~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
電車内にて、5人は扉付近に立って揺られながら池袋へ向かっていた。
「にしても、なぜ真紀奈さんは制服ですの?普段着は持ってらっしゃらなくて?」
「それは、いままで服を買ったことが……」
「いや!最近ここに引っ越してきて!服とかが届くの来週で!」
旬は必死に話を遮った。
「そうでしたのね。真紀奈さん、制服だと息が詰まりません?」
「いえいえ、大丈夫なのです」
「それはよかったですわ」
「(ふぅ、丸く納まった)」
当然旬も、登校日以外のときに外に出るため、普段着を持っている。
だが、女性用の服は流石に持ち合わせていない。
あのダンボールの中にも、家中を探しても、マキナの服は見当たらなかった。
「そうだマキナ、服も買おうか」
「えっ!いいのですか?」
「いいですわね!私もみたいですもの」
すると、電車のスピードは緩やかになり、
「……まもなく、池袋、池袋、お降りのお客様は……」
どうやら、着いたようだ。
「さて、もうすぐですわね……」
「緊張してるんですか?お嬢様」
「いいえ、わくわくしてるのですわ。私、冒険は好きでしてよ」
電車は完全に止まり、その後扉も開いた。
「おっ、開いた」
「行きましょうか」
5人は塊になって、電車を後にする。
○
駅から出た空は雲ひとつない快晴で、肌がじりじりとする感覚に襲われる。
池袋を歩くマキナの顔も、それに似ていた。
休日の池袋の街は活発な空気で溢れていてるかと思いきや、無気力そうな顔をしてぞろぞろと歩く人ばかりで、今日の晴れ晴れとした気候と釣り合わないような気がする。
「アンさん、ゲーセンはどこに?」
「着いてきてください」
池袋の主な通りから外れ、人気のない方へずんずん入っていく。
閑散とした街並みは、エクスと戦ったあの日の新宿を思い出す。
辺りには、『駐屯基地』と書かれた看板がよく立っていて、その文字の上にスプレーで落書きされているのが、ここの治安の悪さを物語っている。
「ほんとにここで合ってるんですの……?なんだか怖いですわ……」
ミカの手に張り付いているのは、肩を震わせて怯えるペトラだった。
まるで母親のような顔つきでペトラを見るミカが、微笑ましかった。
「大丈夫だよ」
マキナが居るから。
「さっきまでとだいぶ雰囲気変わりますね」
マキナが退屈そうにあたりを見回している。
「まだですかー?」
「ここです」
すると、そこは地下へと通ずる階段。
明らかに、マキナが言っていたのとは異なった雰囲気を醸し出している。
もはや、ゲームセンターというよりダンジョン。
「えー、なんですかここ」
「ゲームセンターです」
「本当に怖い人はいらっしゃらないのですよね……」
「大丈夫だって」
マキナが居るから。
「アン、少し不安だけど。大丈夫……?」
「大丈夫。怖い人いるかもだけど」
「怖い人!やっぱやめにしましょう!」
ミカの腕にまだ縋っている。
首を激しく横に振り、すこし目も赤くなっているのが分かる。
「ペトラちゃん。大丈夫なのです。悪い人間がいたら蹴飛ばしてやるのです」
「心強いけど、蹴飛ばすのはダメですわ……」
「まぁ、合わなければ出ればいい話です」
アンは、つかつかと狭く、暗く、じめっとした階段を降りていった。
「まぁ、アンが何とかしてくれるわ……」
と言って、マキナとミカ、その双方の腕を肘で持つペトラが階段を降りていく。
旬もこれに続いて、階段を降りていった。
「アンは、あの事件以降ずっと鍛えてますもんね……」
「ムキムキなのですわ」
「(ムキムキなのか……)」
意外な情報に面食らいつつも、ペトラ一行はかなり長かった階段を降りきった。
『Game house HEAVEN』
「このドアです」
絶対に似合わないであろう上品なフォントで書かれた看板がついた黒い扉を、躊躇なくアンは開けた。
すると
「わぁ……」
「凄いな」
中はとても広く、まるでそこは『ゲーム天国』。
ビビッドカラーの綺麗な内装に、アーティスティックな絵が直接描かれている巨大な1つの部屋。
様々なゲーム機があり、たくさんの人々がそこで娯楽を楽しんでいる。
旬はてっきり、外の閑散ぶりからヤンキーのたまり場のような場所を想像していたが、それとは大きく異なっていた。
「メダルゲーも、格ゲーも、音ゲーも、全部あるぞ……」
「熊がいないのです!」
「お?誰か呼んだか」
その聞きなれない声は、すぐ横から聞こえた。
「ひっ!怖い人ですわ!」
「違いますよ。この人はクマさん。ここのオーナー」
「あら、そうですの。申し訳ないですわ!」
カウンターの後ろの席に座っているのがクマさんという男らしい。
クマさんは、かなりガタイのいい大男。
迷彩柄のバンダナを巻いているが、そこから髪はもれ出していない。
綺麗な直線を描くそれを見るに、どうやらスキンヘッドなのだろう。
「熊さんじゃないですよ。熊さんはもっと可愛いです!」
「違いますよ……、クマさんっていうお名前の方です……」
「おうおう、また来たのかい嬢ちゃん。友達も今度は一緒か」
カウンターの後ろに何故か飾られてあるライフル銃がやけに似合う風貌だ。
「すみません。お邪魔でしょうか」
「全然いいよ!最近は常連と泊まりしか居ねぇしな!ガハハっ!」
泊まり、というワードに違和感を覚えた。
「泊まりってなんですか?アンさん」
「……」
「(無視されちゃったよ……)」
「おう、兄ちゃん!泊まりっちゅうのは、あれ、奥の部屋」
クマさんは大きな体をカウンターから乗り出して右側を指した。
右側を見ると、無数のゲーム機が並べてあるその最奥に何やら大きな扉がある。
「あそこにはな、少額払って長期で泊まれる宿泊所が付いてる」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「……」
何やら、アンが苦い顔をしていた。
「……?」
「さて!遊びましょう!……」
「ひぇ~~っ!……」
その間にマキナは、1人で奥へペトラを引きずって行ってしまった。
「行ってしまわれましたね……」
一応マキナには、今日のことを意識して財布を持たせているから大丈夫だろう。
といっても、後日MIAから送られてきた父親名義のクレジットカードが入っているだけなのだが。
「私達もついて行きましょうか……」
「うん、行きましょうか。……アンさん?」
「……」
アンは、旬たちを無視してさっき言われた宿泊施設まで進んで行った。
「何かアンは、ここに事情をかかえてるみたいで……」
「あまり詮索しないでおきます」
旬とミカも、マキナ達に続いた。
○
「なんですの!これ!光るピアノみたいですわ!」
「やってみましょう!……あ」
マキナは、ブレザーの中に入れたカードを触って顔色を変えた。
「どうしたんですの?」
「私、小銭ありませんでした……」
「あるぞ。ほれ」
旬は、マキナに向かって小銭を放り投げた。
事前に、どうやってゲームセンターで遊ぶのかをマキナとシュミレートしてきた甲斐があったものだ。
「ありがとうございます旬くん!」
「……コインをここに入れて遊びますの?」
「らしいのです」
彼女らが選んだのは、オーソドックスな縦スクロール型のリズムゲーム。
ピアノを弾くように手を動かして、リズムに合わせて降りてくるエフェクトを叩くというものだ。
2人はコインを同時に入れ、ゲームが始まる。
「……イージー、ノーマル、ハード、マスター……?。まぁ、マキナちゃんは1番難しいのがいいのです」
「わたくしも同じにしますわ。わたくし、ピアノはやっていましてよ!」
マキナはマキナ、ペトラはペトラらしいと言った反応だ。
『GAME START』
物凄い勢いでエフェクトが降ってくる。
「なんですかこれ?これが難しいのですか?」
それを難なく全て完璧なタイミングで叩くマキナ。
「なんですのこれ!全然ピアノじゃないのですわ!」
それを為す術なく、必死で拙い手さばきを使って辛うじてこなすペトラ。
ゲームプレイのやり方で、2人の違いが明確に分かる。
1曲目が終わり、ペトラがヘトヘトになってゲーム機によりかかる。
「難しすぎますわ……」
「へへん、マキナちゃんの勝ちなのです」
「どうして出来るんですの……」
「マキナちゃんは凄いのです!」
「ほんと、凄い、ですわ」
「あっ、危ない……」
ミカがすっと手で受け止めなければ、ペトラはそのまま倒れていた。
「……お嬢様は少しバテやすいんですよ……」
「はひぃ……」
そのまま抱っこからおんぶへと形態が変化し、本当に母と子のように見える。
「私はいいので、旬様がプレイなさって下さい……」
「わかりまし……」
突然、旬を肩でどかし、アンがゲーム機の前へ立つ。
「うおっ」
「……私がやる。ミカ」
ミカへ振り返ることも無く、そう言った。
「さっきから旬様にあまりに酷くない……?」
「ミカ、あんたうるさい。……でも1番うるさいのは」
マキナの顔を、その鋭い目で睥睨した。
「あんただよ、見目真紀奈」
「……へ?」