~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「嬢ちゃん、なんかあったのかい」
「いや、ただ私は……」
「ちっこい嬢ちゃんと話してたけど、なんかお前らしくない話をするもんだから驚いたよ。メイドしてるんか」
「ちがっ、それは嘘だから」
そっぽを向いて、その顔をクマに見せない。
「隠すなって、嬢ちゃんらしくないよな。人の下に立つ仕事なんて。」
「仮にそうだとしてなに?文句?」
「孤狼の隻眼、だっけか?そんなやつがメイドっ」
クマは口に手を当て、わざとらしく笑った。
目を逸らして、アンは顔をすこし赤らめさせた。
「それがなに?勝手に外野が言ってるだけじゃん」
「ガハハ!かっこいいじゃねぇか」
そしてクマは、豪快に笑った。
「バカバカしい。ダサいよ」
「そんなふうに呼ばれちまうほど、1匹狼気質のお前がお友達と仲良くするなんて、珍しいじゃねぇか」
「……僕は多分」
ふと後ろを向き、アンはリズムゲームが並ぶ方へと歩いていく。
「お嬢様が好き」
〇
4人は、駅中のカフェで時間を潰していた。
4人のテーブルには、対向に並ぶアイスコーヒーが2個、クリームが大量に盛られたフラペチーノ、そしてホットミルクが置いてある。
「曇ってきましたね……」
窓の外を見ると、青一色だった空がその面影を残しつつも、灰色の雲に侵食されつつあった。
「雨が降ったら厄介だなぁ」
「んーっ、最高すぎます……」
マキナの持つカップの大きさは、ペトラのホットミルクの2倍ほど。
上にはめられたプラスチックの蓋を取り外し、山盛りのクリームにかぶりついている。
「行儀悪いぞ」
「お気持ちはわかりますわよ、真紀奈さん」
「んーだってー、美味しいんですよ?駄目なんですか?」
「貸しな」
「ん?いいですけど」
マキナは、首を傾げながら旬にカップを渡す。
すると、旬は徐にカップに刺さったままのストローでクリームをかき混ぜた。
「あー!何やってるんですか!」
「……お前、口の周りにクリームつけて街中歩くつもりか?」
「それは、ペトラちゃんのハンカチで……」
「図々しいにも程があるっ!」
そういってカップに蓋を取り付け、マキナの前にそっと置いた。
「お気持ちは分かりますわよ。わたくし、そういう飲み物は、クリームを溶かす悲しみまでは味わいたくないと思った時から、飲まないのですわ」
「お嬢様、オトナです……」
「ふんっ、アルバート家として当然ね」
「(……オトナなのか子供っぽいのか)」
本当に大人っぽいところもあるのが、このお嬢様の困ったところだ。
「……こういう時、アンなら本気で褒めてくれるのに、いないと寂しいのですわ」
手を前で合わせ、肩を縮こまらせた。
「ん?私は本気で……」
「褒めてないのは知っていますわ。でもアンは結構本気ですわよ」
急に真顔になって、ミカを見た。
「バレてたんですか!?」
「バレてないとお思いでしたの?」
「うう……。ごめんなさい……」
「いいですわよ。ミカ」
そういって横にいるミカの頭を、精一杯の座高と腕で撫でている。
大人っぽいのか、子供っぽいのか……。
「飲み終わったらアンを迎えにいこうか」
「もうちょっとこらしめた方が……」
「わたくしからもお願いですわ」
「んんっ、わかりました……」
ミカも、本当のところはペトラに弱かった。
「(ちょろいな)」
「私もう飲み終わっちゃったのですが……」
「えっ、まじ?」
「まじ」
〇
4人はカフェでの喫茶を終えて、店の外へ出た。
そのころには昼に成されていた駅前の人の大群も見る影はなく、代わりにに空が黒くなっていた。
夜で黒くなっていたのではない、すこしグレー寄りの、雲の黒さだ。
「めっちゃ曇ってるね、天気予報もやばそう」
「早めにアンを迎えに行って、帰りましょうね……。まだゲームセンターにいるらしいですし……」
ミカが話している中、マキナは何故か遠くの方を真剣に見つめていた。
「マキナ、どうしたんだ?」
「……っ」
急に旬の腕を握り、引き寄せた。
「私たちは予定が出来たので、アンちゃんに会いに行けません。ごめんなさいなのです」
そのニコニコ顔を、2人の方へ向ける。
「……ごめんなさいね、真紀奈様」
「真紀奈さん、アンの無礼をお詫び致しますわ。だから……」
「別に怒ってるわけじゃないし、マキナちゃんでいいのです」
「真紀奈ちゃん……」
「真紀奈ちゃん。かわいいですわ……」
しんみりとした2人のことを置いて、その場を去ろうとする。
「じゃあ、行きましょ?遅れちゃいますよ?」
「あ、ああ」
旬の腕を握る力が強すぎて、骨の悲鳴が聞こえる。
「(クソ痛いんだけど……)」
「では、また明後日学校で!」
「ごきげんようですわー!」
「き、気をつけてな!……」
マキナに脅され、連れられるように、その場を後にした。
そのまま駅から遠ざかり、横へ曲って行く。
そして、2人の視線から死角になるよう、建物の間にある細い通路に来た途端、マキナの足が早くなった。
「ちょっ、まっ!」
「……まずいことになりました。アラクネの反応が、この近くに」
「っということは、エクス!?」
「それに準ずる何かかと」
マキナの足の回転は、どんどん加速していく。
「ちょっと!ちょっと足早すぎ!」
「引っ張りますよ!舌噛まないでくださいねっ!」
「えっ、ちょっ」
マキナは握っている旬の腕を持ったまま、大きく跳躍した。
「おぉ、高いですね」
その瞬間細い閉塞的な道に居たはずなのに、何故か上からの広い景色が見えた。
身体が思いっきり引っ張られて、物凄い強い重力がかかる。
「んぐっ!(死ぬっ!)」
宙に浮く感覚が気持ち悪い。
「……よっと」
「うわぁぁぁっ!……え?」
その空中旅行はすぐに終わり、着地したのは巨大な池袋駅の上。着地はとても丁寧だった。
「旬くんが弱くて、丁寧に着地しないと耐えられないからちゃんとしてあげたんですよ?」
「そりゃどうも、俺は人間だからな……げほっ」
旬は腹を抑えて、浮遊感の気持ち悪さを取り除こうとした。
しゃがみこんだマキナの片目は青く光っていて、どうやら地図情報を確認しているようだ。
「アラクネの反応、機関治安部隊の駐屯基地に大きなのがひとつ」
機関兵治安隊は、街での大規模なクーデターやテロが発生した時に派遣される軍用ドローンやオートマタの総称。
その治安部隊の基地は各都道府県に存在し、東京都の治安部隊基地のある場所は――
「豊島区……、池袋駐屯基地」
「ここからちょっと遠い、ちょうど……」
『駐屯基地』の看板にされていた落書きを思い出した。
「あのゲーセンの位置だ!」
「いや、違います。あそこの辺りは既に取っ払らわれている基地です。ですがその基地の移転先がそこから近過ぎる……」
「どちらにせよ、アンがやばいってことか」
「ええ、急ぎましょう。駅からそう遠く無いはずです」
〇
ペトラとミカに遭遇することを考慮し、さっき来た道を通らないようにしながらゲーセンの方向へ走る。
「はぁっ、はぁっ」
「急いでください!」
アラクネが機関兵隊に取り付けば、公務どローンの時の騒ぎでは収まらない。
池袋が、崩壊してしまう。
「絶対に止めないと!」
冷たい汗が、全身を覆うような感覚。
しばらく走ると、あの駐屯基地の看板が。
「ここを曲がればゲーセンが……」
看板の前を曲がってゲーセンの前に着いた。
「……はっ」
そこに広がる光景は、実に旬が最も恐れていた状況。
「……」
エクスと同じスーツを着た若い男が、アンの首を片手で掴み無表情でそれを見つめている。
筋肉質だが華奢な肉体に、短く切られた黒い髪。
その身体の胸には、アラクネらしき鈍い赤の光が完全に埋め込まれていた。
エクスの時とはちがって、完全に同化している。
「くっ……」
「アンッ!」
いやだ。殺すな。殺されたくない。
大切な人を、お前らに奪われたくない。
「……しゅ……がはっ!」
「……ん?」
その手をよりきつく締めたのか、アンがさらに苦しそうに悶えている。
「……くッ!」
「旬くん!?」
旬は無意識のうちに、男へ走り始める。
「……なに、人間?」
「やめろおおおおぉぉぉっ!」
そして、気付くと裸の拳を振りかぶっていた。
「ふんっ!」
それを振り下ろした瞬間、赤く光るアラクネに衝突する。
しかし、
「……なに?なんも痛くないんだけど」
男の無機質な、旬を見下す声。
「その子を……、離せ!」
男は、ビクともしない。
「……しゅ……やめ……」
掠れるアンの声。
「そうなんですね……」
そして後ろから、マキナの声が聞こえた。
「じゃあこれはどうですかっ!」
「……あっ」
後ろから飛び出したマキナの身体は、重力を失ったように回転して、旬の真上から男の顔へ渾身の蹴りを放つ。
「ふっ!」
あたりに突風が吹いたようにすら感じられる、マキナの蹴りの風圧。
その足の餌食となった男は、アンを手放し建物にめり込む。
物凄い轟音と、砂煙を吐く建物。
「アン!大丈夫!?」
旬はすぐさまアンに駆け寄った。
「けほっ……、大丈夫。少し首締められただけ」
旬はアンの身体に顔を近づけ、様子を見る素振りをする。
「いててて……、やってくれるなぁ」
男はコンクリートの砂煙が晴れると、おもむろに立ち上がる。
「でもいいや。この女をおとりにしろって言われてたのが省けたから」
大きく伸びをして、あたかも退屈そうにまで見える。
「久しぶりマキナ。兄妹の顔を忘れるなんて酷いじゃないか」
それを聞いた時、マキナの目が驚愕の色になった。
「はぁ……、忘れたくても忘れられないんですよ。デウス」