ルウタです。
ONE PIECE(とFILM RED)に登場したルフィとウタの二次創作です

私にしては珍しい原作時空での短編です。
スナック感覚でお楽しみください

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セカイノツヅキ

 ああ、どうしてこうなったのだろうか。

 わからない。

 何一つわからない。

 だって、ほんの一年──いや、半年……でもない。ひと月、半月前には、こうなるなんてわたし自身が思っていなかったのだから。

 例えば十二年前のわたしに、〝こうなる〟ということを伝えたとして、『はァ? あんた何言ってんの?』と言われるのがオチだろう。

 本当に、ありえない。

 事実は小説より奇なり、という諺がある。

 人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である、という物理学者の言葉がある。

 それでも、絶対にありえない。

 そう、思っていた。

 そう思っていたのだ。

 しかし、他ならないわたし自身のことだ。その〝ありえないコト〟が〝ありえるコト〟であったというのは、火を見るよりも明らかだった。

 

 ──わたしはどうも、幼馴染に恋というヤツをしてしまったらしい。

 

 ことの発端はわたしの不用意な発言なのだから、この状況になってしまったのも、原因の半分以上はわたしにあるのだろう。

 あれは十日ほど前のことだったろうか。

 昼食も終わって、サニー号の船主付近で、特に何をするでもなく海を眺めながらまったりとしていた。

 ちょうど船員たちは、各々のやりたいことに時間を使っており、珍しく二人きりだった。

 そんな中、ふと気になったわたしは、ぼーっとだらけるその幼馴染に、つい何気なく聞いてしまったのだ。

 

「そういえば、ルフィって好きな人とか、いるの? 恋愛的な意味で」

 

 特に含みも何もない、ただ純粋に疑問に思っての質問だった。

 もちろん、わたしだって年若い乙女だ。色恋沙汰とは無縁の人生を歩んではきたが、それに興味がないわけではない。

 だから話をしやすいけれど、きっとわたし同様に色恋から縁遠そうな幼馴染に、そういう話題を振ってみたのだ。

 いつか誰かと、そんな話をしてみたかったのだから。

 だが、彼の答えは、わたしの想像を簡単に裏切った。

 

「いるぞ」

「え!? いるの!?」

 

 まさかいるなんて夢にも思わなかったから、わたしは面食らった。

 そうか、ルフィにもそんな人がいるのか。

 幼馴染の成長を喜びたい気持ちとは裏腹に、腹の底を撫でるような、少し暗い感覚。

 ──もしかして、嫉妬しているのだろうか。

 なんてことを思って、思わず苦笑しそうになるのを必死で抑えたのを覚えている。

 

「……なんだよ、その驚き方はよ。お前が話題を振ったんじゃねェか」

 

 少しだけ口を尖らせて言うルフィに、わたしは「ごめんごめん」と思わず笑ってしまう。

 

「まさかいるとは思わなかったからさ。……でも、そっかァ。ルフィも成長したみたいで、わたしも鼻が高いよ。──で、どんなコなの?」

 

 今となってみては、その質問をしたのが良かったのか悪かったのか。

 少なくともその時のわたしには、決定的に〝自分も当事者になりうるかもしれない〟という意識が欠けていた。

 

「ウタ」

「ん?」

 

 だから、そのルフィの言葉に、直ぐに反応することができなかった。

 ただ、名前を呼ばれただけだと思った。でも、話の脈絡からして、いきなり名前を呼ばれるのはおかしくって──。

 

「だから、ウタだって」

 

 照れるでもなく、まるで当たり前の日常会話のように、ルフィが言う。

 思考が、短絡(ショート)する。

 

「────えっとォ……、つまり……どういうこと?」

 

 ルフィの言っている言葉は明確なのだ。

 間違えようがないのだ。

 質問に対して、その名前を言うということは、きっとそういうことなのだ。

 頭は、理解していた。

 ただ、気持ちが完全に置いてけぼりになっていた。

 そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、ルフィはわたしの質問に、やはりあっけらかんとして応える。

 

「つまりおれはウタのことが好きだってこと」

「……本気?」

 

 まさか。

 ルフィが?

 わたしのその言葉に、少しだけ気を悪くしたようで、ルフィは軽く唇を歪めて、不服そうな表情を浮かべる。

 

「なんだよ。お前が訊いたんじゃねェか」

「でっ、でも、ウタってわたしだよ?」

「だからお前が好きなんだって言ってるだろ?」

 

 何言ってんだァ? とルフィが首を傾げる。

 いや、でも!

 そういうのって、普通面と向かって言わないでしょ!? しかも、そんな照れもヘチマもないように当たり前に言うことじゃないよね!?

 

「そのっ、いつからっ!?」

 

 いや、別にそんなことが聞きたいわけじゃなかった。

 これはただ、気持ちを整理するための時間稼ぎ。

 それに対して、ルフィは腕を組んで少しだけ真面目に答える。

 

「んーと、好きだったのがいつからか、ってのは正直わからねェ! でも、気が付いたのは最近だ。他のナミもロビンも大事な仲間だけどよ、ウタのことはそれとは違って……、なんていうか、誰にも渡したくねェ! って思ってよ」

 

 そう言ってルフィはニシシ、といつものように、太陽の笑みを浮かべた。

 

「まあ、これはおれが勝手に思ってるってだけだから、ウタは気にしなくていいぞ!」

「ねえルフィ、それ聞いちゃってわたしが平常心でいられると思う!?」

 

 いられるわけがない。

 だってこれは、完全に不意打ちだったがコクハクというやつだ。

 エレジアで読んだ本の中に書いてあったのだ。

 男女が恋人として付き合う前に、お互いの恋愛感情を確かめるために、自分の胸の内をコクハクするのだと。

 いや、しかしそれで挙動不審になってしまっているのは、きっとわたしだけ。

 なんだか心臓の音が不規則な気がするし、顔は熱いし、変な汗は出ているし、うまくルフィと目が合わせられない。

 一方のルフィは、やはり涼しい顔であっけらかんとしているから、少し腹が立つ。

 あまつさえ、

 

「だから、お前が訊いたんだろうがよー」

 

 と自分は非難される筋合いはないと言わんばかりに言う。

 確かに、非は全部わたしにあるんだけれども!

 藪蛇とはまさにことのこと。

 完全に墓穴を掘ってしまった。

 でも──。

 わたしの、気持ちは──?

 困ったことに、自分で自分の気持ちがわからない。

 ただ、わかるのは自分の心臓が早鐘のように暴れまわって、そのせいで血液が沸騰したみたいに顔が熱くなって、そして、ルフィの顔が歪んで──。

 

(ああ、ゴムだから顔も歪められるよね……)

 

 なんて、意味不明なことを想いながら。

 

「あっ! おいウタ! ウター!?」

 

 わたしはバタリと意識を失ったのだった。

────

───

──

 そんなことがあったのが、ついこの間のこと。

 それからも、当たり障りのない船員生活を送っているが、どうしても意識してしまっていることは隠せないようで、ぎくしゃくした日々が続いた。

 意識しているのは、もちろんルフィのこと。

 冷静に振り返ってみれば、わたしの気持ちなんて単純明快。

 わたしは、ルフィのことが好き。

 ただ、それだけのことだ。

 そうでなかったら、あんな告白をされて意識が遠のくはずもない。

 わたしも気が付いていなかった胸の内に、気づけばあいつが居座っていたようで、それに驚いて、体から心がすっ飛んでしまったのだろう。

 はぁ、とため息を吐いて、わたしは寝返りを打つ。

 女子部屋の片隅にあるベッドに仰向けなって、手に持っていた手帳を広げた。

 

「…………意図してないけど、思いっきりルフィのことじゃん、これ……」

 

 そこに書いてあるメモは、以前新聞社からインタビューを受けるとなった時に、ヘンなことを答えないように、と書いたカンペだ。

 曰く。

 

『好きなタイプ:普段は子供っぽいけど、いざというときに頼りになる人』

 

 読み返して、パタンと閉じた手帳を枕元に放り、両手で顔を抑えて足をバタバタさせる。

 

「あー! この時点でもう既に確定事項じゃん!! 好みドストライクじゃん! この時はまだ今のルフィ知らなかったけどさ!! あああもう!!」

 

 あの時に思い描いたのは、わたしが憧れていたかつての船長のことだった。かっこよくて、どこか可愛げもあって、でもどこまでも頼りがいのある強さを持った(ひと)。それくらいの人なら、わたしも好きになってもおかしくないなー、程度のもの。

 だけど、それを実際に目の前に出されてしまっては──。

 はぁ……。

 片手を額に置いて、再び嘆息を吐く。

 もう、溜め息しか出ない。

 本来であれば、小さな悩み事であれば音楽に没頭すれば気がまぎれるのだが──。

 起き上がって、作詞作曲の時に使っている机に向かってみる。

 そして、机についた引き出しから羊皮紙を取り出して──

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 それは既にメモ書きとして使用済みであり、そこに書かれた文言を見てわたしは羞恥に身を捩る。

 愛だの。

 恋だの。

 それに関連した、胃もたれするほど甘酸っぱい語句が大量に描き込まれた、決してわたしが書いたとは認めたくない言葉の羅列。

 もうわたしの脳みそが、その栄養素は摂取したくないと情報を受け入れるのを拒む。

 その羊皮紙を乱暴に引き出しにしまい込んで、わたしはまた頭を抱えて身を捩る。

 そう、今のわたしの最大の問題は、大好きな音楽活動をも浸食して、この恋心が溢れてしまっていること。

 描ける曲はメジャー調の暖かなものだけだし、書ける歌詞は今まで触れたこともなかったラブソング。

 わたしがわたしではないナニカになってしまったようで、本当に気がくるってしまいそうになる。

 なるほど、エレジアにいる間に、様々な戯曲を読む機会があったが、その中に出てくる恋煩いとは、今のこのような状況を言うのだろう。

 

「…………ねえウタ。あんた私が部屋にいるってわかってる?」

「ぎにゃああ!!」」

 

 背後からかけられた声に、わたしは椅子から三センチほど跳び上がる。

 それに不満を述べるように、椅子がガタン、と小さく軋みを上げた。

 

「ななナなナ、ナミちゃん!? い、いつからそこにっ!?」

 

 自分のベッドに座る〝麦わらの一味〟の航海士ナミが、呆れたように肩を竦めた。

 

「あんたが部屋に入ってベッドに倒れ込んだ時から」

「ああああ!!! 忘れて!! 忘れて忘れて忘れてぇえ!!」

「……はぁ。ウタ、ホントあんた海賊向きじゃないわね。そこでさっとウタウタで私を眠らせて、昼寝の時に見た夢だって思わせればよかったじゃない」

「──歌います。ウタカタ──」

「もう遅い」

 

 ぴしゃりと言い放って、ナミがやはりあきれ顔のまま言う。

 

「というかさ、聞いた感じあんたら両想いなんでしょ?」

「両想い!?」

「違うの? なんで悶えてるのかわからないんだけど。くっついちゃえば?」

「くっつく!!?」

 

 思わず椅子から転げ落ちた。

 そんなわたしを見て、ナミがきょとんと眼を開く。

 

「何でそんな驚いてるのよ……」

「だって──」

 

 ルフィは誰にも縛られないし、誰かを縛り付けたりはしないし、誰よりも自由を愛している。

 もちろん、そんなわたしの中のルフィ像を口に出したりはしない。

 でもきっと、それは真実なのだろう。

 少なくとも今まではそうだった。

 きっと、これからも。

 そうでなければ、海賊になって、これほどまで生き急いで海賊王を目指さないはずだ。

 それを──わたしが邪魔するわけにはいかない。

 

「……ねえウタ」

 

 それが、顔に出ていたのだろうか。

 ナミが床でうつむいたわたしを上から覗き込みながら言う。

 

「あんたなんでルフィが好きなの?」

 

 ボッ、と顔に火が付いたような感覚。

 それを見て、ナミが気の毒そうな表情を浮かべて、「悪かったわ」と言った。

 

「言い方を間違えたわ。あんたが好きになったルフィって、今のルフィなんでしょ?」

「…………うん」

「じゃあ、あんたの好きなルフィが、あんたに現を抜かすと思う? 夢を放り出すような男だと思う?」

「…………それは、ないと思う──けど……」

「ほーら、やっぱりわかってるじゃない」

 

 そこまでわかっていて何をためらっているんだか、と言わんばかりに呆れたように笑って、ナミが言う。

 

「信じてもいいんじゃない? あんたのことも、ルフィのことも」

「わたしの──?」

 

 私は信じてるよ、とナミが言う。

 

「あんた、ルフィのことが好きだからと言って、ルフィをどうこうしたいわけじゃないって」

 

 ああ。

 そっか。

 なんだ。

 わたしの好きなルフィは、いつもずっと先にあるキラキラした夢を見つめて、ボロボロになっても子供のようなひたむきさでその夢を追い続ける、そんな男だから。

 じゃあ、わたしがどうすればいいかなんて決まっている。

────

───

──

 サニー号の備え付けの脱衣室。

 わたしはルフィが風呂から上がって服をまとったところを強襲した。

 

「おう」

 

 とすれ違ったゾロは事情を分かっているのかいないのか。

 いたとしたら気を利かせてくれたのだろうし、そうでないとしたらわたしにとって運がいい。

 

「ルフィ!!」

「ん? なんだウタ?」

 

 そう言って振り返ったルフィの顎を人差し指と親指で掴み、グイと引き寄せる。

 そして、ルフィが抵抗をしたり逃げたりする前に、わたしはその唇に自分の唇を押し当てた。

 風呂上りだから──というわけでもないだろう。

 しっとりとした、やわらかい感触。

 ──足りない。

 ただ唇を触れ合わせるだけじゃ、到底足りない。

 わたしの中に渦巻くこの気持ちを、溢れて仕方ないこの気持ちを、到底ルフィに伝えられない。

 だからわたしは、舌をルフィの咥内へと入れる。

 舌を絡めて、呼吸を、唾液を共有するように掻き雑ぜる。

 口から鼻腔へと抜けるルフィの香りに、頭の芯がくらくらする。

 しばらくそうしていて、しかしルフィは抵抗することはなかった。

 あまつさえ、舌を絡め返して──。

 

「ぷはっ」

 

 さすがに息が続かなくなって、わたしたちは口を離す。

 ふう、と息を整えて、わたしは親指で口元をぬぐった。

 さすがに口元をよだれで汚している姿は、あまり人には見せられない。

 あー、とルフィが頭を掻いて困ったような顔をする。

 

「ウタ、こりゃどういうことだ?」

 

 ん? とわたしは思わず顔を顰める。

 ここまで行動に出して気が付かないのかこの男は!

 じゃあ、言葉で伝えよう。というか、本来ならそっちが先か。

 まあ、いいや。

 これは他の誰かの話じゃなくって、わたしとルフィの話だから。だから周りがどうとか、本来ならどうとか、常識的にはこうだとか、そんなのはどうだっていい。

 問題なのは、わたしが納得できるか。

 そして、ルフィが納得してくれるか。

 それだけだ。

 だから、ストレートに伝える。

 この気持ちを。

 ごまかしも、衒いもせずに。

 

「ルフィが好きだ、ってこと」

「誰が?」

「わたしが」

「…………結婚はしねェぞ?」

 

 その物言いに、わたしは思わず吹き出してしまう。

 話を飛躍させ過ぎ!

 

「なんでいきなり結婚になるの!」

「いや、でも好き同士って、結婚するモンなんだろ? でもおれは海賊王になるから結婚はしねえ!」

「……別に、それでいいんじゃない」

 

 ルフィの目を見て、言う。

 

「あんたはわたしのことが好き。わたしはあんたのことが好き。……今は、それでいいじゃん」

「そっか」

 

 ウタがそう言うなら、と言わんばかりに、ルフィがあっさりと引き下がる。

 そう、それでいいのだ。

 

「だからさ──」

「ん?」

 

 わたしの本当の望みは。

 

「あんたの隣でさ、あんたの夢のつづきを見せてよ。あんたがつらい時も、苦しい時も、そばに立ってたげるから」

 

 ちょっと上から言うような言動になってしまうのは、きっと昔からのクセ。

 だけど、ルフィはこれくらい気にするヤツじゃない。

 物事の本質を捉える直感は、誰よりも鋭い男だから。

 しかし、わたしの予想とは裏腹に、ルフィはつまらなそうに口を尖らせた。

 

「なんだよウタ。お前、おれとの勝負をやめるのか?」

 

 ぷっ、と吹き出してから、わたしは腹を抱えて「あはは!」と大口を開けて笑ってしまう。

 まったく、これだからルフィは!

 

「勝負は続行。あんたが夢のつづきを見せてくれるなら、わたしもあんたの傍で、あんたに夢のつづきを見せてあげる」

 

 わたしの言葉を聞いて、ルフィがニヤリと笑った。

 

「どっちの夢がすげェかの勝負ってことだな!」

「そういうこと」

 

 そう言って、わたしは左拳を突き出す。

 ルフィが、あの時のように右拳をわたしの拳にコツンと当てた。

 拳を離して笑いあった後、わたしはルフィに抱き着いた。

 トクン、トクンとルフィの鼓動が体に伝わる。

 普段伸び縮みさせているとは思えないほど筋肉質でがっちりした体。

 きっと、わたしの鼓動もルフィに伝わっているのだろう。

 

「だからさ──」

「ん?」

「夢のその先を見せてくれるまで、勝手に死なないでよ」

「……夢のために死ぬことはあるかもしれねェから、約束はできねェ」

 

 ルフィが優しくわたしの体を抱きしめながら、言う。

 

「でも、死ぬつもりはねェよ。もう、誰にも負けねェ」

「ふふ、そっか。……ありがと」

「ああ。……でも結婚はできねェ」

 

 呟くようなルフィの声量に、まだ言ってんの!? とわたしは呆れ半分で笑ってしまう。

 いいよ。

 わかってる。

 あんたが一番大切にしていることと、人生の意味をどこに見出しているか、もう知ってる。

 それにルフィは船長で、こう見えて責任感が強くて、そして──、寂しいのは何よりもつらいって知っているから、そう言うしかないんだって、知っているから。

 

「それ、今決める必要ある? いいじゃん、勝負が終わってからで」

 

 だから、好きであるという感情を確かめ合う以上のことは、全てが終わってからでも遅くない。

 だって、わたしが好きなのは、今ここに生きているルフィなんだから。

 

「それもそうか?」

 

 あれだけ何度も言っておきながら、あっさり引き下がるルフィがおかしくて、わたしは再び大きな声を上げて笑ってしまう。

 ──しばらくの時間がたった。

 脱衣所から甲板に出て、海を眺める。

 いつの間にか、日はどっぷりと沈んでしまっていた。

 わたしの頭には、あの人の麦わら帽子。

 月の浮かぶ海を眺めて、思う。

 今は、これでいいんだ。

 これがいいんだ。

 一緒に夢を追いかけて、その夢を見せ合って。

 それから先のことは、それから先のこと。

 どうなるかなんて、誰にもわからない。知ることなんて、できやしない。

 でもきっと、あいつの思い描く夢の叶った世界なら。

 その世界の続きで、きっとわたしたちは幸せだろうから。

 




お読みいただきありがとうございました。
これ、えっちなルウタを書けという指令を受けて書いたものですが、私にはえっちは書けませんでしたいうものになります。
少しでも楽しんでいただけたなら幸い。

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