~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina   作:ハーレム好き男

5 / 28
5 原点回帰のシニフィエ

 

「マキナッ!……マキナッ!」

 

 旬は、暗い新宿を必死に走り回った。

 

 マキナと合流しなきゃ、殺される。

 

 あいつは、恐らくマキナと同じヒューマノイド。

 

 だが、なぜマキナ以外にも?

 

「はっ、はっ、見目さん!」

 

 マキナが、向かいの路地から出てきた。

 

「ああっ、マキナ!よかっ……」

 

「あの蜘蛛、どうしたんですか!?」

 

「蜘蛛?はっ……」

 

 旬は、あの蜘蛛が男にくっついた後に男が動き出したことを思い出した。

 

「どうしたんですか!?まさか……さっきの光は……」

 

「ごめん俺、やらかしたのかも……」

 

「何やってるんですか!」

 

「ごめんなさい!」

 

「謝るのは後にしてください!早く逃げますよ!」

 

 マキナは、しゃがみ姿勢になって旬の方を見る。

 

「さぁ!早く!」

 

「え?あっ、ああ!」

 

 旬は、マキナの方に捕まりおんぶされる。

 

「ふっ!」

 

 マキナが思い切り足を曲げた。

 

 その瞬間、マキナと旬の身体がはるか宙に浮く。

 

「えっ、ええっ!?」

 

 旬は、状況が飲めない。

 

 マキナは、そのまま建物の上に着地した。

 

「んしょっと」

 

 その場でマキナは旬を下ろし、その後手ですっと撫でてスカートのシワを直した。

 

「なっ、なに今の!?」

 

「何って、ジャンプしただけですが」

 

「えぇ……」

 

「そんなことより、なんでここに居るんですか?」

 

「いや……、なんか……」

 

 旬は、マキナから目をそらす。

 

「少し、この事件に責任感みたいのを感じてさ」

 

「危険なことしないでくださいよ!」

 

「ごめん……。……あっ」

 

 旬は、ふらりとその場に座り込むように体勢を崩した。

 

「うぅ……。無理しすぎた……」

 

「えっ、どうしたんですか!?」

 

「さっきの反動……」

 

「さっきって……」

 

 マキナは、しゃがみこんで旬の顔を覗いた。

 

「まぁ、私も家と新宿往復するなんて、無理しなきゃよかったんですけどね」

 

「えっ、そんなことまで……。マジですげーな」

 

「マキナちゃんに出来ないことがあると思いますか?」

 

「いや……、もうない」

 

「えへへー」

 

 その時、少し遠くで大きな音が鳴っていた。

 

 固いもの同士が強烈な力で打ち付けられているような音。

 

「もう時間がありませんね、行きましょう」

 

「ああ、……でも帰ったら説明してくれ」

 

 旬は立ち上がってマキナの顔を見た。

 

「……分かりました」

 

 マキナは、暗い足場に物怖じせずひょいひょいと飛び越えていく。

 

 それに続いて旬も行こうとするが、マキナと同じようにうまくはかない。

 

「ちょっと怖いなぁ……」

 

「甘えないでください。逃げるためなんですから」

 

「今俺たちが逃げてる男のことを、マキナは何か知っているのか?」

 

「それは後、早く行きましょう。駅まで行きますよ」

 

 その後も、マキナの軽々とした身のこなしを見よう見まねで追いついていく。

 

 そうしていると、すぐに新宿駅が見えた。

 

「はぁ、疲れた」

 

「お疲れ様です」

 

「さっきからそんな時間経ってないけど、どうなって……」

 

 先程まで塊みたいになっていた人達は、すっかり居なくなっていた。

 

 駅には、警備員らしき人達が立っていて、周辺にKEEP OUTと表されたホログラムマーカーが張り巡らされている。

 

「ほっ、よかった」

 

「よくありませんよ!駅使えなくなってるじゃないですか!」

 

「あっ、たしかに」

 

「もー、なんかさっきから抜けてません?」

 

「かも、ちょっと頭が疲れてる」

 

 旬は、よいしょとその場に深く座り込んだ。

 

「まぁ、明日学校ズル休みしてもいいかもなー」

 

「えー、2日目から私ズル休みですかー?」

 

「いいだろ、こんな状況なんだし」

 

 旬はこの場で夜が明け、始発まで待とうとも考えていた。

 

 この旬は、普段の旬と比べかなり楽観的なように見えた。

 

 遠い無数の電飾で作り上げられた夜景が、旬たちの後ろできらきらと煌めいている。

 

 幻想的な光景に、マキナは目を奪われたようだ。

 

「わぁ、綺麗……」

 

「あぁ、夜景は初めて?」

 

「ええ、初めて……」

 

 マキナの大きな目に反射して、目が文字通り輝いてみえる。

 

「……」

 

 気になっている事を聞く意思は、今の旬には無かった。

 

 無垢な顔をしたマキナに、現実的な話題を振るのは気が引けたからだ。

 

「マキナ……」

 

「え?なんですか?」

 

「ほんと、居てくれてありがとう」

 

「へっ?」

 

 マキナの顔が紅潮する。

 

「へっ、へぇぇっ」

 

「なんだ?いやだった?」

 

「いえ、そうではなく……」

 

「え?」

 

「もう、ふわふわしすぎです!」

 

 ゆっくりと時が流れていった。

 

 遠くの数々の灯りはだんだんと消えていって、時間の経過を感じさせる。

 

 しばらくして、旬から口を開く。

 

「にしても、あの男はなんだったんだ。マキナのこと知ってたらしいし」

 

「……」

 

「え?」

 

 緩やかな時間が、一気に硬直する。

 

 マキナは俯いてこちらを向かない。

 

「えっ、マキナ、なんだよ」

 

「……私は」

 

 彼女の地を着く手が固く握られる。

 

「関わって欲しくない」

 

「それって、どういう……」

 

 その瞬間

 

「やーっと見つけた」

 

 ふと横を見た。

 

「はっ」

 

 旬の顔が一瞬で冷たくなる。

 

 そこに居るのは、あの男。

 

「なっ」

 

 マキナも気付いていなかった。

 

 気づかない内に男は旬たちを発見して、横に現れたようだ。

 

 空気はさらに凍り、旬は凍えてしまいそうなその場に足がすくんだ。

 

「ははっ、気づかねぇんかよ」

 

「お前がなんでここに……」

 

「あ?探したに決まってんだろ」

 

 男は首に手を当て、気だるそうに首の骨を鳴らす素振りをした。

 

「マキナ、お前もこうすれば見つけられないみたいだな」

 

「……」

 

「おいマキナ!どういうことだよ!」

 

 マキナは、立ち上がっても俯いたままだ。

 

 顔がよく見えない。

 

「なぁ、皆で再会したんだぜ?もっと笑えよ」

 

 男の手がマキナの肩に触れようとする。

 

「……っ!」

 

 その瞬間、マキナは一気に体勢を折りたたんで男の手を避けた。

 

「なっ」

 

 旬はそのマキナの様子や形相に夕方の恐ろしい顔のマキナを思い出した。

 

 マキナの足は地面にしっかりと踏み込んでいて、今にも弾けそうなほど緊張している。

 

 そしてその時、その緊張が解き放たれるとマキナの髪が青っぽく光り、一気に男の方へ蹴り上げる。

 

 美しい弧を描くように蹴りは、男の顎をすれすれで通過する。

 

 しかし男はその瞬間身体を少し引いていたから当たらなかった。

 

 でも足が風を切る音は、まるで何かが爆発したかのように聞こえるほど大きい。

 

「相変わらず早ぇなぁ……」

 

 旬は男が避けた瞬間を見切り、持っていた鉄パイプを男の顔に目掛けて振るう。

 

「おっと」

 

 そのパイプを、軽々と男は掴んで止めた。

 

「クッソ、動かん……」

 

 旬が無理やり引き剥がそうとしても、そこに元からくっついていたかのように堅く固定されていて、ビクともしない。

 

「2人がかりは狡いぜ」

 

 男はその鋭く凶暴な眼光で旬を圧倒しながら、パイプを握りつぶした。

 

「ふっ」

 

 マキナも体勢を瞬時に戻して蹴りを繰り出すが、難なく男に手で止められる。

 

「マキナ、お前、腹減ってんのか?」

 

「……」

 

「今更人間アピールとか、ムカつくんだよ!」

 

 マキナは、恐らく空腹で思ったように身体を動かせないのだろう。

 

 彼女の身体は、食物からエネルギーを抽出する有機ヒューマノイド構造だ。

 

 家を往復した段階で使い果たしてしまったのだろう。

 

 男がマキナの足を払い、旬のパイプをねじ切った。

 

 その鋭くなった短いパイプを、マキナに振り上げる。

 

「マキナッ!」

 

 旬は、その時思わず男の身体に抱きついた。

 

「なっ、何だお前っ」

 

「うおおおっ!」

 

 全身の力を余すことなく使い、全力で男を押し倒そうとしたのだ。

 

 そのまま建物のへりまで押し込み、それでも旬は思い切り押した。

 

「何してんだ!お前!」

 

「マキナに、手を出すな!」

 

 そのまま、建物の外へ飛び出す。

 

「うわぁぁぁっ!」

 

 旬は、目を閉じ男の身体を力強く掴んだ。

 

 2人の身体はまるで落石かのように素早く落ちていく。

 

「お前、バカだな。このまま落ちれば動けないぞ」

 

 男は、旬を嘲笑する。

 

「どちらが動けなくなるのかな」

 

 旬は、男の胸とそれに刺さった蜘蛛型の機械の間に指を入れる。

 

「なっ」

 

「お前を復活させたのは、俺なんだよ!」

 

 男の顔は、驚いていた。

 

 2人は、路地の地面に勢いよく衝突。

 

「痛っ!」

 

 着地する寸前、旬はその機械を引き抜いた。

 

 すると、男の動きはピタッと止まったのだ。

 

 それでそのままその男を下敷きに着地した結果、旬は軽傷で済んだ。

 

「ギリ、セーフ」

 

 旬の息は上がったままで、鼓動が激しい。

 

「旬さんっ!」

 

 マキナは静かに上から降りてきて、倒れた旬に近づいた。

 

「お怪我はっ!?」

 

「んっ……そんなことより、マキナ。これがなんなのか分かってるんだろ?」

 

 旬が起き上がり、マキナを睥睨する。

 

 マキナの顔が陰る。

 

「……お話しましょう」

 

 マキナの軽快だった口元が、重くなったように感じた。

 

「この男の名は、エクス。私の兄妹です。――」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。