~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
旬たちの高校にも、もちろん部活がある。
各部活が派閥を作り、校内の地位争いを繰り返す中、その中の最下層であるパソコン部に危機が迫っていた。
「……学級委員執行部の四羽だ!お前らパソコン部、情報室から出ていけ!」
四羽が、情報室の扉を大きな音をたてて開ける。
「また来たわ!」
「ひぃぃっ、お助け、お助けを……」
パソコン部のメンバーは、僅か2人。
三つ編みされた黒髪を2本下げている元気な方が、「堀越楓花」。1本だけの臆病な方が、「千条真衣」
重い前髪に、綺麗に三つ編みされた髪。そして見張るのは、姉妹でもないのにそっくりなその顔だ。
「また来たじゃない。言っただろ、部活の人数が足りなければ部は存続できない。お前ら2人しかいないパソコン部は、廃部するんだよ」
厳しい口調の四羽に、マイは怯えて、並べられた灰色の机の中に飛び込んだ。
もう1人のフウカは、四羽に反抗的な態度を見せる。
「だってそれは、先輩たちが抜けちゃったらよ!まだ1年が入ってくる……」
「今、何月だと思ってるんだ」
「……6月」
「入ってくるわけない。次の一斉部会が始まる前に、荷物を畳んで出ていくんだな」
「……らない」
噛んだ唇を開いて、呟く。
「あ?なんだよ」
「廃部にならないって言ったのよ!」
○
2人はその後、昼休みの廊下を歩いた。
「……あんな啖呵切って、大丈夫なの?相手は四羽だよ?」
「大丈夫だって!四羽は脳みそない射撃ゴリラだから!」
四羽は、学級委員に所属しており、かつ執行部の部長。そして射撃部の部長だ。
いじめっ子気質なところと、身長が他の女子より頭1つ抜けて高いことから、フウカはゴリラと呼んでいた。
「……そして、私にはあてがある。確かB組に、転校生が入ってきたって聞いたの」
「B組って、四羽のクラスでしょ!ひぃぃっ」
「大丈夫だって、転校生に媚び媚びらしいし」
「転校生を抱え込めば、四羽も強く言わなくなるってこと?」
「そういうことー」
そうして、2人はB組の前で立ち止まり、こっそりの中を覗き見る。
すると、覗き見た先に、窓際の最後列の席で話している2人がいた。
「……なぁ、マキナ。部活どうする?」
「部活動ですか?んー、そうですね。旬くんが入ってるところにします」
「俺は入ってないんだよ。基本的に1人の方がいいし」
「もー、そんなこと言って。マキナちゃんがいないとどうしようもないくせに」
それを聞いた瞬間、立ち上がったのはフウカだ。
「リア充爆発すべし!」
「な、なにやってるのフウカちゃん!」
「こうなったら、突撃して勧誘するしかないでしょ!あの二人を無理やりにでも部活に……」
廊下側で騒いでいる2人に、マキナと旬は気づく。
「……なんだあれ」
「なんだか楽しそうな人達です!」
「お、おう……」
「えっ!楽しそう!?」
マキナの楽しそうという言葉に反応したフウカが、マキナの元にすぐさま駆け寄る。
「私たち、パソコン部なんだけど!入る部活迷ってるようなら是非入ってくれませんか!?」
そのチグハグな語尾と言葉のイントネーションから、無理していることは火を見るより明らかだ。
「(なんでこの人たち、こんな必死なんだ……?)」
「ええ、是非入りたいと思います!旬くんも入りますよね?」
「まぁ、マキナが入るなら一応(見とかないと、やばい事になりそうだからな)」
「あぁ……。神……」
フウカは2人の前に跪いて合掌した。
それにより周囲の目線が3人に集まって、旬は肩身の狭さを感じた。
「あっ、部室は情報室だから。入部届けは先生から貰ってね」
跪いたままいきなり早口になり、そそくさと教室から出て、音を立て扉を閉め切っていった。
「なんなんだ?あの人、ちょっと怖かったな」
「人間が怖いなんて、思ったことないですが」
すると、しばらくしてから四羽が教室に戻ってきた。
「……ちっ」
2人の方をいちべつして、一言も言わずに席についた。
「怖いですね……。四羽さん」
「ま、まぁ、まだマキナのこと悪く思ってないらしいし、大丈夫だろ」
そうして昼休みは終わり、マキナは恐る恐る自席についた。
しかし教室に差す日和はどうも和やかで、眠くなった。
○
授業は終わり、マキナと旬は情報室へ向かった。
案外、放課後の学校は部活動で賑わっている。
日和はうらうらとして廊下を渡る2人を覗く。
「……ミカ、アン」
あの後話し合い、マキナはミカとアンの帰りを護衛することになった。
下校時、マキナはあの3人の車に同乗し、もし敵襲があればそれを防ぐというプランだ。
しかし今日は部活絡みで、3人には待ってもらっている。
「申し訳ないですね。待ってもらっちゃって」
「お前にも申し訳ないとかあるんだな」
「なんですか!?失礼ですね!」
私はいたって常識人です、と言いたげに頬っぺを膨らませた。
「だってこの前ペトラにハンカチ借りようとしてた時……」
「あれは別腹なのです」
「(別腹の意味違くね……?)」
すると、情報室に着いた。
部屋の中はがらんとしていて、ひとけは全くないように見えた。
電気だけは点いているのが、殺風景さを際立たせる。
窓から見える、何も乗っていない大量の灰色の机と、ぽつんと置かれている2台の重厚感あるデスクトップパソコン。そしてそのモニター。
「……場所間違えました?」
「いや、合ってる。だいぶ昔、全員にタブレットを配らずに、わざわざここにきてパソコンを触っていたらしいが、考えられないな」
「……もしかして石器時代ってやつですか?」
「今日はマキナ、キレッキレだな」
しばらく待つと、見覚えのある古風な髪型の少女が廊下を渡ってこちらに来るのが見えた。
駆け寄ってきて、2人にお辞儀をする。
「……すみません。待たせましたか?」
さっきとは違って、メガネを掛けていて、やや丁寧な口調だ。
「待ちくたびれましたよー、何回も帰ろうかと思いましたも……」
「うるせぇな!……すみません、妹が」
「ひぃっ、ごめんなさい!」
前に教室で話した時より、妙に気弱だ。
手で頭を覆い、しゃがみこんで身を縮こまらせて怯えている。
「あぁっ!ごめんなさい。そんな怖がらせるつもりはなかったのです」
「やっぱ陽キャは怖いぃ……」
「困りましたね。そんな怯えさせるつもりは……」
「ひぃぃっ!ごめんなさい!」
より身体が小さくなったような気がする。
「もう、言わんこっちゃ無いんだから……」
すると、気付いた時には3人の近くにもう1人同一人物が立っていた。
「うわぁっ!何!?同一人物ですか!?」
「いやちゃんと見ろよ、髪型が違うし、メガネかけてないだろ」
「この子失礼ね……」
2人の髪型はよく似ているが、三つ編みのお下げの数が1個と2個で違う。
「……でもほんとに顔がそっくりですね」
すると、うずくまった方と立った方が同時に顔を上げた。
「それよく言われるわ。似てると思わないのだけど」
「いや、凄い似てるぞ!髪型一緒になったら見分けつかないと思うし」
2人の違いは、本当にメガネの有無と髪型にしか見受けられない。
目の様子や雰囲気も、唇の色も、鼻の高さも、どれをとっても全く一緒のようにしか見えないのだ。
恐らく、マキナの人を識別する回路に不具合を生じさせるほど著しく似ているのだろう。
「んんっ……。まぁ、自己紹介もしてなかったし、しょうがないわ」
わざとらしく咳払いをして、旬とマキナの前に仁王立ちした。
「私は堀越楓花、部長よ。フウカって呼んでいいわ」
「うぅっ、緊張する……」
「もう……。この子は千条真衣、マイって呼んであげて」
「よろしく、お願いします……」
マイは、酷く怯えがちなようだ。
その反対にフウカは、マキナと同じような雰囲気を感じる。
「……あなた達は?」
「俺は……」
「はい!はい!私、見目真紀奈です!」
勢いよく手をあげ、活きのいい挨拶をする。
旬の挨拶を遮らなければ、完璧な挨拶だ。
「……俺は見目旬、入部するかは分からないけど……」
「えっ、入部しないの?」
「えっ」
急にフウカの声が無機質になる。
まさに、機械のよう。
「入部しないの?入部するのよね?入部するのよね?入部するっていいなさいよ」
「いや怖い怖い!なんなの急に!」
「……パソコン部、私たち部員2人しかいないから、フウカちゃん焦ってるの」
床にしゃがんだまま、上目遣いで旬のことを見ている。
重い前髪がさらりと横に流れ、実は整っている顔立ちが顕になる。
ようするに、旬が思っていたより顔がかわいいのだ。
「なるほど、そういう事情が……」
「部活がなくなったら、約束も果たせなくなっちゃうし……」
顔を曇らせ、目線を下げるマイ。
「約束?」
「……とある暗号を解くこと。それが先輩たちと約束したことよ」
「うん、いままで誰も解けなかったから、私たちの代でって」
「なんですか?それ」
勿体ぶって、ゆっくりと口を開く。
「その名は……、“暗号、ロンギヌス”」