最初は、ただの後輩ってだけだった。
彼女に憧れて、休み時間になるといつも3年の教室に来ていた彼。
卒業まであと少しという時、彼女が人違いで彼を振ってしまった日から始まった。
出会い方は可笑しかったけど、いつの間にか彼と彼女と私、この3人でいるのが当たり前になってた。
彼は彼女にゾッコンだった、それも本当にワンちゃんのように。
彼女もまた、彼といるのがとても楽しそうだった。
私は……
いつからだろう、彼を『後輩』ではなく『異性』として気になり出したのは…
たった1ヶ月でこうも変わるなんて思っても見なかった。
私って案外チョロい?
もう何ヶ月、1年も一緒にいたような感覚。
それだけ濃かったのだろう、彼らといる日常は。
とても楽しかった…でも、どこか悲しかった。
彼女のように美人でも、可愛い笑顔も出来ない…周囲にはクールと言われる事もあったけど、その分怖がられたりもしてた。
彼女は私の親友、だからこそ羨ましかった。
『私を見て欲しい…はるかじゃなくて…』
心の中でわたしが言う。
でも私は言えない。
もう、あの2人に入る隙間なんて存在しないんだ。
私の初恋は、始まらずに終わる。
これでいいんだ、これで親友のままでいられる。
「……ぱい」
「ん…んん…」
優しい声が聞こえる。
いつも聞いてる声。
聞こえると嬉しく、そして悲しくなる声。
「せ…ぱい…先輩」
「ゥん……橘…くん?」
「おはようございます塚原先輩、こんな所で寝てたら風邪ひきますよ?」
目を覚ましたら目の前に彼…橘くんがいた。
今日は部活が休みだったから図書室で暇つぶしに本を読んでいたら、いつの間にか寝ていてしまったみたい…
不覚だわ、寝顔を見られたなんて…
…ヨダレ大丈夫よね?
「あ、ありがとう…どうしてここに?」
言ってから思ったけど、おかしな質問だった。
図書室に来るくらい、生徒なら普通なのだし。
そんな当たり前な事が分からないくらい、頭が回ってなかった。
「今日は先輩たちが教室にいなかったもので…帰っちゃったんだと思って暇つぶしにと…」
そう言われてはっとなった。
いつも彼が教室に来るか、私の部活が終わってから帰るというのがいつもの流れだった。
でも、今日はそれを忘れて図書室に来て寝てしまっていたのだ。
悪いことしちゃったな…
「ごめんね、わざわざ教室まで来てもらったのに…」
「いえいえ、好きでやってる事ですから」
好きで…か。
一緒に帰る事が?
それとも、彼女のことが?
また答えが分かってることで悩む。
卒業というゴールが迫るほどに悩む時間が増えていく。
どうしてこうなっちゃうかなぁ
「先輩」
「…な、なに?」
無駄な思考を巡らせてた時に、橘くんが話しかけてきた。
反応に間があった…し、しっかりしなきゃ。
「森島先輩はもういない感じですし、今日は僕たちだけで帰りませんか?」
「…………え?」
「え?」
素っ頓狂な声を出してしまった…
私と…2人きりで帰る?
そ、それは嬉しいけど…
「あ…え、えぇと…」
「…すみません、もしかしてお邪魔でしたか?」
橘くんが眉毛をハの字にして申し訳なさそうに聞いてきた。
そ、そんな顔しないでよ…
「ち、違うの!違うのよ、ただ…」
「ただ?」
「橘くんは、はるかと帰るのが楽しみだったんでしょ?なら無理して私と帰らなくても…」
自分で言ってて悲しくなる。
ずるい言い方だ…これじゃまるで面倒な女みたいにじゃない…
「……そんな事ありませんよ」
橘くんは違うと言って、先程とは違った真剣な表情で…瞳で…私を見つめた。
「森島先輩と一緒に帰るのは楽しみです。でも同じくらい、塚原先輩と帰るのも楽しみなんです」
彼は私と帰るのが楽しみと言ってくれた。
はるかと同じくらい。
優しい彼だから…そんな普通の言葉だったとしても、それだけで嬉しく感じる。
私は今まで異性を気になったことなんてなかったからいつも通りに出来ない…
大会に出る以上にドキドキしてる…こんなんじゃ抑えられない。
「そっか……ごめん。ありがとね、橘くん」
「いえ。それじゃ、帰りましょうか」
「えぇ…帰りましょう」
はるか、私はもう譲らないよ。
案外負けず嫌いなのよ?
「あ、どこか寄っていきますか?」
「いいわね、どこか良いところでも?」
わたしはもう抑えない。
わたしに正直に行こう。
「商店街に新しいドーナツ屋が出来たみたいなので、そこに行きましょう!」
「へ〜、ドーナツ屋さんか。じゃあ早く行こ!」
「ちょっ、先輩!?いきなり走らないで下さいよぉ〜!」
「ふふっ、置いてくぞ〜!」
ホント…なんでこんな時期に気になっちゃったのかな。
時間が全然残ってないじゃない。
忙しくなりそうね…
でも、凄く楽しくなりそう。
だって…
「橘く〜ん!」
「はぁはぁ…な、なんですか?」
「頑張ってね!」
「え、えぇ?何がですか?」
私の心は…決まったから。
絶対に振り向かせてやるんだから。
だから頑張ってね、橘くん♪
終
塚原先輩のスキBestまだですかね?
勢いのまま書いたので不快な部分があると思います。
ホントすみません…
塚原先輩には幸せになって欲しい思いで書きました。
どっかの薄い本ではめっちゃ幸せそうで何よりです…
見てくださった方、ありがとうございました。
ぼちぼちやってくので宜しくお願いします。