~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina   作:ハーレム好き男

27 / 28
24 黒箱暴露のプロバーティオ

 

「……なんだ、鉄の箱じゃない」

 

 その黒い正方形のような見た目を目の前にすると、全員同じ感想を持つのだろう。

 

「あれだよ、ちょっと前にオカ板で話題になってたVRっぽいゲームじゃない?これ」

 

「……暗号機、ではないのです。ただのゲーム機だと思います」

 

 エニグマに搭乗する用の自動ドアしかないし、暗号を読み解く機構を備えているとは思えない。

 

 重々しいエニグマの雰囲気が、パソコン部を包む。

 

「旬くんが今クマさんに確認してきてくれてるので、待つのです!」

 

 

 

 

 

「このゲーセンにあるエニグマ。あれはただのゲーム機じゃない」

 

「おう、それがどうした」

 

 旬の言葉に不審がっている様子だ。

 

 眉を片方だけ上げて、旬の突拍子もない発言を怪しんでいる表情。

 

 それは織り込み済み。

 

「……ここは、もともとMIA軍の駐屯基地として使われていたという情報を入手しました」

 

 激しく拍動する心臓を感じる。

 

 冷たい汗が身体をほとばしる。

 

 クマさんの顔が、どんどん厳しくなっていく。

 

「この地下室を買い取られただけなら、エニグマもMIAによって回収されていたはず」

 

 場は、硬直しきっていた。

 

「あなたは……、“トリニティ”ですね」

 

 デウスが、マキナを引きつけるためにあそこに現れた理由は謎だった。

 

 しかし分かっていたことは、マキナがアンを守るためにゲーセンまで戻ってくるという情報がなければ、あそこには現れないはずということ。

 

 デウス、トリニティには、人間の内通者がいた。

 

「……やっぱり、あの時殺しとくべきだったなぁ」

 

 クマの腕がゆっくり動く。

 

 それは、直立する旬の身体に垂直になった所で止まった。

 

 その腕に付いた毛むくじゃらの手には、黒い光沢を放つ、無慈悲な暴力。回転式の拳銃が握られている。

 

「“裏切り者”にはよろしく言っておくから、安心して逝きな」

 

 拳銃から放たれる弾丸の軌跡が見える。

 

「くっ!」

 

 撃鉄が火花を放つ瞬間、姿勢を倒して弾丸を避けた。

 

 銃声が響いた時、店内が騒然とする。

 

「旬くん!」

 

 すると、マキナがゲーム機の上を高速で駆けこちらへ来ていた。

 

 空気抵抗になびかれる髪は、青く輝いていた。

 

「旬くんに手を出すなっ!」

 

 マキナがカウンターに突っ込むように放つ高速の蹴りが、クマへ打ち込まれる。

 

 その衝撃で、辺りの絵や額縁がほとんど落下した。

 

「ぐおっ……」

 

 マキナの足は、クマの頭を壁に押し付けていた。

 

 その大きな体躯さえ持ち上げてしまうほどのマキナの脚力が、いまにも頭を潰そうとしている。

 

「くっ、裏切り者が……」

 

「うるさい」

 

 必死にもがいているが、マキナの足の圧が強くなっていくのか、だんだんもがく力がなくなっている。

 

「えっ、真紀奈、どういうことよ……」

 

「ひぃぃぃっ、本当に怖いじゃん!真紀奈ちゃんも怖いぃぃっ!」

 

 あたりの客、パソコン部の2人、それらが編み出す空気は強ばって、それでいてだれも手出しをしようとしない。

 

 全員、混乱しているのだ。

 

 その状況で、旬は前に出る。

 

「マキナ、銃を取り上げるだけでいい。よせ」

 

 マキナはクマから銃を剥ぎ取るようにして奪うと、クマの身体をカウンターのへりへ突き出した。

 

 ぐったりとうなだれるクマを目の前に、旬は話す。

 

「クマさん、あんたはアンのことをよっぽど可愛がっていたようだな。なぜあんなことをした」

 

 旬の心持ちは、いたって冷静だった。

 

 アンを裏切ったことに対する怒りや、悲しみは大きい、しかし、しなければならないことがある。

 

「すべては“父なる神”のために」

 

 そう言うクマの目元は、完全に普段と違う。

 

 なにか虚ろで、からっぽで、人間としてのものを失っている目だ。

 

「父なる神っていうのは、誰なんだ」

 

「……」

 

 クマは口を噤む。

 

「誰なんだ!」

 

 旬は叫ぶ。

 

 その声はゲーセンの明るい壁に拡散し、ゲームの音で散り散りになる。

 

「……旬くん、無駄です。もうこいつは、死んでる」

 

 マキナの目も、心なしか虚ろだった。

 

「何言ってるんだ、まだ生きて……」

 

「トリニティの下部工作員は、全員洗脳されてます」

 

 旬は、それがどういう意味なのか理解を拒んだ。

 

「とりあえず、警察に電話して身柄を引き渡してください。フウカちゃん、マイちゃんのどっちかでいいです」

 

「……どういうことか、後で説明しなさいよ」

 

「警察警察警察警察、警察って110だっけ……」

 

 忙しなく携帯を操作するマイ。

 

 そうして、警察が到着するまでの間、緊張した時間が経っていった。

 

 

 

 

 警察が到着すると、クマは人が変わったように大人しくなり、速やかに連行されていった。

 

 警察の事情聴取は、小一時間、その場で行われた。

 

 俺もマキナも、何も知らないふりをした。

 

 マキナは、警察に褒められていた。普段のマキナならはしゃいでいるが、今回はその例通りではなかったのだ。

 

 そうしてバタバタとした状況が一段落つき、ゲーセンの奥の方、エニグマの横で4人は話している。

 

「どういうこと?真紀奈。急にゲーム機の上に乗ったかと思いきや、あんなことに……」

 

「旬くんに向けて拳銃を向けていた悪い人だったのです。私は取り押さえただけです」

 

「真紀奈ちゃん、達人なんだね……」

 

「……見目兄妹、ここは本当に安全なんでしょうね」

 

 腕組みをするフウカの鋭い視線が、旬とマキナを刺す。

 

「……エニグマのことが終わったら、すぐ出よう」

 

 旬が提言する。

 

「そうだよ、ここまで来て引き下がったら勿体ないじゃん」

 

 そう言われるとフウカは目を瞑ってすこし眉をひそめた。

 

「……いいわ、でも少しだけよ。何か危ないことがあったらいけないから」

 

「私に任せてください!」

 

 マキナはエニグマの近くへつかつかと歩いていった。

 

「……何するつもりなのかしら」

 

 そうフウカが言った時、旬の脳裏に悪い予感が走った。

 

「いや、おい待てマキナ!それはまず……」

 

 既に遅かった。

 

 その時には、もうマキナは拳をエニグマに振りかぶっていたのだ。

 

 マキナの拳がエニグマに衝突すると、金属質な響きが店中に広がるぐらいの大きな音が鳴る。

 

 マキナが殴ったところのボディは大きくひしゃげ、側面にちょうど手が入りそうな隙間が出来た。

 

「やったのです、そしてこうしてー」

 

 そしてエニグマの隙間に手を入れ、エニグマを構成していたプラスチックを引きちぎり、それをただの板にしてしまった。

 

 エニグマの側面の隔たりがなくなり、内部構造が顕になった。

 

「……いや、あんた本当に人間?」

 

「鍛えてるので!」

 

「いやぁぁぁっ!真紀奈ちゃん怖い!怖いすぎる!」

 

 エニグマの板を持った方の腕を持ち上げ、ガッツポーズをした。

 

「これで、内部の構造が分かると思います。お2人が見て、鍵を探してください」

 

「何事もなかったようにしないでくれるかしら……。まぁいいわ」

 

「ワクテカだけど怖いよぉ、ガクブル……」

 

 そうして、2人はエニグマの内部を点検する。

 

 マイが携帯のバックライトで中を照らし、身を乗り出して確かめている。

 

 それを旬は後ろから見ていた。

 

「これがこれでしょうね、それで……」

 

「うへぇ、私の分野じゃないからなんも分からない……」

 

 暗いブラックボックスの中を漁っている2人を目の前に、マキナと旬は小声で話している。

 

「仮にエニグマに“鍵”があるなら、それを回収したがってたのかな」

 

「あの暗号文とMIAが関係してるってことですか?」

 

「分からないけどもしそうだとしたら、それを持ち帰れば2人が危ないんじゃ」

 

「旬くん、厳しいことを言います」

 

 マキナは、旬の目を真っ直ぐ見る。

 

「私は、トリニティを止めるのは1人でやろうと思ってました。一般人、例えば旬くんに危害が及ぶのは嫌でしたから」

 

「そうだったな」

 

「でも今は違います。旬くんと一緒に行動して、それによって色々なことが分かり始めてる。

 

 だから色んな人を巻き込まざるを得ない。そこら辺を旬くんは理解してないです」

 

「……確かに」

 

 旬は、マキナについて行きたい、マキナと一緒にいたいと思うがため、自己中心的な考え方をしていた。

 

 それが、他人を傷つけることに繋がると自覚せず。

 

「でも、私も友達を傷つけたくない。だから……」

 

 マキナは、旬の袖を引っ張る。

 

「早く、トリニティを止めましょう。時間は限られてます」

 

「……ああ」

 

 厳しいこと。それは旬にとって辛いこと、という意味ではなく、現実的に難しいという意味なのだろうか。

 

 旬にはそれが分からなかった。

 

「ひゃっ、いちゃいちゃフィールド……」

 

「リア充爆発しなさい!」

 

 すると、大きな黒い塊のようなものを持つフウカと、顔を手で覆うマイの2人がこっちを見ていた。

 

「……ん?」

 

「やっぱ古いよフウカちゃん」

 

「食堂の男の方が古いわよ!」

 

「それで、それはなんだ?」

 

 重々しい、黒い鉄塊のような見た目。

 

「おそらく、この機械のメモリ。鍵があるなら、この中にあるはず」

 

「私だ……、解析は任せてくれ。フッ、それも世界の選択……」

 

「……ほんとに持ち帰っていいの?ゲーセンのものじゃないの?」

 

 不安げに問うフウカ。

 

「さっきの人が店長だし、このゲーム機もどの会社のか分からないから大丈夫だよ」

 

 と、適当にはぐらかした。

 

 でもこれで、トリニティに奪われるはずだったエニグマの“メモリ”が手に入ったのだ。

 

「(見せてもらおうか。トリニティ)」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。