な爆発力は、
新たな宇宙を創造するほどの力で以て、畑の肉体を粉々にせんと迫る衝撃波。
偽りにして全能なる
「ぐぶっふ…………」
さすがの畑も無傷とは行かない。重傷だって免れることはできない。
骨肉は軋み、所々から出血し、内臓は原型を留めぬほどにグチャグチャにされた。
たとえこの宇宙が滅びても、畑だけは無傷で生き残るとされた、そんな肉体でも……。
このように。
ぼろ雑巾のようにされている。
「これでわかったろう? クソ店員とお客様との間には埋めがたい差があると。
それとももう一発今のを食らいたいか?」
嘲るように笑うそいつは、しかし確かに偽りながらも神の後光を背負い、無限なる光をあまねく世界に満たそうとしている。
「……はあ。あんまり本気は出したくはなかったのですが……仕方ありませんね」
────そして、畑の肉体は一瞬で全快する。
「────!?」
「それじゃ……ゼロに還すまで付き合ってもらいますよ、『お客様』」
瞬間、宇宙の外にまで波及し、無数の宇宙が激震する衝撃が時空間をあまねく駆け巡る。
過去から未来にかけてのすべての時間と因果を一発で終焉に導くほどの信じられない総量を誇る高エネルギーの発露は、まさしく多元宇宙を消滅させるに足る威力を放つ。
多元宇宙内の全物質と全概念がその一撃で余すところなく破壊し尽くされかけたが……畑の能力はそうして消え行く宇宙の物質と概念を保護・再生し、守る。
だが、相対する『クレーマー』は。
「ごっぶおおおおっっっ!!!!」
────その圧倒的な威力の前に倒れ伏そうとしていた。
「ぐ、ぐぶぶ……くそ……おれ、が、負け……るだなん、て……」
「これに懲りたら二度とクレームなど辞めることですね、『お客様』」
これが、この世界の日常である。