~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
1 跳躍邂逅のプロローグ
「ある日、神が世界をお創りになった。」
「1日目に光を創造なさり、2日目と3日目に天地を形作られ、6日目に、「神の姿見」にかたどって、人間をお作りになってしまった」
これは、この世界の“神”となった、少年と少女の物語である――――
〇2062年
6限目の、歴史の授業にて。
「東京は、戦争の影響で国防を余儀なくされた。しかし、まさに当時技術革新が起こり、日本は戦争と技術革新に応じて情報人工知能省……かっこ……エムアイエー?を設立した」
「はい次、見目」
「MIAは、人工知能とそれに伴うロボットの研究や法整備を凄まじい速度で改革して行った。その結果、こんにちに至るまで、日本はMIAが作り出した国防システムにより世界唯一の法治国家として存続している」
「はい、じゃあ次は……」
見目旬ら、2040年代後半生まれは、
AIと機械技術の発展と、戦争のための日本産戦闘ロボ特需により、最高に恵まれ、最高に最高な時代を今生きている。
だが、見目旬少年は、広い心の海原に自分がぽつんとひとりぼっちで浮いているような気がした。
「はぁ、ダルいなぁ。同じ話、何回目だよ……」
ただ、窓から覗くはるか遠くのMIAの立派な摩天楼を見つめていた。
6限の終わり、チャイムがなる。
今日の授業は全て終わり、見目は、帰りの支度をし始めた。
カバーにタブレット端末と対応のペンを入れ、ジッパーを閉めてカバンに入れる。
「それでは、気をつけ、礼」
「「「さようなら」」」
彼は、1人で廊下を渡り、階段を下り、靴を履いた。ようするに、友達がいないのだ。
電子標識まみれの道路を歩いて、ため息をつく。
「恵まれてるはずなんだよなぁ」
そのまま大きな道路から外れ、閑散とした住宅街の方へと入っていく。
アスファルトのでこぼこの境目を目で追いながら帰り道を歩いている。
そんな彼は、学業優秀で、運動も出来る。しかも、それといって大それたことをしない人間だった。
彼としては、なぜ自分が他人からはぶられているのかが分からないから、理由もなく嫌われているような、憂鬱な気持ちになっているのだ。
彼は、自分から話しかけないと学校生活は上手くいかないという鉄則を知らない。
なぜそのように青春の基礎を知らない彼なのか。
それは、彼の家庭環境に起因する。
彼の家庭環境は、家族が父ひとりで、父は大学の教授をしており彼自身は1人で生活している。
彼の父親は、MIAの研究員であり、東京のとある名門大学の教授であるため、多忙だった。
しかし、見目旬は、物心ついたころから1人で生活をすることが出来た。
それは家柄ゆえの頭の良さからだったからだろう。
しかし、愛情を知らない彼は欠如した心の穴を埋める手段を知らない。
友達の作り方も分からないし、優秀さ故教師からも疎まれる日々。
彼は、孤独だった。
〇
見目旬の家のマンションにて、共有スペースにあるポストを確認すると、チラシに紛れて彼宛に珍しく手紙が届いていた。
驚いて彼が急いで確認すると、送り主は父だった。
『見目旬様 見目良二』
『悪いけど、勝手に家に入らせてもらった。別にやましいことはない。ただ、“プレゼント”を置いてきただけだ。家に入ったら、確認してみてくれ』
「ちっ」
父親からコンタクトがある事はごく稀だった。
父の声の記憶はないし、顔の記憶もない。
ただ、今回に限っては、普段感情的にならない旬もいらつきを覚えた。
「なにを今更……」
広げた手紙をくしゃくしゃに丸めてポケットに無理やり入れた。
階段を1階上がり、最奥の部屋の扉を開ける。
「……」
プレゼント、と書かれていたことが引っかかった。
玄関の下駄箱の上を見ても、ホコリが溜まったままの殺風景があるだけだった。
ローファーを整えて玄関に置き、視線を正面にやって、普段開いている引き戸が閉まっている事に気付いた。
「プレゼントなんて何も無いじゃん。わざわざこんなとこ閉めるなって……」
引き戸を開けたその瞬間――
「うわっ!」
目の前には、知らない女が倒れていた。
腰を抜かしかけた旬は引き戸につかまったままのマヌケな体勢で、倒れている女を見る。
旬の高校の女子制服を着ている女は、長い髪を下敷きに、身体の左を床に寝そべって、背中を猫のように丸めていた。
ベージュのブレザーとグレーのスカート。
それらの組み合わせの存在感は、旬の自宅にあるだけで数倍増しだ。
恐る恐る、近づいてみる。
「んんっ……」
「っ!」
女は、寝返りを打った。
旬の体もそれに驚きビクっとはねる。
女は、どうやらいままで寝ていたような素振りをしている。
「……すみません。どなたでしょうか」
恐ろしながらも震えた声をかけた。
「……ん?はぁ」
女は、体を起こして体をのばし、あくびをした。
「おはよう……ございます」
窓のカーテンの割れ目から刺す日光が、女の黒い髪に反射している。
光が当たっている所は、青色っぽくなっていた。
流石の旬も、この謎の状況に戸惑っていた。
自分の学校の女子生徒が、しかも知らないやつが、自分の家に我が物顔で昼寝をしている。
そんな異質な状況を目の前にした旬は、ポケットに入っている携帯電話に手をかけて、110番の準備をする。
携帯電話に触れた瞬間、携帯が通知音とともにバイブした。
ふと見ると、父親からのメッセージ通知。
「警察には電話するな」
「まさか……、この女が、“プレゼント”……?」
携帯をしまって女に目線をやると、女はこちらを見ている。
表情は少し眠そうだが、確実に意識を戻し、僕をじっと見ている、
「はじめまして」
女は、おもむろに口を開けて挨拶をした。
「はっ、はじめまして」
「私、『マキナ』と申します。よろしくお願い致します」
その瞬間、『マキナ』は瞬時に姿勢を正座にし、深く頭を下げながら眠そうな声で挨拶をする。
「は、はぁ。まず、頭上げて。それと、俺から色々質問があるのですが……」
彼女は頭を上げた。
「あなたは、何者ですか……」
至極当然の質問をする。
「私は……、思い出せません」
「はっ?……警察に通報します」
「ちょっと待ってください!!」
旬が手をかけた携帯に飛びかかった。
「やめっ……」
体を捻り、彼女をかわそうとした。
彼女の体は、旬の横に体勢を大きく崩して倒れようとする。
その瞬間――
「っ!?」
旬の携帯に、彼女は指を触れていた。
さっきまで床に突っ込もうとしていたのに、その次の瞬間に体勢を整えて携帯に手をかけたのか。
「警察への電話は、おやめ下さい……!」
「お、お前は……」
彼女の口が、緊張した沈黙をゆっくりと裂くように開く。
「警察に電話すれば、あなたは監禁罪で捕まってしまうかも知れません……」
「いやそこ?」
1秒ほど場が静まると、
「思い出しました、私は……」――
「有機ヒューマノイド、マキナです」
「有機、ヒューマノイド?確かに、最近臨床実験されてるって聞いた気が……」
MIAは、内閣に直属する研究機関でもあり、その研究は世界の最前線を駆け抜けている。
そして、それが開発している有機ヒューマノイドとは、人間の細胞を培養することで作る人間型のロボットである。
その頭脳には、人間の記憶データを元にした人工知能を用いているらしく、記憶の忘却や感情の起伏までも再現するという。
「もしかして、臨床実験って……」
「恐らく、ここに居る私のことでしょうね」
「なんでそんな他人事なんだよ!」
「私だってよく知らないのです……」
俯き、後ろに手を組んで顔を横に振っている。
「要するに、父親が、俺の家に実験でお前を寄越したってわけか」
「恐らく……」
「どーすんだよ、着替えとか寝るところとかどこにもねーよ」
「汗とかかかないんで大丈夫ですよ、ロボットなので」
「あっ、そうなんだ」
彼女が、俺のベッドに腰をかけた。
「あと、寝るのは一緒でいいじゃありませんか」
「……っ!?」
旬は思わずその言葉に面食らった。
「ばっ、ばか!女と寝るわけないだろ!お前が床に寝ろ!」
「えー、でもー」
「お前さっきまでここに寝っ転がってたじゃん」
「んんー」
そのまま足をベッドにのせ横になった。
「だから寝んじゃねぇよ!」
「ちぇー」
彼女は不満げな顔で、ベッドから降り床に座った。
「んで、なんでその服装?」
「んー、何故でしょう」
「もしかしてだけど、俺の学校に転校してくるとかじゃないよね?」
「多分、これを開ければ分かるんじゃないでしょうか」
彼女が指さしたのは、見覚えのないダンボール箱だった。
きっちりとした新しめのダンボール箱で、大きさはA4サイズほどで高さはそれほど無く、外にはなにも貼られていない。
「どれどれ……」
旬は、むりやりダンボールのテープをやぶって開けた。
「紙……?」
中には、紙が1枚と何かのカードらしきものが入ったいた。
普段カーテンを少ししか開けていない旬の部屋では、それが何なのかしっかり確認できる明るさではなかった。
旬はそれを取りだし、手前に持っていって確認した。
それには、マキナが学校へ行くためのプロセスが丁寧にチャートで書かれていた。
下には、これをマキナが読めば理解出来るとの旨もあった。
そしてカードの正体は、『見目 真紀奈』と氏名が印字されている旬の学校の生徒証だった。
「……」
「何だったのですか?」
「実験とはいえ、公立高校に偽名を使って編入させるとは……」
「だから一体なんなのですか!」
「……お前はどうやら、学校に行かなきゃ行けないらしいぞ」
「学校……」
彼女は、思い詰めるような表情をして旬の持つ生徒証を見つめた。
「見せてください」
手を旬のほうへ伸ばし、手を広げた。
「ああ、いいよ」
「……」
じっと学生証を見つめ、しばらく時間が経った。
「な、何?ロボットにとってやっぱ新鮮?」
「はい。私は高校生程度の一般常識は、網羅していますが、学校に通う経験は未だにしていないのです」
「じゃあ、なんだ、嬉しいのか」
「私は……」
旬をじっと見つめる。
「なっ、なんだよ!」
「……いえ、見目旬さん。」
旬にマキナが近寄る。
「今日から、よろしくお願いします!」
にこりと、大きく笑った。
「う、うん、よろしく」
こうして、マキナは旬にとってはじめての話し相手となった。