IS 二つ目の祈り   作:スワンプ2

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2.厄介な友人

昼休みが終わり、いたずら好きのお嬢様から解き放たれた永人は気分がよかった。

 

一夏に疑問に思われながら授業をこなし、LHRにまでなんとかこぎ着けた彼はやっと休めるという事実に安堵した。

 

明日の連絡事項を告げる千冬。

 

ああそうだ、という彼女の言葉に少し嫌な予感がする永人。

 

「解散の前に、再来週に行われるクラス対抗戦の代表を決める。代表というのは文字通り、生徒会への会議や委員会への出席を求められる」

「いわゆるクラス長だな、自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

その言葉に頭を抱える。こんなもの、物珍しい男性にしようと騒ぎ立てるやつらがいることくらい容易に想像できるはずだ。

 

織斑千冬の顔を見ると、案の定こちらを見ながら口角だけを上げていた。

 

女狐が、と永人はできるだけ目立たないよう机に突っ伏して寝ているふりをした。

が、千冬が歩いてくる音を聞いて即座に背筋を正した。織斑千冬に全力で殴られれば仕事どころの話ではない。

 

「はい!織斑君を推薦します!」

一人の生徒が手を挙げて叫ぶ

 

「あ!私も私も~!」

 

同調するかのような言葉に一夏も叫んだ。

 

「はぁ!?」

 

「じゃあ私は細目くん!」

「落ち着いたスタイルのリーダーってのも素敵よねぇ~」

 

最悪のパターンになったことを実感した、どちらが代表になっても俺の仕事……一夏を守るという任務の邪魔になる。

 

「……俺からもいいですか」

 

「なんだ細目、自分を推薦するのか?」

からかうようにこちらをみる担任にイラつきながら、最も合理的な選択肢を選ぶことにした。

 

「いえ、俺はセシリア・オルコットを」

 

「ほう……理由は?」

 

「彼女はこの学年で最もISの操縦技術が高く、なにより努力家です」

全て事実だ、そして彼女が代表なら一夏も俺も代表に縛られず活動できる。

 

「なるほどな……ほかにはいないか?」

 

「俺はクラス代表なんてやりたくないぞ!」

「俺もない」

一夏の言葉に同調する。頼むオルコット、受け入れてくれ

 

「自薦他薦は問わない、選ばれた以上覚悟しろ」

千冬がこちらを見ながら発言する、なんでだよ

 

「ってか細目くん、オルコットさんがタイプなのかしら」

どこかの生徒がそうつぶやいた。ああ、最悪だ

 

その言葉に触発されたのか、セシリアが席から飛び跳ねるように立ち上がる。

 

「っ……!納得いきませんわ!私がそのような男たちなど!」

顔を赤くしながらオルコットが叫んだ。

 

「別にそういうんじゃない、クラス対抗戦を勝つならお前が適任だ」

言い訳っぽいが事実だ、俺は代表になりたくない。

 

「そうです、クラス代表は実力トップクラスのわたくしがふさわしいはずです!」

 

オルコットが自身の胸に手を当てながらアピールする。

 

「大体、このような文化的後進国で暮らさないといけないこと自体、耐えがたい苦痛――」

 

自尊心が昂った故の失言か、オルコットの言葉に一夏が食ってかかる。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ、世界一まずい料理何年更新してるんだ?」

 

「あ、あなた……!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだろ!」

 

「決闘ですわ!」

 

売り言葉に買い言葉、一夏もすでに引くような道は残っていなかった。

 

「ああいいぜ、四の五の言うよりわかりやすい!」

 

「ああもう……勝手にしてくれ」

頭を抱えながらつぶやく、しかしオルコットはこちらを指して宣誓する

 

「あなたもですわ!細目永人!」

 

「なんでだよ……」

 

本格的に頭が痛くなってきた、なぜこいつらはこんなにも好戦的なんだ

 

「あなたのような冴えない男に好かれているなどという荒唐無稽な話を許すわけにはいきません!」

 

「勝手に言わせてろよ……」

冴えないやつって言われて地味にショックだ、ちょっと悲しい。

 

「エイト、好き勝手言わせてていいのかよ!」

一夏がこちらに顔を寄せてくる、別に好きに言わせてもいいと思う。

 

「俺は気にしない」

嘘だ、ちょっと気にしてる。

 

「わたくしがします!」

 

「頭が痛くなってきた、体調不良で辞退する」

嘘じゃないし、辞退もしたい。

そんな思いから言葉がこぼれる。

 

「そこまでだ、勝手に話を進めるな」と織斑先生。

 

「細目の体調がすぐれないなら決闘は次の月曜、五日後に行う。いいな、では解散!」

「全然よくない……」

 

 

 

 

 

「だから、負けてらんないだろ!」

と熱く語る一夏。

 

「勝手に俺まで巻き込むな」

この学校に来てからため息が止まらない、このまま肺に収まる空気がなくなってしまいそうだ。

 

「そういうなってエイト、二人で特訓すれば勝てる!」

 

あのな、と一夏の言葉を遮る。

 

「オルコットの技量は一週間足らずで勝てるほど低くない、専用機持ちだぞ」

 

「専用機ってなんだ?」

こいつは戯けたアホだ

 

「今日の授業で出てきただろ……、国から専用のISを貸し出されて装備しているんだよ」

 

「でも、お前のそれもなんだろ?」

一夏が俺の首元を指して言う。

 

「ああ……まあ、俺の場合はこいつしか反応しないんだ」

首筋を撫でながらチョーカー型になってるIS……待機形態のISに触れる。

 

「そうなのか?」

 

「そうだ、だから織斑先生が言ってただろ?限定的なIS適正だって」

 

「あ~、そういうことだったのか」

一夏がポン、と手を打つ。

とりあえずは納得してくれたようで助かった。

 

「大体はな。で、どうするんだ? IS戦を教えてくれるような奴はほかにいるのか?」

話を切って一夏に問いかける。

 

「そりゃああるさ、一応だけど……」

 

「そうか、ならそいつに教えてもらえ」

 

「なんでだよ、エイトも一緒に……」

こいつはどれだけ俺と一緒に居たいんだ。

織斑一夏を守ることが俺の任務だが、少なくともISに乗ってないうちは安全だろう学園でぴったりくっつくほどの余裕はない。

 

「俺もほかにアテがあるってことさ」

 

そう言って席を立つ。

 

「じゃあいいんだけどさぁ……」

一夏も同じように席を立つ。

 

すると、教室の扉が開き呼びかけられる。

 

「あ、よかった。二人ともまだいたんですね」

 

「山田先生、どうしましたか」

 

「はい!突然ですがお二人の部屋が決まりました!」

 

「しばらく家から通うって聞いていましたけど」

 

そんなはずはないだろ、と頭を抱える俺。

なんでこの国の連絡は適当なんだ。

 

「政府から安全のためにと強くお願いされまして……。 必要なものは織斑先生が用意してくれたので、足りないものは後日持ってきてくださいね、これがカギです」

 

「そっか、じゃあさっさと行こうぜエイト」

 

「そうだな。先生、ありがとうございます」

 

一夏が受け取った鍵を握りしめて教室を出ようとするので頭をつかんで下げさせる。

悪気はないんだろうが、目上の人間に礼もしないのはダメだ。

 

 

「あ、待ってください!」

と山田先生がこちらを止める

 

「織斑君の分は今渡した鍵なんですが…、その。細目君は違う部屋で、そこに鍵が置いてあるので……」

 

なんでだよ

 

「なんで一緒じゃないんですか?男同士」

 

「珍しく正論だな」

 

一夏を守るという目的がある以上、俺と一緒の部屋のほうが都合がいいと思うが……お国も一枚岩じゃないのか。

あるいはほかの誰かの……意志が介在したのか?

 

「細目くんの適性が判明したのはつい最近なので……」

 

厄介な話だが、初日からゴネて先生の心境を悪くするのも考え物だ。

ここはおとなしく引き下がって楯無に理由を聞くとしよう。

 

「……わかりました、もういこう。一夏」

そういって、申し訳なさそうに笑う山田先生の元を去った。

 

 

 

 

 

 

伝えられた部屋番号に近づくにつれて、見知らぬ顔が増えてくる。

 

「ここって四組とかのエリアだよな……嫌な感じだ」

 

「あれって二人目の……細目くん?」

「なんで四組のエリアにいるんだろう……」

 

と周りの生徒が話し合っている、どちらかといえば俺が聞きたいんだ。

 

 

目的の部屋の前にたどり着きノックをする。

「どうぞ」

帰ってきたのは小さな声だったが、そのまま扉を開いて挨拶する。

 

「今日から同室の細目永人です、よろしくお願いします」

 

「……わかった」

蒼い髪。

 

全く最悪だ、なんでこの組み合わせになったのかだいたいわかってきた。

 

「はぁ……」

 

「お姉ちゃんの知り合いでしょ、知ってる」

 

眼鏡をかけた少女は興味を失ったかのようにPCに向き直る。

 

「あいつのせいだろうな」

呆れた顔をして呟く。

 

「自己紹介は要らないでしょ」

 

「更識簪、どう呼べばいい?」

 

「好きにして、でも仲良くはしない」

すこしかなしい、実際男と女が同じ部屋なんてのはおかしい話だが後も拒絶されると泣けてくる

 

「……わかった」

PCの電源を落として彼女はこちらを向きなおす。

 

「それと、今からお風呂に入るから、どこか行って」

 

「……わかった。」

出直すとしよう。 着いて即退室、同室はチクチク。実に最悪だ。

 

 

 

 

 

翌日、昼休みに定期報告として例のヤツの元に赴く。

 

 

「それで、簪ちゃんとはどう?」

やっぱりな、とため息が止まらない。

 

「初日から拒絶、アンタのおかげでぐっすり眠れたよ」

 

「それはよかった~、あの子のことよろしくね」

こいつには皮肉というものがないのか?

 

「話聞いてるのか? ……それより厄介なことになったんだが」

そんなことはどうでもいい、一夏の同室は篠ノ之箒だ。

 

あの二人ならある程度身の安全は保障されてるだろう。

……最悪の科学者篠ノ之束と日本国の契約によって。

 

それよりもクラス代表を決める決闘、そっちのほうが先だ。

 

「知ってるわよ~、でも手助けはしてあげない」

広げた扇子には不干渉と書かれている。

相変わらずマジシャンじみたことをする女だ。

 

「俺はまともに戦えないぞ」

 

「知ってるわよ~、たまには無様なところも見せてほしいのが乙女心ってところかしら」

口元を隠しながらからかうようにこちらを向く楯無。

 

「はぁ……」

頭を抱える俺、こんな奴が現場の上司だと疲れる。

 

「彼女の機体はあなたと相性が悪いでしょうし……あなたがISでどこまでできるか見せて頂戴」

 

「俺の性能試験ってところか」

 

「そういうこと~、よろしくねエイト君」

 

オホホ~と笑いながら無理難題を押し付けてくる楯無にムカつきながら返す。

「それが命令なら」

 

「これは命令じゃなくてお願い、聞いてくれるわよね?」

 

涙ぐんだ演技をしながら上目遣いで迫ってくる楯無。

全く持ってやりづらい、だが上司の頼みを断れるほど俺に自由はない。

 

「はいはい」

と、つぶやいてチャーハンを口に運ぶ。今日も一口目は食べれなかったが。

 

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