~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina   作:ハーレム好き男

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21 内包感情のアルカーナ

 

「旬くん、“ロンギヌス”ってなんですか?」

 

「悪いが、俺も知らない……」

 

 彼女らはそれを学校最大の謎のように言っていたが、旬はそのことについて全く知らなかった。

 

「えっ!知らないの!?」

 

「やっぱ先輩が言ってただけで、あれ、誇張なんじゃ……」

 

「……まぁいいわ、実際に見せてあげる」

 

 フウカは扉の前へ立ち、立て付けの悪くなった引き戸を手こずりながらも開ける。

 

 金切り声のような不快な音を、引き戸が出していた。

 

「んっ!……これを1発で開けるなんて、四羽ってほんとにゴリラなんだから」

 

「四羽さんと友達なんですか?」

 

 すると、扉を開けきっただけでヘトヘトなフウカは、後ろを振り返って言う。

 

「友達なんかじゃないわよ……。関わらないでほしいわ」

 

「まさに執行される側だもんな(俺もだけど……)」

 

 旬は苦笑いしながら言った。

 

「それも、あなた達が入部してくれればいい話ですけど」

 

「私、“ロンギヌス”が気になります!」

 

「……でも知らないなら見ても面白くないわよ?」

 

「大丈夫なのです!」

 

 そうして4人は情報室に入り、2台並ぶパソコンの方へと進んでいく。

 

「うわっ、パソコンデカっ!」

 

 間近で見てみると、その重厚な金属の塔は、デスクの上でものすごい存在感を出している。

 

「私の趣味よ。ゴテゴテしたファンと冷却装置を着けるのが好きなの」

 

「フウカちゃんは、形から入るって聞かないんです……」

 

「いい事じゃない。私はかっこいいのが好きなの」

 

「……ソースコードは汚いのに」

 

「うるさいわね!動けばいいのよ動けば!」

 

 2人は、仲がいいようだ。

 

「ここにコピーが……」

 

 パソコンが置いてあるデスクの引き出しを開け、中を漁るようにして探っている。

 

 とてつもなく汚い引き出しの中は、混沌とした状況だ。

 

「うわっ、汚いです!」

 

「別に出せるからいいじゃない……ああっ!」

 

 紙を引き出し、突然それが取れたので身体に大きな反動が伝わった。

 

 後ろに大きく倒れようとする身体。

 

「んっしょ、危ないです!」

 

 しかし、マキナが寸前で受け止めた。

 

「言わんこっちゃない!」

 

「……お礼は省略するわ。真紀奈」

 

 心なしかフウカの顔が赤くなっているように見える。

 

 マキナ腕から立ち上がると、2人に手に持ったクリアファイルを見せた。

 

「これが“ロンギヌス”よ。コピーだけどね」

 

「……本当にただの暗号の書かれた紙なのか」

 

 3つの塊に別れた十数列ほどのアルファベットの羅列。そして、唯一意味のある並び『LONGINUS』。

 

 白黒のコピーでも分かるほど、原本は古いようだ。

 

 所々穴が空いているが、暗号部分だけはしっかりと保護されている痕跡がある。

 

「何故かは分からないけど、これが数十年前のパソコン部から受け継がれて、都市伝説みたくなってるわけ。

 

 実際に何年間も色々解析してみたりしたらしいけど、成果はゼロ。なにか鍵のようなものが必要っぽい所までは、この代で来たんだけどね……」

 

「鍵?」

 

「文字の配列で、英語の文法っぽい法則性があることを見出したの。

 

 だからアルファベットの置き換わりの法則、いわゆる“鍵”になってる暗号機さえ探せれば解けるはず」

 

 ニヤリと笑ってフウカの方を見るマイが続けて言う。

 

「ワクワクしますね!」

 

 恐らく、マキナの好奇心からくる目の輝き。

 

 好奇心まで備えるマキナの情緒は、どこまで奥深いんだろうか。

 

「だから頼むから入ってちょうだい!ワクワクするでしょ!ね!」

 

 マキナの手を取って懇願するフウカ。

 

「ええ、入ります!パソコン部に!」

 

 

 

 

 

 そうして、2人はパソコン部に無事入部することとなった。

 

 あそこまでガッツのある部長とマキナが両方でかかれば、どんなに頑固な人間、例えば四羽でさえ簡単に折ってしまうだろう。

 

 正直乗り気じゃなかった旬も、勿論折れざるをえなかった。

 

 あの後、旬とマキナは入部届けを職員室で貰ってから記入し、提出してそのまま帰路へついた。

 

 すっかり日は傾き、待っていた3人も合流し、広い校内の敷地を歩く。

 

 この学校は三等制の学校に加え寮も併設されているので、まるで大学のような広さを誇っていた。

 

 だから校門まで歩くのも、ある程度の距離を歩かなければならない。

 

 路傍に植えられている巨大な木が夕暮れを隠し、漏れ出す夕日が5人の上に明るい点を無数に描いた。

 

「真紀奈さん、入部したんですの?」

 

「パソコン部なのです!ペトラちゃん!」

 

「えっ、パソコン部なんてあったんですか……?」

 

「僕も思った、そんなのあったんだ」

 

「わたくしは知ってましたわよ」

 

「流石お嬢様、素敵です」

 

「なっ……」

 

 マキナのキラキラとした顔の輝きが一瞬で曇った。

 

「3人って部活入ってるの?」

 

「私とアンは、ね……」

 

「うん、入りたくなかった」

 

 なにやら目で話し合っているようだ。

 

 旬は、なんとなくその内容を理解していた。

 

「ああ、ごめん。ペトラは入ってるの?」

 

「わたくしは茶道部なのですわ!」

 

「あっ、えっ?茶道?」

 

 その輝く金髪に似合わぬ茶道部という文字とししおどしの音のイメージが旬の脳内を通過し、一瞬混乱する。

 

「わたくし、てっきりアフタヌーンティーなどかと思っていましたから、緑茶と正座に慣れるのにかなり時間がかかったのですわ」

 

「でも、今では部長になられたのです」

 

 横からアンが急に入ってきて、補足説明をした。

 

「褒めてもよろしいですのよ?旬さん」

 

「うん、凄いよペトラは」

 

 旬は中腰になって、ペトラに目線を合わせて言った。

 

「私からも褒めてつかわしますわ!褒めれて偉いですわよ、旬さん」

 

 そのまま中腰になった旬の頭を2回、優しくぽんぽんとたたいた。

 

「……旬」

 

 中腰になったままの旬に、膝でこっちへ向くよう指示する。

 

 旬は恐る恐る振り向くと、そのアンの表情は冷静そうだが、ピクピクと震える頬が全てを物語っている。

 

「覚悟しといて」

 

「ごめんなさい!アン様!」

 

 旬は立ったのち、即座に腰を直角に曲げ、深く頭を下げた。

 

「アン?どうしましたの?」

 

「いえお嬢様、“覚悟”ではなく、“確保”です。新しいゲームの台をすぐに遊べるようにするため、旬様には……」

 

 つらつらと言い訳を連ねるアン。

 

「わたくし、なにも言ってないですわよ?なんでそんな言い訳を……」

 

「ごめんなさい!お嬢様!」

 

 旬と同じようにアンも頭を下げる。

 

 この5人は、もうすっかり友達だ。

 

 アンの旬とマキナに対する鋭い目付きも穏やかになり、ミカの口調も子慣れてきて、ペトラも礼儀正しい口調のままだが柔らかさを感じるようになった。

 

「……いつまでも、これが続いてほしいな」

 

 マキナらしくない言葉が聞こえて、旬は驚いてそちらを向いた。

 

 遠くを見つめるような目で物思いにふけっているマキナは、妙にしおらしくて、旬の胸の中がほんのり暖かくなった。

 

「(あれ……?こんな顔するやつだったっけ……)」

 

 その暖かさは、熱い感覚へと変わっていく。

 

「……ん?どうしたんですか?旬くん」

 

「(……あれ、なんでこんな熱いんだ?マキナなのに、ただのマキナなのに)」

 

 心臓が早く動くのを感じた。

 

 夕焼けを背景に映るその鼻と、唇のやわらかい線がやけに鮮明に見えてくる。

 

 自分の瞳に入ってくるマキナに反射したただの光が、やけに大切で、やけに懐かしくて。

 

 ようするに、かわいいなと思った。

 

「……大丈夫ですかー?旬くーん」

 

「(かわいい?マキナが?いや、マキナは仲間で、別にかわいいなんかじゃ……)」

 

「旬くん!」

 

 マキナの声にはっとして、口をついて出ただけ、たったそれだけだった。

 

「かわいいな」

 

「はっ!?」

 

「ええっ……」

 

「うわぁ」

 

「旬さん!?」

 

「あっ……」

 

 たったそれだけで、とんでもない事を言ってしまった。

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