~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「デウスって……」
「マキナはなんで人間と仲良くするかなぁ。俺たちと仲良くしたほうがいいと思うし、そうして欲しいんだけど」
「あなたたちと遊んでても面白くないからですよ」
2人の間に電撃が走っているようにすら見えるほど、緊張した空気。
「なんだよまた輩か……?って、嬢ちゃんと嬢ちゃんの友達!どうしたんだ!」
すると店の中からクマさんが現れて、こちらへ駆け寄った。
「クマさん……」
「すみません!アンをよろしくお願いします。俺たちは、あいつをやっつけなきゃいけないんです」
「お、おお?」
クマさんは訝しげな表情をしたが、傷ついたアンをおぶりながら店内へ戻って行った。
「俺の任務はただ2つ。マキナの奪還と、エニグマデータの回収」
「エニグマ!?なんであのゲームが!」
「……うるさいなぁ、お前」
その瞬間、壁に立っていたはずのデウスが旬の目の前に音もなく現れた。
現れたと共に、旬に物凄い突風が吹く。
「なっ」
顎に手を当て、旬の顔を覗き込み首を傾げている。
「……ん?」
「旬くんに、手を出すな!」
その隙を狙おうとしたマキナは、デウスの後ろから蹴りを放った。
「おっと」
しかし、マキナの蹴りをあたかも予知していたかのようにギリギリで避ける。
「相変わらずすばしっこいですね」
「違うよ、速いんじゃない、見えてるんだ。」
「なに寝ぼけたこと言って……」
「僕には憑いてるんだよ。ラプラスの悪魔が」
ラプラスの悪魔。
過去に量子力学の登場により否定されている理論。
それは、物理、力学的な状態を全て把握することで、宇宙の全運動をも完全に知り得るという超越的な考えだった。
「僕が見たもの、そして感じたことは全て計算され、予測される。さっき蹴りを食らったのは、幼き頃を懐かしみたかったからだよ」
「エクスと一緒にいて頭おかしくなったんですか?お古さん」
「悪く言えば、頭がおかしくなってしまったのかもしれない。俺が1番最初の、失敗作ヒューマノイドだからね」
「あのまま死ねばよかったのに」
「心にもないこと言うなよ、エクスのこと殺せなかった癖に」
「お前のことは本気で殺しますよ」
マキナは目を大きく開けて、デウスを睨み殺すような目つきをしていた。
普段の和やかな雰囲気では無い。鋼鉄でもない。人間として憎悪を燃やすマキナの顔を、旬は初めて見た。
「やだなぁ、そんな睨まないでくれよ。一応お兄ちゃんだぞ?」
「もういい。殺す」
マキナの髪が青く光り始めた。
街頭があるのに、その光りは眩しく、神々しさすらも感じる美しさだ。
「いいのかい?俺が放ったアラクネは、ここからちょっと離れた新しい基地に入り込んでる」
男は口角を上げ、マキナへ語りかける。
「俺に夢中になってる間に、その中にいる同胞たちが市民を皆殺しにしてもいいならいいんだけどさ」
「ほんっとうに汚いことしますね」
その時、旬は勇んだ。
絶対にこの男、デウスを許さないと。
そして、こいつは“俺”が破壊すると。
「マキナ、行ってくれ。ここは俺がどうにかする」
「旬くん……?」
「何言ってるんだい?人間風情が俺に勝てるわけ……」
「わかりました。基地を対処し次第、すぐ戻りますから」
なぜなら、俺たちは仲間だから。
あの時交わした約束を、俺は守らせねばならない。
「絶対に、無関係な人を殺させるな」
「了解です!……ふっ!」
青く光ったマキナはそのまま建物の上へ跳び、都会の闇夜へと消えていった。
「……お前は、絶対に許さない」
「うぇーん、許してくださーい。なんて許しを乞うと思ってるのか?本当にバカだな、人間は」
旬は握り拳を2つ前に構え、デウスを見た。
「(こいつのアラクネは、埋め込まれて外せないようになっている。だから、破壊すればもう新しいアラクネを装着することはできない)」
だから、絶対にアラクネを破壊する。
「来なよ人の子。俺たち、“トリニティ”が相手してあげる」
〇
デウスとマキナが戦っていた時のこと。
その轟音はペトラとミカの耳にもももちろん入っていた。
「なんですの!?」
「ゲームセンターの方向ですね……」
「アンは大丈夫なのかしら?」
「もうお家の方は東京にいらっしゃってるんですよね?」
ペトラは、こくりと不安そうに頷く。
「でしたら、先にお帰りになってください。万が一があると危険です……」
「……わかりましたわ。気をつけてくださいまし」
「すみません。お嬢様……」
「いいのですわ。お2人に責任を取らせる訳にはいけませんもの」
そうして、2人は駅で解散した。
ミカはその後、ゲーセンへの道を急ぐ。
「はぁ……、はぁ……」
ミカは運動神経がなく、ゲーセンへ向かうのには時間がかかる。
『アン、大丈夫?』
だから、アンへメッセージを送信。
ミカは、アンの安否を最も心配している1人だった。
「アンっ……。無事でいて……」
人気のなく、細い道。
ミカは心細くなり、足を何度も止めそうになる。
しかし、昔見た、殴られたアンの苦しそうにしている顔がその度脳裏に過った。
「……あそこ!」
駐屯基地の看板が乱立している道を進むと、何かがしきりにぶつかり合うような音が聞こえる。
「なに?……」
恐る恐る、ゲームセンターのある通りへ足を踏み入れた。
すると、
「ほんとに弱いなぁ。人間って」
「くっ……」
エニグマの中で着ていた、黒いスーツ。
それを着た男が、旬を殴っている。
旬はその拳の軌道に入らないよう、ギリギリで全て避けるが、体力の消耗が目に見えていた。
「はぁっ、はぁっ」
「反応いいけどっ、体力はないのかい?」
「(頭がおかしくなるぐらい痛い……)」
デウスの格闘は、次第に加速していく。
明らかに人間業では無い速度の蹴りや殴りを、本当にギリギリの距離で避ける旬は、まるで未来が見えているかのように見えた。
「……しぶといなぁ。なんでこれも避けるんだい?」
「生憎っ……、俺も悪魔に憑かれてるみたいでさ」
「君が悪魔に愛されるわけがない。悪魔は“トリニティ”だけに媚びるのだから」
「さっきからトリニティトリニティって、一体なんなん……だよっ」
「“父なる神”と、そのヒューマノイドの子ら3人、そして“聖霊”の三位一体さ。……まぁいいや。さっさと死んでくれよ、人の子」
すると、デウスを足を大きく上げ、それを振り下ろす。
その足に打撃された地面は、1回大きく揺れた。
「あっ」
疲弊していた旬は、その揺れに足を掬われた。
ぐらりと体勢をくずし、尻もちをついてしまう。
もう、能力を使っても避けられない体勢になってしまった。
「……マヌケだね。人間は相変わらず」
「あっ、ああっ」
旬の顔が一気に青くなる。
「“トリニティ”に逆らった罰だ、人の子よ。祝福を受けたまえ」
そう言って、旬の頭の上に足を振り上げた。
「……ファイア」
その時、当たりが大きな音と共に一瞬光った。
薬莢地面に落下する音と共に、場が静まり返る。
そして、デウスは気を失ったかのように、足を旬の方向にして倒れた。
「……はぁぁっ!めっちゃビビったぁ。マジ死ぬかと思った」
「ナイス、旬。演技力よかった」
すると、店の階段に隠れていたのであろうアンが現れた。
アンの手には、カウンターに飾られていたライフルが握られている。
「無茶ぶりだったけど、上手くいってよかったぁ……」
「ラプラスの悪魔とか言ってたけど、なんだったんだろ。しっかり当たってるじゃん」
一瞬光ったのは、店の階段から発せられたマズルフラッシュ。
クマさんと店に戻ったアンは、彼から銃を借り、デウスの胸部にあるアラクネを1発で狙撃したのだ。
クマさんに連れていかれる前、旬がアンに駆け寄って顔を近づけた時、こっそりと耳打ちをしておいたのである。
「……俺が途中で転ぶから、その時にあの銃で男の光ってるところを撃ち抜いてくれ……」
そして、遅れてクマさんも登場した。
「お、おう。なんかオートマタが暴走してるっちゅうから貸したけど、ほんとにどうにかしちまうなんてな。狙撃の才能まであるんか嬢ちゃん……」
「……僕は、兄を守りたかっただけ」
旬に聞こえないよう、小声で呟く。