~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「よろしくお願いします」
「(俺のクラスなのかよ……)」
黒板には、端正な字で見目真紀奈と書かれている。
あたりは唐突なマキナの転入でかなりザワついていたのだが、マキナが入ってくるなりそのザワつきは静まることはなかった。
なぜなら、マキナの顔はとにかく眉目秀麗だったからだ。
「見目の苗字が一緒なので気付いてるだろうが、見目の親類なのだそうだ。突然な転入だが、ぜひ仲良くしてやってほしい」
マキナは段から降り、窓際最後列の旬の席の対向側、つまり廊下側の最後列に座った。
旬からは、マキナが周りのヤツに話しかけられているのが見えた。
「……真紀奈さんって、見目とどんな関係なの?」
「……部活どこはいるの?」
「……彼氏っている!?」
マキナの顔は至ってにこやかで、落ち着いていた。
「(やるなぁ。マキナ)」
普段誰からもチヤホヤされない旬にとっては、羨ましい光景だったのかもしれない。
頬杖をついてぼんやりと眺める旬の目は、ぼんやりとしていた。
一限、二限と旬とマキナは話すことなく時が流れていった。
三限、四限も終わったのだが、やはり転校生効果は偉大なのだろう。
休み時間になる度、マキナの周りに人が集まり盛り上がっているのだ。
旬は、少し取り残されたような気持ちになった。
その後、四限が早めに終わり昼休みに入って、旬がマキナがどうするか観察していると、マキナは旬に目線を送り手招きした。
「(なんだ?)」
旬は立ち上がり、廊下へ出ていくマキナについて行く。
マキナはそのまま、1階へ通づる階段を降りていき、踊り場の所で止まった。
「見目旬さん……」
「なんだい」
「学校って、超楽しいですね!!」
旬の目を見るマキナの瞳は、眩しかった。
「お、おう」
「旬さんも、いつも学校楽しんでるんですか?」
「いやぁ……どうかな」
とても気まずかった。学校が楽しいなんて、1度たりとも旬は思った事がなかったからだ。
「それにしてもすごいな。マキナの頭脳はAIなんだろう?」
「ええ、そうです」
「本当に、感情の起伏を再現しているのか……」
「へへん、自慢なのです」
彼女は腰に手を当て、自慢げに胸を張った。
「(こいつは、本当にロボットと言えるのか……?)」
そんな疑問が生まれるほど、マキナは人間としての機能が備わりすぎていた。
旬は、考えていた。
マキナが、人間なのかロボットなのか、その境界が曖昧になった時に起こる不和の影響を。
別にこいつがどうなろうと知ったこっちゃないが、もしこういったヒューマノイドが実用化されてしまったら、決していい事ばかり起こるわけではないだろう。と考えていた。
ここまで人間らしいとなると、人間とロボットの境界が消えてしまうのではとさえ考えられるからだ。
「今度みんなに自慢してこよーっと」
「馬鹿か。バレちまうぞ」
「あっ、そうですね」
○
昨日の夜の出来事だ。
旬がベッドに腰をかけると、
「じゃあ、おやすみ」
「私はベッドがいいです」
「ダメだ」
「だってベッドの方が気持ちいいのです」
「お前そんなのも感じられるのかよ」
「一緒でもいいですよ?」
「もっとダメだ馬鹿」
マキナの動作は、見れば見るほど人間らしい人間なのである。
ロボットやAIの不自然さやぎこちなさは、20年前既にほぼ無くなってはいたものの、ここまで進化している事に旬は驚愕していた。
「お前は、どうやって動いてるんだ?電源の確保とかは」
「私は、実際の人間の有機循環の機構を用いているのです」
「というと?」
「頭脳を働かせる少しの電力さえあれば何の不自由もなく動けるのです」
「どれくらい」
「70年ぐらいですかね」
「そこも人間と同じなのかよ」
「メンテナンスしないとキツイですよ。人間こことは尊敬してます」
「なんかいい気しないわ」
「えー、なんで」
対話も完璧、動きも完璧、感情も完璧。
こいつは、本当にロボットなのか?
「わかった。今日だけ、布団がないから掛け布団を床に敷いて寝て良しとしよう」
「やった!」
掛け布団を床に敷いて、クッションをその上に置いた。
これで布団と枕ということだ。
照明を消し、2人は床についた。
「……すみません。やっぱり私、厄介ですかね」
暗闇の中からするマキナの声は、ちょっぴり変わって聞こえた。
「そうだな、厄介」
「……」
「うそうそ、実際寂しかったんだ。普段誰もいないから」
「そうなんですね」
「白々しいな。さっき手紙勝手に見てただろ」
「ぎくっ」
「口で言うやつ初めて見た」
「それほどでも……」
「褒めてねぇよ」
自然と、真っ暗な天井に星空が見えてくるような、旬はそんな気分になった。
マキナは、旬にとって初めてのまともな話し相手になったのかもしれない。
「っていうか、勘違いすんなよ。別にお前が居ても居なくても変わらん」
「そう、ですね」
「あと、明日からの学校。ロボットだって絶対バレないようにしろよ」
「了解です」
「もう寝るぞ」
「はーい」
○
「絶対にバレないようにしろって。あの紙にも書いてあったじゃねぇか」
「あれ、そうでしたっけ」
「そうだよ。ロボットのくせに忘れてんじゃねぇ」
この時、旬は横目に購買の袋を下げた生徒を見た。
「そういえばお前って、飯食うの?」
「食べないと動けなくなりますけど」
「じゃあやばいじゃん」
「ですね」
「奢れと」
「そういうことですね」
旬は、ポケットに入っていた財布の中を確認した。
「今回だけな」
「ゴチです!」
「どこで覚えたんだよ」
「いまさっき」
旬たち2人は、一緒に1階へ降りて購買へ向かう。
「「うわぁ」」
購買へ並ぶ長蛇の列。それを見た時2人は眉をしかめた。
「人間って、こんなのにいつも並んでるんですか!?毎日!?」
「馬鹿、声がでかい!」
「だって思うでしょ!私こんなの知らないのです!」
「思うけど!声でかい!」
周囲からの視線が痛く感じた。
恐らく、マキナの存在は学年中に知れ渡っていて、転校生の物珍しさからくる視線と、ところ構わずいちゃついていると思われることからくる視線両方が注がれているように感じる。
しばらく列で待っていると、割と早く進んで行った。
マキナは、並んでいる間静かだが、背伸びしたり前の奴の背中の横から顔を出したりして購買で売られているものを見ようとしていた。
旬は、自分より低いマキナの肩を見て意外と身長が低いことに驚く。
彼は身長が高い訳ではなく、同級生の中で真ん中ぐらいの背だったが、マキナと旬の肩は握りこぶしぐらいには離れていた。
列は、もうすぐ先頭。
マキナの目は輝いていた。
「ええーっ」
先頭につくと、目の前には安い惣菜がポツポツとあるだけ。
「これだけしかないのですか?」
「そうだよ」
「残念です……」
「じゃあ、これと、これを」
旬は、2つだけ余っていた弁当を買った。
教室に戻る間、マキナは残念そうに俯きながら歩く。
着くと、クラスメイトは席を向かい合わせたり移動したりして楽しそうに昼食を取っていた。
マキナの顔はふと明るくなる。
「私も、あれしたいです」
「してこいよ」
旬は、弁当を手渡した。
「真紀奈ちゃーん!こっちこっち!」
「あっ、はーい!」
マキナは戸惑いながら、女子軍団の中に入っていった。
「さてと」
旬は、いつも通り1人で昼食だ。
小さい頃からずっと1人の食卓しか味わったことのない日々を経験していた旬にって、それはごく普通の日常だった。
○
5限、6限、ホームルームも終わり。
マキナとの会話もなく1日の学校が終わった。
ふと横に目をやると、
「ねー、真紀奈ちゃん遊び行こー」
「私、お金持ってないです……」
「私たちが出すからさ!いこ!」
「はい!行きます!」
女子グループにゴリ押しされているマキナが居た。
旬はマキナがどんどんクラスに馴染んでいく様を見て、孤独を感じた。
マキナに、何か友情のような感情を抱いていたのだろう。
ずっと独りだった旬にとって、初めて自分に好意的に接してくれたのはマキナだけだったからだ。
「さて、帰るか」
今日も旬は独りで学校を出て、帰路へとつく。
空は、若干淀んだ青色だった。
雲が縦に大きく広がっているのが、そうしていたのだ。
いつも一人で歩いていたアスファルトが、今日は妙に不安定に感じた。
「ピーッ、ピーッ」
「ドローン……?なんでここに」
警視庁と書かれている陸上ドローンが警告音を出しながら道端をうろうろしていた。
旬の胸ぐらいまでの背で、丸いドーム状の頭に、バイザーのように付いているモニタ、円柱状の胴体を持ち、車輪で動く公安ドローンだ。
警察がドローンをパトロールに利用し始めたのはここ1、2年の間だ。
だから、いままで旬は都会の方ではなんどもドローンを見たことがあったが、未だに多摩地区の方ではドローンが配備されていなかったため、驚いた。
「最近になって、ドローンとかロボットとかがより普及し始めたんだなぁ。なんだ?エラーか?」
旬がドローンに近づくと、
「ピーッ、ピーッ」
ドローンは旬の方向を向き、モニタと頭のランプを赤く光らせてゆっくりと走り始めた。
「……俺なんか悪いことしたか?」
旬は、自分の前で止まったドローンの頭部を撫でようとした。
「ピーッ」
その瞬間、ドローンの頭部のランプが開こうとするのが見えた。
「……っ!?」
旬は驚き、手でドローンを勢いよく押す。
「チュンッ」
その後、ランプが開いた所から勢いよく光の柱のようなものが、電子音と共に放出されるのが見えた。
「パラライザーか……?」
少し体勢を崩したドローンは、即座に元の状態に戻る。
警察は、既にピストル銃の武装を廃止し、敵を無効化できるパラライザー光線銃を携帯するようになっている。
だが、安全の保持のためドローンにパラライザーを発射する機能を搭載していないはず。
旬は、今の状況が極めて危ないものだと理解した。
「まずいっ!」
後ろを向き、勢いよく駆け始めた。
もうドローンは旬に対し、光線のチャージをしている。
「間に合うかっ……」
やや離れたところに、横へ曲がる小道がある。
そこへ入り込めば次のパラライザーは避けられそうだ。
「……っ!」
あと数mで小道に入れる。
旬は、風が頬の冷や汗を吹き飛ばしていくのすら感じれないほどに必死だった。
「はっ!」
「ピーーッ」
旬は、勢いよく踏切り、小道へ飛ぼうとする。
「チュンッ」
それと同時に、パラライザーの音も旬の耳に入り込んだ。
「ったい!」
体にゴツゴツの硬いアスファルトがめり込み、激痛が走る。
その後、旬は自分の体に目をやった。
どうやら、避けれたようだ。
パラライザーに当たれば、体の制御は効かなくなり、身動きが取れなくなる。
そうであれば、旬は自分の体を見ることは出来なかっただろう。
「今のうちに逃げなきゃ……」
手の痛さを憂う余裕もなく、アスファルトに勢いよく手をつき体を起き上がらせようとした。
「動かないっ!?」
どんなに力を入れても、下半身がビクともしない。
もしや、飛んでいる最中に足に掠ったのかもしれない。
さっきの激痛の正体も、パラライザーだったのかもしれない。
それに気づくと、旬の全身の力は一瞬にして抜けた。
「マジかよ。ドローン改造とか」
あのドローンは、恐らく改造されたものだ。
公務を行うドローンには、武装を施してはいけない法律がある。
だから、あのドローンは違法の改造ドローン。
しかも、基準のパラライザーであれば掠った程度で動けなくなるほどの強度はないはず。
「ピーッ、ピーッ」
「意味わかんね、なんでこんなんで……」
ドローンが近づいてくる音が聞こえる。
違法に強化されたパラライザーをまともに喰らえば、神経系を麻痺だけで済むわけがなく、焼き切られて絶命するに違いない。
「ピーッ」
ドローンが近づく音が止まった。
誰がこんな違法改造なんてしていたんだろう。
幽霊になったら、調べてやろう。
そんなふうに旬は思った。
旬は、上体を手で起き上がらせるように持ち上げる。
「馬鹿みたいな人生じゃんか」
光り始めるドローンを見る旬の頬に涙が伝う。
その瞬間、ほんの一瞬。
何かが旬の横をものすごい速度で通り過ぎたの感じた。
その風圧で、旬の髪が目を覆う。
「何だっ!?」
ガシャン、と物が勢いよく衝突する音が聞こえた。
かなりの音量だ。
旬が顔をふって髪をどかし、前を見た。
ドローンは倒れ、胴体が大きくそれがそれと分からないほどに変形している。
そのドローンの上には、ローファーを履いた細く白い足が乗っていた。
「マキナ……?」
「……」
旬の横を通った、ドローンを壊した奴の正体はマキナだ。
風になびいている黒の長髪が日光を反射して、青く光っているのが印象的な光景だ。
その冷徹な表情は、こちらを見ている。