「これだけの起動で気絶……か」
薄暗い部屋、IS学園地下の隠されたアリーナガレージで織斑千冬が先日の戦闘データを眺めていた。
「戦闘状態で4分を超える稼働は初めてです。 それに、記録されているデータストーム量もIS学園に来る前より増大しています」
「よくやったと褒めてやるべきか、無理をするなと叱るべきなのか……」
細目永人のデータログは彼のIS適正の低さだけでなく肉体へのダメージも記録されていた。
千冬は頭を抱えた。教師としては、安全を省みず戦った彼を叱らなければならない。
だがIS学園教師としてではなく一人の戦士としては――それが自らにはるかに劣るものであっても、すべてを出し切った彼を咎めることができなかった。
「先生は怒る方を、私が褒めてあげます」
そんな千冬の心をいざ知らず、水色の髪をした少女の提案が千冬をわずかに苛立たせた
「いいとこどりか?楯無」
にらみを利かされた少女は首をすくめて反論する。
「まさか。織斑先生は叱るほうがお得意かと」
明らかな挑発、それを千冬が取り合うことはなかった。
「褒めることがあれば褒める、それだけだ」
それにしても、と千冬が楯無に切り返す。
「妹の部屋割りと言い、お前はあいつに何を求めている」
千冬には確信があった、更識楯無は細目永人に特別な感情を抱いている。
それが恋愛的なものではないことを祈っていた、日本を背負う暗部の長――更識家の当主が一エージェントに特別な感情を抱くべきではない。と
「ただの気まぐれですよ、先生」
「……違うな」
そして、楯無がただの気まぐれで妹を他人に任せないことも知っていた。
「お前は細目永人に同情している」
釘をさす言葉、目を逸らす彼女。
「彼が聞いたら呆れるでしょうね」
どうでもいい、と彼は言うだろう
任務遂行がすべてだ、と
「はぁ……まあいい、飼い犬に手を嚙まれるなよ」
「エイト君はそんなことしませんよ」
信じてますから、と口元を扇子で隠しながら楯無が嘯く。
「だろうな」
少なくとも数年はだが、と千冬は付け加えた。
織斑千冬は永人が楯無に従う理由を、彼が国家のエージェントである原因も知っていた。
「細目ルイスとその兄弟が日本政府に保護される限り、細目永人はこれに従属し織斑一夏を護衛する……か。あまりいい気はしない」
「おっしゃる通りです」
「細目には話したのか?」
千冬の問いかけに彼女は知らないふりをして答えた。
「何をです?」
そのしらじらしい言葉に、千冬はにじみ出る怒りを隠せなかった。
大人げないことは理解していた、それでも到底受け入れることなどできなかった。
「とぼけるな、お前が……」
――――お前が、それを命じたということを
千冬の言葉に、更識楯無は答えず部屋を後にした。
2日に一話くらいの感覚で更新したいですよね(多分できないです)