~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「というわけです。恐らく、真紀奈様とお友達になりたかった訳は、高等部から珍しい転入生だってことだと……。高等部の途中から転入するなんて、浮いちゃうこと多いですからね……」
「ほんとに、良い人なんですね」
「ええ、私たちのお嬢様ですから……」
「マキナと友達になってくれて本当に良かった。あいつ、ちょっと変わってるからさ」
「すごい人気者だって聞いてますけど……」
「暮らしてみればわかるよ。あいつが元気そうに、しかもそれで対等に喋るなんて、余程の素質がないと無理だ」
旬は苦笑いをした。
「それって、いいことなんですか……?」
「いいことだよ。ずっとひとりだったんだから」
「……みんな、ひとり、なんですね」
「そう、ひとり……」
夕焼けがどんどん落ちていく。
「だから、ペトラさんとミカさんたちみたいに仲間になって、ひとりを繋げるんだよ」
「……さっき仰っていたのは」
「そう、出来なかったんだ」
「出来ないなんて弱気になるなど、私が許しませんわ!!」
その特徴的な声と喋り方が、後方から旬を突き刺した。
「お嬢様……、真紀奈様もご一緒で……」
「マキナっ……?」
後ろを向くと、確かにそこには下を向いて制服の裾を握りしめているマキナが居た。
「そこの旬さん!よくも真紀奈さんにあんなひどいこと言えましたわね!」
「えっ、なんで知って……」
「あなただけ自分1人で我慢して抱え込むなんて、目の前でされたら真紀奈さんがあまりに辛いと想像できませんの!?」
公園の柵から精一杯身を乗り出すようにして、旬に叫ぶ。
「……」
「……ペトラちゃん、もういいよ。旬くんをそんな責めないであげて欲しいのです」
「マキナ……」
マキナは、公園の入口から旬の座るベンチまで歩いてきた。
「旬くんが、私の力になりたいって言ってくれたから、私すごい嬉しかったの」
口元を震わせながら、マキナが喋る。
「でも、クラスでひとりぼっちで、私を見てるばっかで、ずっと辛そうなんだもん……」
「……」
旬は、マキナを見ている時、ずっと考えていた。
自分が不要なんじゃないかということを。
マキナにとって、自分は足でまといなんじゃないかと。
ドローンに殺されそうになった時、エクスに殺されそうになった時、それを反芻して、反省して、マキナの足でまといになりたくないと願い続けた。
「私のことを思ってくれるのは嬉しいよ。でも、あんまり1人で我慢するのはやめて欲しいのです」
その結果、マキナの為を願うのではなく、自分がいかに足でまといにならないかを考えるようになってしまった。
それは、仲間になりたいから背く、反対の考え。
でもそれを無意識で考え続けるのは、あまりにも苦しくて、辛くて、怖い。
マキナの欲しいことは、それじゃない。
「ごめん……。ほんとごめんな」
「私が欲しいのは、旬くんが一緒にいてくれることなのです……」
「ほんと……。ごめん……」
旬はマキナを目の前に、初めての涙を溢れさせてしまった。
あんまりにも自分が情けなくなって、マキナへの感情が溢れて、ペトラとミカの優しさに感動して、涙が止まらなくなった。
ひとのやさしさ。
旬が感じた、初めての気持ち。
いままで自分を包んでいたのは、なにも茨の紐だけではないことに気づいた。
それは、温かい、光のような心。
「さて、わたくしの役目はこれまでですわ。また明日学校でお会いいたしましょう。お2人とも」
「ほんと、ありがとうごいましたっ……!」
震える声で、ペトラたちに感謝した。
「ふふっ。行きますわよ、ミカ、アン」
3人は、音も立てず、暗い街並みにふと消えていった。
「私たちも帰らないといけませんね」
「うん、帰ろうか」
隣の家からカレーの匂いがしてきて、お腹が鳴った。
○
「色々と買い物しないとな……。携帯、布団、それと……」
「これを解析するための機械ですね」
「それ、マキナが持ってたんだったな」
マキナの手にあるのは、あの蜘蛛の装置。
鈍く赤に光っていたのが、完全に停止している。
エクスから剥いだ蜘蛛は、未だにマキナが服に仕込んで管理している。
「エクスがこれの事を、アラクネと呼んでいました」
「アラクネ……。なんだか不気味な響きだな」
「そうですか?美味しそうじゃないですか?」
「いや何が?」
「あら~、くねって感じで」
「いやわからんが……。そういえば、マキナはアラクネがささったりしないのか?」
公務ドローンを、外部から取り付けるだけでハッキングしてしまう恐怖の装置。
どうやって取り付くのかも不明だ。
「試してみたんですけど、どうやら私のことを機械だって認識してくれないみたいで……」
「有機機構みたいな、複雑すぎるシステムには干渉できないのか」
「それも解析してみればわかると思うので、その時までの楽しみですね!」
旬は、MIA研究員を父に持つ。
その父譲りな工学系の才能は発揮される場所が限られるが、こういった解析などは旬の得意分野だった。
「学校のロボット大会ぐらいの実力だから。あんま買いかぶりすぎないでくれよ」
「でもあれって、かなり競争激しいみたいじゃないですか」
「そうなのかなぁ」
旬は1度、気になって受けてみたロボット競技大会で、1人のエントリーで優勝している。
「私も詳しくないので分かりませんけど」
「まぁ、やれるべきことはやってみる」
「あ、もう家着いた。割とペトラちゃんの家と距離ないですね」
「意外と近いんだな」
「私なら10秒ぐらいでいけます」
「羨ましいよ……」
マンションは、瞳の生体認証で鍵を開けることができる。
生体認証を通過できないと、マンションの建物の中にすら入れないため、割と鍵をかけてない家も多い。
旬の家もそうだ。
「ただいまー」
相変わらず殺風景な部屋だ。
「なんか、ペトラちゃんの家を見たあとだと悲しくなっちゃうのです」
「しょうがないだろ。これも父親に維持してもらってるんだし」
「そういうことじゃなくて、埃とかちゃんと掃除しましょうよ」
「あー、はい。ごめんなさい」
「ふん」
玄関には、2人分のローファーが綺麗に並べられた。
「ニュース見なきゃ……」
携帯を開き、報道のニュースフィードを確認した。
「まだ議事堂のデモ続いてるんだって、怖いよな」
「暇なんですね」
「個々の正義があるんじゃないか?」
「旬くんでいうところの私、みたいな?」
「全然違う。全く違うから」
「ちぇーっ」
もう少しスクロールしていくと、
『ドローン整備所の全公務用ドローンを点検完了。謎の暴走の原因分からず』
「分かるわけないよなぁ。原因が自分から逃げてっちゃうんだから」
「エクス、今頃なにをしてるんでしょうか」
窓の向こうを見ながら、マキナが言う。
今日の空は少し澄んでいて、うっすらと星が見えた。
「……テロじみたことはごめんだな」
「ほんとですよー。昔はもっと可愛かったのに」
「あいつの見た目の歳って俺らとあんま変わらないぐらいだよな」
「そうですね。5歳ぐらいの時は可愛かったですよー」
「じゃあエクスって、俺が呑気に学校行ったりとかしてる時期に戦争に駆り出されてたってわけか……」
「そう、なりますね」
「……」
沈黙が続いた。
「さて、ご飯にしましょうか」
「って何も買ってきてないけどな」
「毎日コンビニでご飯買ってるってペトラちゃんに言ったら、すごい哀れんできて、『あとでいっぱい食材をとどけますわね!』って言われましたけど」
「えぇ……、ペトラさんに至れり尽くせりしてもらって申し訳ないなぁ」
「あとそれと……」
わざとらしく旬から目を逸らして言う。
「顔が似てると、言われちゃいました」
「全然兄妹じゃないけどな。そんな似てるか?」
「……あれ?もしかして、車きてます?」
「ほんとだ、なにあれ」
マンションの近くに、黒い車が止まった。
おそらく、マキナの言っていた食材の件だろう。
そして間もなく、宅配のブザーが鳴る。
「来たらしい」
「行きましょ!」
旬のマンションは、宅配の場合1度マンションの外に出なければならない。
だから、マキナと旬で共に部屋を出た。
すると、マンションの外で運転手らしき男とペトラが立っていた。
「ほんとうに申し訳ないです。ここまでしてもらって」
「全然いいですわ!お父様から、下々の民を助けるようにと教えられていましてよ」
「とかいって、本当は旬くんに元気をつけさせて欲しいって言ってましたよ」
「……ということで、ダンボール2個、置いていきますわよ!」
ふんと勢いよく振り返って、そのままこちらを見ることも無く運転手と共に車に乗ってしまった。
「照れ隠し、だな」
「ほんとに優しいんですよ。ペトラちゃん」
よく見ると、車の中でその小さな手を振っていた。