~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
3人から少し離れたところで、旬は電話をしていた。
相手は、このゲーセンの常連。
「アン、ちょっといいか」
「急に何?気持ち悪い」
布ずれの音とともに、普段の低いアンの声が少し上ずって聞こえる。
おそらく、寝起きだろう。
「クマさんが、捕まった」
「……なんで?」
以外にも冷静で、旬はそれに驚いてしまった。
「言い合して、銃を突きつけられて、みたいな」
「あの変な男と関係ある?」
それを聞いた途端、旬はなんと言っていいか分からなかった。
この質問は何を意図しているのか、そればかりを考えて言葉が詰まる。
「ああ、ある。詳しくは話せない」
正直に言った。
「あっそ。じゃあね」
電話は既に切れていた。
旬は、アンの事情をしらない。
だから、アンが何を考えているのか知るよしもない。
「案外冷たいんだな」
と、旬は気にもとめず3人の方へ戻った。
心にひっかかる、アンに関するひとつのもやもやを残したまま。
〇
鉄塊のような装置を共同で持っている少女が2人。
「それっにしても、本当に重いわ。これ」
2人が肩を首の付け根より高い位置にあげ、精一杯それを持ち上げている。
「……ちゃんと持ってる?フウカちゃん」
「じゃあ離すわよ」
フウカが装置から手を離すと、それはものすごい速さで地球の中心へ吸い付こうとする。
「わぁぁぁっ!重すぎぃ!」
衝突寸前のところで、マイは踏ん張るが限界も近そうだ。
「何やってんだ。早く行くぞ」
わちゃわちゃと装置を巡って押し付け合いをしている2人を背中に、店を出ようと出口の方へ歩いていった。
「まってよ!重いんだって!男ならレディファーストでしょ!」
旬に向かって泣きそうな声で叫ぶマイ。
「旬くんは弱いので、私が持つのです」
「助かる!つよつよ女子キタコレ!」
そう言って、マキナに装置を手渡した。
「……ん?」
「困ってるじゃない、やめなさいよ」
聞き慣れない太古の言葉に、現代の言葉しか知らないマキナは大層困惑していた。
そうして、4人は破壊されたエニグマを後に外へ出た。
〇
その後、電車で学校の前まで戻った一行。
夕暮れは、雲に包まれてあたりに散っていた。
「私たちに任せてちょうだい。解析するわ」
「私だ……。ついに私の魔眼を開眼なければいけない時が来たようだ。フッ、それも世界の選択だよ」
「制服じゃないけど、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。ロンギヌスのために色々なところに行って、その帰りに学校に戻れるよう制服を備えてあるの」
フウカの顔が自慢げだ。
「じゃあ、頑張ってな」
旬は手を上げて、それを別れの挨拶とした。
「成果が出れば、いいけどね」
「あぁ。機関の暗号を解明し、やつらの悪事を暴き出す。それが私たちの運命。理解しているさ」
その時も、マイは携帯を耳に当ててなにやら呟いていた。
〇
家に帰ると、殺風景なワンルームに暗い空気が置かれていた。
「驚きです、あの2人。ほんとはあんな感じなんですね」
「人は見かけによらない、らしいが」
「……見かけによらない。って、旬くんもですよ」
マキナが不思議そうな顔をして旬の顔を見る。
「なにが?」
「なんであんなにクラスで嫌われてるんですか?なにかエッチなことやらかしました?」
「エッチなことはしてない!」
そう聞かれた時、ぱっと理由が浮かばなかった。
あれ、なんで俺は嫌われてるんだっけ。
昔に何かあって、嫌われてるはずだけど。
「……思い出せない」
頭の中に虫に食われたような思い出せない部分があって、うまく思い出せない。
俺は中等部のころ……。
「旬くんって、人間の中だったら運動も勉強もできるほうですよね。しかも顔は……」
そう言いかけて、マキナの口の動きが止まった。
「顔は?」
「いや!違います!顔も普通より整ってる方だしなって!」
「……確か」
顔が似てると、言われちゃいました
全然兄妹じゃないけどな。そんな似てるか?
なんて、会話をしたような気がした。
「顔、見比べてみるか」
「何でですか?」
「写真撮ろう。2人で」
机の上に置いてあった空のダンボールに携帯を立てかけ、内側カメラの画面にして置いた。
そこに映るのは、至って普通の旬とマキナ。
「……似てる、のか?」
「旬くんちょっと髪の毛上にあげてください!」
「こ、こうか?」
自分の額に手を当てるようにして、髪を上げた。
それで画面を見ると、普段前髪で眉ごと覆われている旬の顔がはっきりと映し出されている。
普段の旬と比べると顔立ちははっきりとして、新鮮に見える。そして、どこか見覚えがあるような気がする。
見覚えがあるというのは不自然だが、それは旬は、生活の上で鏡をしっかりと見ない習慣だったからだ。
この家には、洗面台にさえ鏡という鏡がなかったのだ。
「……似てるって言えば、似てるのか?」
「私の顔認識の指数は、88パーセントって言ってるのです」
「うわ、めっちゃ似てる」
「ふふっ。適当ですよーだ。べー」
マキナは舌先を唇から出して、旬にそれを見せた。
「だから、旬くんは別に顔も身体も悪くないのになんで嫌われちゃうのかなって思ったのです」
「顔も身体もって、変な言い方よせ!」
「なに想像してるんですか?やばいですね」
「……だんだん口が達者になってるんだな。本当に」
旬はたくしあげてボサボサになった髪を下ろして、いつも通りの髪型に直した。
「……写真、撮るのか?」
そして、マキナの方を見て聞く。
「撮りたいのです!」
「はい、じゃあ画面見て」
「……写真なんて、久しぶりなのです」
「そっか」
身体を寄せ合い、画面を見た。
そこに映る2人は、なんだか本当に家族みたいで、旬にとっては他人のような感じまでした。
すこし経ってから、シャッターの音が閑静なワンルームに響いた。
〇
旬とマキナだけで情報室の前に来た。
扉の外から覗き見るに、中では2人がパソコンを前にしてうなだれている。
そのパソコンには、例のエニグマのメモリが色とりどりな線で繋がれていた。
「……おーい、どうした」
「……」
「あぁ、おしまいだぁ」
どうやら、良くないことがあったらしい。
「ずっと学校に居たのか」
「寮生の部屋の中に入ってずっといじくって、中身を見れたんだけど……」
マイが突然起き上がって、旬に食いつくように言った。
「うわぁぁぁ!分からないよぉ!」
「……何が問題なんだ?」
「えっ、無視?」
「……文字化けしまくってて、どうしようも出来ない。復元も出来ないから、これじゃもしあるとしても、鍵は見つけられない」
机に突っ伏したまま、フウカはモゴモゴと話していた。
パソコンの画面に映るのは、
『縺ゅ>縺?∴縺翫°縺
縺乗ッ帙%縺輔@縺吶○
闕倥↑縺ォ縺ャ譬ケ縺ョ繧
繧翫k繧悟?繧?f繧』
フォルダの中は、ずっとこの調子の名前のファイルがずらりと並んでいた。
『閨門?
繝?え繧ケ繝サ繧ィ繧ッ繧ケ繝サ繝槭く繝
繧ィ繝九げ繝』
「どれが鍵なのかも分からないし、復旧なんてどうしたらいいか分からないもん!どうすればいいの!旬ちゃん!」
起き上がったマイが旬に掴みかかる。
「旬ちゃん……?」
「あたらしいですね」
「……とりあえず、俺もやろう」
「パソコンとか、詳しいの?」
「まぁ、そこそこ」
隣の席から机を拝借し、フウカのパソコンの前に移動。
そして、モニターの前に旬は座った。
「たしかMIAの最新発表が……」
検索エンジンに、機械情報知能省の名前を入れた。
「なんでMIAの名前が出るのよ!何も関係ないじゃない!」
「……」
旬は、わざとそれに答えなかった。
「……あった、新しいコンピュータエンコード規格、『AMGEN-1』」
MIAの最新の発表。
アムジェン1という、あたらしいエンコード規格だ。
「わぁ、これも最近話題になってたやつですよね。MIAがアムジェン用の新規OS立ち上げるかもって、ちょっと炎上してた」
「インストールして、これをアムジェン用に表示……」
フォルダのブラウザの下部にあるタブからエンコード規格を『AMGEN-1』に変更。
すると文字化けしていたフォルダの文字が一気に読めるようになった。
「なんで!?なんで最新のが使われてるのよ!」
「なんかワクワクしてくるねぇ」
「ワクワクじゃないわよ!じゃあこのエニグマっていうのは、MIAが関わってるってこと!?」
「……そうだろうな」
エニグマのゲーム本体の内部データであろうフォルダから下にスクロールしていくと、1番下にあったファイルの名前は――
『ENIGMA.exe』