~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
旬は、冷たい事務机に張り付けられた時に考えた。
なぜ、アンがここまで強いのか。
宙返りし、身体捻りながら、旬の弾丸を見ずに回避。その後強烈な蹴り頭に狙って放つその身体能力。
もはや、人間技ではない。
しかし、これが常人の身体能力に合わせられた結果だというのもおかしい。
マキナの身体能力がそのまま引き継がれていれば、あの蹴りで逆立ちすら出来ないほどの風圧が出来てもおかしくないからだ。
しかし、アンは現実と同じ身体能力を引き出せている?
違う、逆だ。ゲームだから強い。
このゲームの目的は恐らく、戦術ではなく、自分に戦場を認識させること。
だから、ここが命を賭す戦場だということを理解し、生き残るために身体を必死に動かすことが出来れば、常人以上の力を引き出すことができる。
『SURVIVE』
まさに、アンのように。
あの動きは、この戦場に自分がいると思い込み、必死に生きようと思えるからこそなせる技。
旬のゲームとしての接し方では、このアンに決して勝てない。
「ここで殺らなきゃ、殺される……」
エクスと戦ったことを思い出せ。
あの時の、生きることに必死になれた自分を思い出せ。
戦場を、生きろ。
戦場に、生きろ。
「俺も、マキナも……殺させない!」
「なっ」
すぐさま旬は立ち上がり、アンに向かって走り始めた。
アンの銃を持ち、相手の身体を自分の身体に押し当てた後も、そのままの勢いで前へ前へと突っ込む。
「割れろ!」
そのまま、2人は窓ガラスを打ち破った。
窓ガラスを破った勢いはとてつもなく強かったのか、そのまま向かいの建物へ衝突した。
まるで、ひとつの銃弾のように建物へとめり込む。
「かはっ」
アンが目を大きく開いて、旬を見る。
髪で隠れていた片目の正体は、白い虹彩。
コンクリートの霧に包まれながらも、その旬を見つめる眼はそれを貫通した。
しかし普段の旬なら戸惑うだろうその状況を、その時の旬は呆気なく飲み込み、すぐさま次の動きへと繋げる。
「俺たちが生きるんだ!」
旬はめり込んだ勢いのまま、銃をアンに突きつける。
銃口を、腹部に直接当てた。避けられないように。
「いや、違う」
「なっ」
壁が崩れたことによる砂埃で見えていなかったのだ。
いや、興奮で気付いていなかったのかもしれない。
アンの手は、コンクリートが崩れたことにより露出した鉄筋に捕まっていた。
「ミカ、撃て!僕ごと!」
マキナの掃射でやられたかと思ったミカは、全く平気そうな様子で狭い路地から銃口を向けている。
「OK、アンリエル」
まずい、この距離じゃ避けれない。
お互い、マシンガンの蜂の巣に。
無理をして握ったせいなのか、アンを掴んでいる手が離れない。
「(離れろ離れろ離れろ……)」
旬は、アンから目線を逸らして自分の手を憂う。
「だから弱いんだよ」
「なっ」
その瞬間、手を振って無理やり離したのはアンだった。
壁につかまるアンは口角を不気味に上げて笑い、落ちていくこちらを見ている。
「死ね、雑魚」
ああ、やってしまった。
このゲームでは、戦場に入り込むことも大切。
しかし、命を憂うあまりに敵を疎かにしてしまったのだ。
SURVIVEの意味は、単に命を守るために戦えという意味ではなかった。
相手に殺される前に殺す。
自分が殺される前に目の前の相手を殺す。
もう気付いても遅い。
「また、足でまといに……」
「私が、守る!」
旬が落ちた瞬間、後ろが光ったように感じた。
その光は、あのライフルのマズルフラッシュ。
「はっ」
旬ははっとした。
後ろから無数に流れてくる鉛玉が上を通過するのが見えたからだ。
それは、あの部屋に残っていたマキナからの弾丸。
「ちっ」
「落ち込んではダメです!相手はそれを狙ってます!」
「はっ」
旬は、空中に任せられた身にもう一度、力を入れた。
すると、見える。
こちらではなく、着地地点を狙うミカの銃口が。
身体を回転し、逆さにすることで着地した瞬間に動けるよう準備した。
これは、もう一度命を諦めないと誓った旬の機転。
そして、手と片手に持った銃が地面に触れる。
「ファイア!」
ミカの弾丸は、旬のことを待っていたかのように放たれた。
「んなっ!」
しかし、それは旬の肉ではなく、砂煙のみを引き裂いていった。
「見えてるよ!」
旬は、逆さに着地した瞬間その手を地面につき、もう一度空中へ戻る。
このゲームは、最初の1人をいかに早く殺すかという競技。
1人を倒せば、もう1人は勝ちようがない。
2人に一斉に狙われれば、いくら認識による身体の強化があるとはいえ勝ち目は無いに等しいだろう。
いかに早く戦場に入り込み、いかに早く敵を倒すかというこの競技では、旬がここで死なない事に大きな意味がある。
ミカの判断のラグを起こし隙を晒させたことと共に、旬が死ぬというリスクを回避したことでマキナへかかる負担を一気に減らした。
「マキナ!今だ!」
「分かってますよ!」
マキナの弾丸は、あらわになったミカの身体を確かに貫いた。
1発、2発、そして数えられないほどの鉛玉がミカに撃ち込まれる。
「ああああっ!」
ミカの身体には、赤く光る風穴が腹部に大きく開けられていた。
「くっ。ここまでです……」
その後、旬も空中から地面へ足をつけて手に持ったピストルを構える。
「お前も終わりだ!」
「そうですよ!もう変な逆立ちしないで欲しいのです!」
窓から飛び降り、マキナはすぐさまアンの所へ駆けつけ銃を向けた。
「はぁ」
アンは、銃を投げ捨てる。
「悪い、アン」
「ふっ、気付いてるくせに甘いの、やめなよ」
それに答えるように旬は口角を上げ、頭に向け引き金を引いた。
籠った銃声と共に薬莢が飛び出、アンは頭を仰け反らせ倒れた。
するとミカとアンの死体は光る赤い塵のようになって風に消えていった。
「やりましたね!へなちょこでしたけど」
「うるさいな。悪かったって」
旬とマキナは、互いの手を高く上げて互いに叩いた。
「にしても、ゲームに対しての認識で能力が変わるなんておかしな仕様ですよね」
「な、でもそれがなきゃ2対2の市街戦なんて、クソゲーになっちゃうだろ」
「何か理由があるんですかね?」
「戦闘にのめり込むと、能力が上がる人間……」
「まぁ分からないですし、疲れたから終わりたいです」
「だよな、なんで終わんない……」
そう言った瞬間、大きな音と眩しい光と共に、旬たちの目の前へ巨体が現れた。
それは、スタート地点に居たゲームマスター。
「デウス、エクスマキナ……」
「うわっ!怖いやつ!」
『WIN』
その無機質で無表情なフォントが、不気味さを覚えさせた。
「こいつ、なんで私と同じ名前なんですか?嫌なんですけどー」
「偶然だろ。マキナさんなんて日本に居るだろうし」
「こいつと一緒は嫌ですよー」
「まぁまぁ」
「早く戻して下さいよー!デウス!」
そう言って、旬の方向を見た。
「俺じゃなくて、こいつに言えよ!」
そして時間が経つと、辺りが徐々に光で包まれていった。
〇
「はぁっ、疲れた」
ヘッドギアを外すと、2人は薄暗い鉄の箱の中に居た。
「……旬くん」
「なんだ?」
「結局、2人で寝ちゃいましたね」
「寝たってわけじゃねぇだろ……」
起き上がり、解錠されたドアを開けて外へ出た。
外へ出ると、身体の重力がままならないような、ふらつくような感覚になった。
恐らく、エニグマの中にいた時と感覚が違って、身体が困惑しているのだろう。
「うわっ、ふらふらする……」
「弱いですねー」
「普通の人間はそうだから!」
すると、箱の裏の方から2人も出てきた。
「ちょっと寝ちゃってました……」
「早く起きてよ。ほんと」
2人がお互いを見ながら、仲睦まじい様子で話している。
気づいたのか、アンがこちらへ向かってきた。
「ねぇ、いつから気付いてたの?」
「アンさんに蹴られて、机に這いつくばったときかな」
「へぇ、不思議。ドMなんだ」
「違いま……」
「そうですよ」
「違うから!」
腰に手を当て、こちら、主に旬を、汚物を見るみたいな目で見てくる。
「兄妹に手を……」
「ほんとに違う!」
「まぁいいや。このゲーム、いっつも戦術理論とか、立ち回りでどうこうとかいう人達ばっかだから、君たちが初めてだよ」
「マキナちゃん、偉いですか?」
「ちっ、黙れ」
「スン……」
なぜか、マキナに対しての当たりがとても強い。
「そっか、僕たちがなんでメイドしてるのか、知ってるからか」
確かに、あの時旬は、アンがあそこまで身体能力が強くないことを確信していた。
仮にそうなら、いじめられていた過去は無いはずだからだ。
「ラッキーだったな」
「でも、詰めは甘いけどね」
アンは、先程より旬に対して柔らかい対応だ。
だから気付けば旬もそれに乗せられて、敬語を外していた。
「ねぇ、ちょっとあんた」
急にマキナへ詰め寄るアン。
「ひぃっ!」
「あんた、何企んでるの?」
「えっ」
「いい加減白状しなよ」
旬に話す声音より数段低い、唸るような声。
いまにも、マキナに噛みつきそうだ。
もしかして、マキナの正体に気付いたか?
「なっ、何を言ってるんですか?わっわっ、私は何も隠してなんて……」
「お嬢様を盗ろうとしてるんでしょ」
「「……へ?」」