~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「うへぇ、混んでる」
「新宿は相変わらず人だらけだなぁ」
今日の新宿駅は、普段の休日より一段と人が入り乱れている。
コンクリートで覆われた狭い空間に大量の人が行き交う様子は、はるか昔から変わらないらしい。
「人混み苦手なんですか?」
「得意な奴なんているのか?」
今、電車の席に座って、ある程度人が降りるまで待っている間待っている。
「私は……、得意……」
「じゃなさそうだな」
「だってバカみたいじゃないですか!場所を移動するだけなら建物の上走って行けばよかったんですよ!」
「声でかいし、普通の人間は無理だぞ」
「ほんと情けないのです」
「ほら、降りるぞ」
旬は席を立ち、マキナへ手を差し伸べる。
「はい!」
それを取って、マキナは微笑んだ。
○
駅の中は暑くて、パーカーの中が蒸されてしまう。
汗を気にしながら階段を登り、旬は携帯でペトラと連絡をとった。
昨日の放課後、この日のために旬とペトラは連絡先を交換しておいたのだ。
「ペトラさんは、新宿駅で合流するって。東口から来るらしい」
「……」
マキナは、構内図を眺めている。
「こんなの、初めて見ても理解できないだろ」
「……そうですか?私は分かりますよ。あっちですよね、東口って」
「よく分かるな。俺は新宿の構内図、未だに理解できないよ」
「やーい」
「うっせ」
2人は、うなだれるような人の群れにまぎれながら、東口の前へと移動した。
「ほんっとに人だらけですね……」
「慣れろ」
「もう!旬くんまで加担しないでくださいよ!」
「ほら、あの黒いスーツの人と一緒に居る人、ペトラさんじゃ?」
「あっほんとだ!ペトラちゃーん!」
その声がちゃんと聞こえたのか、改札の向こうにいる少女は手を振り返している。
学校でのペトラは縦ロールの特徴的な髪型だが、どうも今日のペトラは違うらしい。縦に巻いてあった髪は、長く後ろに下ろされている。
金髪に低身長というだけで、見つけるには困らないが、旬が一瞬誰だかわからなくなるほどその雰囲気は異なっていた。
「……でもペトラさんっぽくないよな」
「いつもと雰囲気違うのです」
少女は、改札を通りこちらへ向かってくる。
「2人ともー!ごきげんよーう!」
歩きながらこちらへ挨拶をした。
「こんにちは」
「こんにちは、ペトラちゃん!今日も可愛いですね!」
「あら、ありがとうですわ」
下ろした髪に、上品な白のワンピースの姿で現れたペトラに、普段とは少し違う印象を受けた。
「ペトラさん、あっ。……ペトラ」
「そうですわ。ペトラさんって呼ぶのはやめてくださる?」
「気をつけます……。それで、ミカさんとアンさんは?」
この3人以外にも、あと2人、ペトラの従者も来る予定だ。
「2人ならもういますわよ」
「「お嬢様、こんにちは」」
いつの間に来たのか、ペトラの後ろにあの2人が既にいた。
「うおっ、いつのまに」
「私は気付いてましたよ」
「私ども、お嬢様が着くまで物影で待っていましたので」
2人とも、メイド服に似た黒のワンピースで身を包んでいる。
ペトラの高貴な雰囲気と、外国人らしい容姿でメイド服の違和感は完全にかき消されていた。
「こんにちは。おふたりとも」
2人は同時に、お辞儀をした。
「なんでマキナは気付いてんだよ……」
「見栄えがいいからって、2人は従者になってからずっとこうなのですわ」
「そうなんですね。メイドというより、忍者っていうか……はは、すごいですね」
旬は、マキナとペトラ、そして2人のメイドにという異様な面子に、圧倒されてしまった。
苦笑いをして、場を流すことしか出来ない。
「今日は、何処へ行くのでしたっけ。わたくし、外へお出かけすることはあまりなくて、そういうのには疎いのですわ」
「ゲームセンター、なのです!」
「ゲームセンター!初めてなのですわ!」
「私も初めてです!楽しみなのです!」
マキナとペトラのタッグは、どうやら本当にマッチしているようで、2人とも本当に楽しそうだ。
「……旬様、どこのゲームセンターへ行くご予定なのですか……」
ミカは、横からさりげなく旬へ話かけた。
「いや、とりあえず新宿の近くでいいかなと思ってたんですけど、何か変えた方がいいですかね」
「いい所しってますよ……」
相変わらず細々とした声を、旬にかける。
「意外ですね。ミカさんがゲーセン好きなんて」
「いえ、私ではなく……」
旬の目の前に、勿体ぶって立つ女性が居た。
その人は、ミカと同じ服を着ているように見えて、ミカの服でのスカート部分は、裾の広いモノトーンカラーのズボンであり、少し違っている。さらに上には短めのジャケットを着ているようだ。
執事服とメイド服の融合系のような見た目。
「ね、アン……?」
「アンさんが好きなのか!」
ミカと同じく、上めで髪の毛を結わっている髪型だが、長めであるミカと対照的に短めで、右目に前髪がかかっている。
真っ黒な髪から見え隠れする鋭い片目は、よく見えないが何か違和感がある。
身長はミカと同じくらいに高いが、髪型と声、服装から、ボーイッシュな印象を覚えた。
「はい」
低く、淡白な声音だ。
「ゲーム好きなんですね」
「そうですね」
「(だいぶ警戒されてる……?)」
その冷徹な反応に、旬は、アンにも自分が嫌われているのかもしれないと不安になった。
嫌われるのは慣れていたが、親しくなった人の身近な人となると関わる機会が増えるのだから、旬にとってはよりダメージが大きい。
「マキナ様からゲームセンターへ行きたいことは伺っていましたので、アンにその事を相談して、提案してもらったんですよ……」
「へぇ、そうなんですね。俺もゲーセン行かないから、助かるな。ありがとうございます」
「まぁ、はい」
こちらと、目も合わそうとしない。
「あの……」
ミカが、旬の耳に口を近づける。
すこし背伸びをして、耳をその白い手で覆った。
「少しアンは初めての人が苦手なので、多めに見て欲しいです……」
「(そうだったのか……)」
心の中で、旬はほっと胸を撫で下ろす。
「なに、ミカ」
少し威圧的な言い方だ。
「ううん、何でもないよ……」
「ならいいけど」
その後、旬はマキナとペトラへ池袋へ行くことを伝え、5人で駅のホームへ向かった。
「電車に乗るのは、すっごく久しぶりですわ!」
ホームは改札付近に比べると人が居らず、みんなほっと息をついた。
灰色の汚れた柱が、外の輝かしい天気にコントラストとなって映える。
「へへん、私はおととい乗ったのです」
いつも通り、マキナは胸を張って誇らしげな顔をしている。
「あら、見目さんのお家とわたくしのお家って結構近いのですわね」
「電車に乗らなくても歩きで行けるらしいね。俺達も歩きで学校行ってるけど、ペトラもそれくらい近いはずだよな」
「わたくしの場合は、車で登下校でないとダメだと、家の者が聞かないのですわ」
「でも、ペトラってミカさんとアンさんで一緒に帰ってるよな。しかもあっちの方向って駅じゃないし」
「ミカとアンは、わたくしの家で雇っているのですわ。車での送り迎えなど、福利厚生もしっかりしてますのよ」
「それは凄いな……」
ミカとアンの2人は、本当にペトラの家で雇われている本物のメイドであるという。
ミカの話を聞いてやんわりと事情は知ってはいたが、ペトラの口から言われたことで本物のメイドであることが証明された。
どうりであんな本格的な礼儀作法を身につけているわけだ。
「お、電車が来たぞ。マキナ、1番に乗れ」
後ろから前にいるマキナへ声をかける。
5人の列はマキナを先頭に、マキナ、ペトラ、アン、ミカ、旬という順番だった。
「はーい!」
「旬様、真紀奈様の扱いに慣れていらっしゃる……」
「言った通りでしょう。マキナは変わってる」
「先日話しましたが、凄く明るいお方で、お話してて楽しかったです……」
「マキナが、他人に合わせている……」
ミカとマキナは、ほぼ正反対のポジションの存在なのに、2人は協調しているらしかった。
マキナの教室の感じからみて、相手とマッチしないと消極的になってしまうように見えたが、ミカのような感じの人とも仲良くすることが出来るようになっている。
マキナは、協調性までも身につけたのか。
「いや、ないな」
「ん?旬様、何か良いましたか?」
「ああ、独り言。ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらず」
そのまま、5人で電車に乗り、池袋まで向かった。