~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「……総当り作戦はもう無理よ。何年パソコン部が総当りして無理だったと思ってるの?」
パソコン部は、今日も今日とて4人揃っての放課後部活だ。
「じゃあ、鍵を探すのか?存在するかも分からないのに?」
「しかたないじゃない!それしかないんだから!」
その黒い2つの三つ編みが、声の波に合わせて跳ねる。
「……この暗号は、恐らくずっとずっと昔。今の戦争よりもっと前の戦争に使われてたものに類似してる」
マイが横からぬぅっと顔を出した。
「うわっ!いたんだ!」
「ひぃっ!ひどい!私はずっといるのに!」
「影が薄いのです」
「真紀奈ちゃんも見目くんの味方するんだ!もう終わりだぁ……」
マイの伝統芸、頭を抱えて床にしゃがみこむ。
「ねぇそこ、じゃれあってないでロンギヌスの解読手段を考えなさい」
「フウカ。パソコン部って、もしかしてずっとロンギヌスの解読しかやってないのか?」
「そうよ」
その瞬間、場が凍りついた。
あまりにも毅然としてとんでもない事を言うものだから、旬もマキナも硬直してしまったのだ。
「……やっぱロンギヌスは後回しにして、熾天祭の出し物を準備したほうがいいんじゃ」
熾天祭、この高校の文化祭。
小等部から高等部までの三部全校参加の、日本最大級の文化祭だ。
名だたる部活が毎年、物凄いクオリティの出し物をするため、この文化祭で鳴かず飛ばずの部活は、怠惰な部活としての烙印が押され、その権利が危ぶまれてしまう。
まさに、今のパソコン部のように。
「……わかってるの?どっちにしろあと一年しかないのよ。この暗号を解読して、それで……」
「ずっと思ってたんだが、なんでそんなにロンギヌスへ執着してるんだ?」
「……それは秘密よ」
そう言ったフウカの顔は旬を睨むようだったのと同時に、物憂げだった。
「そうか、悪かった」
「……でね、でね。この暗号はすっごい古い暗号機が元ネタって言うのがわかって」
そして、うずくまりから突然立ち上がったマイが早口で話し始めた。
「100年前、ちょうど1940年あたりにあった戦争で使われてた暗号っぽいことが分かったの。その名前は」
マイから、聞き覚えのある単語が発せられた。
「“エニグマ”っていうらしいの。ナチスドイツ軍っていう軍隊が使ってた、当時最強の暗号機だったんだって」
旬とマキナは、それを聞いて目を丸くする。
「エニグマって……」
「なに?心当たりがあるの!?」
旬の反応に、フウカが大きく食いつく。
「いや、池袋にあるゲーセンに同じ名前のゲームがあって……」
たしか、デウスの任務のひとつはエニグマを回収することだった。
もしかしたら、難攻不落の暗号ロンギヌスと何か関係があるのかもしれない。
「なーんだ。ただのゲーム機なのね。期待してそんし……」
「えっ!?なにそれ!超気になる!」
マイは、人が変わったかのように目を輝かせて旬を見ている。
その目の奥には、好奇心が見え見えだ。
「もしかしたら何か関係があるのかも!行こうよフウカちゃん!」
「えぇ……。嫌よ、私人が多い所嫌いなの」
「行くの!これがもし暗号の鍵と関連があったら、あとで拗ねるのはフウカちゃんなんだから!」
「……そこまで言うなら」
「2人も行こうよ、一緒に。パソコン部初めての校外活動ってことで」
並んで立つ旬とマキナにもそう提言した。
「ええ、行きましょう。ね、旬くん」
「ああ、結構入り組んでるところにあるから、案内しないとな」
旬とマキナが考えていることは一致していた。
トリニティが絡んでいることは間違いない、ブラックボックス“エニグマ”。
2人の安全は、確実ではない。
「初めて部活っぽいことをするのです!」
「ええ、楽もうね」
「ゲーセン、ワクテカ!」
〇
池袋の天気は晴れているが、この前より少し穏やかである。
「今日は暑くなさそうですね。ラッキーなのです」
「空いてたしな。この前はやけに混んでたから助かったよ」
2人で池袋駅の大きな階段を上り、辺りを見回した。
建物に取り付けられた広告が陽気な音楽を流していたり、浮かない顔をしたり楽しそうな顔をした通行人が行き交っているのは、都会の常だ。
「おーい!見目兄妹よー!」
大手を振るのは、謎の少女の2人組。
大きな声を出しているのは、恐らく髪を2つのリボンで括り、髪を長く垂らしている、前髪の薄いツインテール姿の方だろう。
そして、もう片方もツインテールで、同じ髪型。しかし服装は片方が黒、片方は白基調だ。
……それはどうでも良くて、今日は、三つ編みの大人しそうな女子2人と待ち合わせしていたはず。
あの2人は、どう考えても違う。
「誰だろうね、あれ」
「誰でしょう」
「んー……もう」
すると、2人がこちらへ向かってくる。
「なんか来てね?」
「ですね。誰なんでしょう」
2人は目の前でとまり、呆れ顔でこちらを見てくる。
「私だよ!私!」
「私だ、部屋着の男と、制服の女の2人と合流した。謎の遊戯装置の解析が済み次第、追って連絡する。オ・ユジーマァ・ヨ……」
片方が携帯に耳を当て、何やら訳の分からないことを呟いている。
しかも出す時もしまう時も、携帯の画面は黒いままだ。
「……は?」
「どなたですか?」
「覚えていないのか?フッ、それも世界の選択か……」
「マイ、それ辞めて。本当に辞めてちょうだい」
「えー、ファイナルエージェントだよ」
「いっつも慣れないの人にやって困惑させようとするの、性格悪いわよ。何人体験入部の子がやめたと思ってるの」
「(こいつらは何を言っているんだ?)」
こいつらがあのパソコン部の冴えない奴らな訳ない……よな。
「まぁ、だいぶ学校と雰囲気が違うのだけは認めるわ。これが、オフの私たちよ」
違うどころか、別人だ。
あの重々しい前髪は、何本にも分割された細い髪の束となっている。いわゆるシースルーだ。
そして、マイの眼鏡がなくなっている
「……なに?だって、えぇ」
マイは、かなりオーバーサイズな黒のTシャツを着ており、それには中心に大きくドクロのマークと、身も蓋もない『GOD is DEAD』の文字。黒いタイトジーンズを穿いているため、全身が黒い。
フウカは、暗いピンク色のブラウスに、黒いスカートを胸の下まで上げて履いている。胸の中心にはロザリオと共にがリボンが付いており、服の末端にはフリルがほどこされている。
「雰囲気が違うのは認めるわ」
「……じゃあ、行きますか」
という旬も内心、納得していなかった。
〇
ゲーセンの前は、あの時の状態のまま。
デウスが蹴り飛ばされた壁は損傷したまま無惨な傷を残していた。
『駐屯基地』の標識も、あの時のまま。
「……なんだか不気味なところね」
「ひぃぃっ、やっぱ怖いぃ!」
「ファイナルエージェントじゃないのか」
「……私だ、ここはどうやら敵組織のアジトに通じてるようだ。今から潜入する。なぁに、ジェームズとスミスにはよろしく言っておいて……」
「ビビりなのか厨二病なのか、ハッキリしなさいよ」
そうして、狭いゲーセンへの階段に入っていった。
「なんか物々しいわね……」
「ひぃぃ!食べられちゃうんだぁぁっ!」
「だから大丈夫だって」
ここに来る女子は、みんな同じ反応をするのだろうか。
そして『HEAVEN』のドアをくぐると、この前と同じようにクマさんがいる。
ゲーセン自体も、前と同じような繁盛具合で、人がぼちぼちいる状況だ
「おお!あの時の兄ちゃんか!ここ、気に入ったんか!」
「またお邪魔します」
すると後ろから騒がしい声が聞こえ、
「おー、でかいおじさんね」
「ひぃぃ!このおじさんに食べられちゃうんだぁぁぁ!」
「マイちゃん、落ち着いてください」
マキナが制する側になったら、もう終わりだ。
「はははっ、愉快じゃねぇか。楽しんでこいや!」
そう言われた後、旬以外のパソコン部らは真っ先にエニグマの方へと向かった。
「……クマさん。少し話があります」